このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります。
トップページ > 記事閲覧
随句賞
日時: 2010/10/11 11:57
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

山口防府の山頭火賞とか小豆島の放哉賞とかありましたが、最近井泉水賞というのもできました。
適時それらのニュースもお伝えしたいです。
メンテ

Page: 1 |

第3回 井泉水賞 ( No.1 )
日時: 2010/10/11 11:59
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

以前「草原」賞になった福露さんが「第3回井泉水賞」に入賞されました。これはうれしいニュースです。

第三回 井泉水賞発表

井泉水大賞

 一病は雲にのせて万歩計のほどよい歩数  浜松市 木俣 史朗

井泉水大賞 十万円
入賞 一万円
入選 五千円

選者  村上 護、和久田 登生、藤原 よし久

◇入 賞
 ふる里を抱えて眠る母の寝息        札幌市  小坂 みゆき
 地球が熱い 風車まわっている       熊本県  福島 露子
 捨てて生き 朧月             沼津市  福田 伸幸
 一輪挿しの立浪革少し波立つ手術前     北九州市 松養 榮貞
 エイプリルフールの風にのせた本音のことば 浜松市  宮本 卓郎

◇入 選
 妻厨房にいて鍋洗うわが母を負う      秦野市  田中 勝雄
 満月だから鶴になって飛んだ薬包紙     秋田市  小林 万年青
 うとうとと何事か考えている春の卵     浜松市  那須田 康之
 新しいドラマがはじまる今朝の茶柱     浜松市  伊藤 重雄
 野の一本のしだれ桜に逢いにいく      浜松市  渡野辺 寿美子
 桜が咲いたのでしばらくは家にいる     松山市  高橋 正治
 名月という監視カメラに見られている    福島県  田畑 剛
 とんぼ浮く風がやさしいふるさと      香川県  井上 泰好
 ここにすわれよと土手の若草遠桜      長野市  加藤 えみ子
 昼の蝶ひらり仏の胸にふれて翔つ      光市   田村 満智子


応募句数468句、一人2句ですから234名が応募したことになります。
応募作品表から、浜松市の方が23名(9.8%)、入賞者16名中に浜松市の方が5名ですから31.3%となっています。
この理由を考えてみました。
入賞作品が現在の随句(自由律俳句)の好みであり傾向であること。とすると、現代の随句の傾向を主導しているのは「層雲」であるということか。選者の和久田氏が「層雲」の代表者であり藤原氏が「層雲」大江の選者であることから、「層雲」好みの句が選ばれ易いということでしょうか。このことは深く考えねばならないことだと思います。

実際、「海紅」の田中耕司氏や小山智庸氏、「ぎんなん」の斉藤実先生や堀切博昭氏や平岡久美子氏や新鋭として私が注目している安門優氏、「層雲自由律」の清水八重子氏や藤田踏青氏や久光良一先生、そして、もちろん「層雲」のきむらけんじ氏や井上敬雄氏などそうそうたる随句人を抑えて入賞した福露さんは見事です。
これを欣快と言わずして何と言いましょうか。
ありがとうございました。

皆さまに期待しています。
メンテ
第3回 井泉水賞表彰式 ( No.2 )
日時: 2010/12/30 23:21
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

 2010年10月24日(日)第三回井泉水賞表彰式が浜松市民協働センター2F研修室にて実施された。
 まずまずの天候で遠方より入賞者の来浜もあり、松の会のメンバーによる事前の会場設営により、定刻通り、明るく華やいだ雰囲気の中で開催された。

出席者数 32名
選  者 村上護、和久田登生、藤原よし久

役員 池田常男、鶴田育久
司会 那須田康之、鈴木憲 の各氏により、次の式次第に従い進行された。
 ○開会のことば
 ○層雲代表の挨拶
 ○受賞作品及表彰
 ○受賞者挨拶
 ○選者句評
 ○閉会のことば
 開会の挨拶を藤原氏が行った。
 続いて和久田代表の挨拶(要旨)「昨年とほぼ同数の応募が全国から有つたが、まだまだ充分とは言えず、更に多数の作品の応募を期待したい。
 選者の村上先生が春から夏にかけ、体調を崩されて心配だつたが、幸いにも、本日出席頂ける程に回復され安堵した次第である。先生には時間の許す限りに於いて、本日、井泉水先生についてのミニ講演をして頂く様お願いした。井泉水の自然・自己・自由・についての層雲連載物は五年余りに及んだが、本年12月を以て完了する由。」

 事務局から受賞作晶の発表
 大賞一点、入賞五点、入選十点。夫々の句について2回の朗吟有り。
 受賞者表彰 (本日出席者のみ)
 木俣、宮本、田中、那須田、伊藤、渡野辺、田畑、井上の八名各氏に。
 入賞者十六名を代表して、大賞の木俣氏の挨拶有り。
 「多数の中から、十六名が選出され、大きな喜びであり、これからの励みとなり得て、心から感謝したい。又、我々の為に、会場をしつらえてくれた、関係者の皆さんにも、御礼を申し上げたい。
 奇しくも、来年は、層雲創刊百周年に当たり、節目の時と思い、これからも精進を怠らない様参りたい、」と御礼の言葉有り。

 選者村上氏による句評
 俳句は瞬間の閃きを句にすべきで、その句を読んだ時、まざまざと、その情景が浮かばなければならない。一言で云って、今回は、粒が揃って佳句が多かった。

◇井泉水大賞
一病は雲にのせて万歩計のほどよい歩数  木俣 史朗
一病は雲に乗せて、で切れ、下句へ続く。二句一章の型が出来ている。心を乗せている、ほどよい歩数が、二の句のポイントで、短い言葉で、リズムの良い詩になって、よく纏まっている。

◇入賞
 ふる里を抱えて眠る母の寝息  小坂みゆき
 ふる里を抱えて眠る、で切れて、母の寝息が身近な処で、俳句になっている。抽象的な表現に、現実をとり合わせた点が、上手い。

 地球が熱い風車まわっている  福島 露子
 スケールの大きな句。元気がある句。

 捨てて生き朧月 福田 信幸
 自由律の短律。生涯とか、境涯の、自分の心境を読み乍ら、朧月の締め方が良い。類句は無いのではと思う。

 一輪挿しの立浪草少し波立って手術前  松養 栄貞
 一輪挿しの立浪草と、手術前の心の揺れが、詩になっている。一句の中に、切れ、があった方が良いかとも思う。例えば、立浪草で切るとか……………。

 エイプリルフールの風にのせた本音のことば  宮本 卓郎
 一行で、気持ち良く乗せている。上句が、やゝ、説明的になっているが、よく纏めている。

◇入選
 妻厨房にいて鍋洗うわが母を負う
              田中 勝雄
 高齢化の現代を、表現した句。鍋洗う、で切れ、わが母を負う。感謝の気持ちが出ていて、背景がとても良い。自由律で、発揮出来る、分野だと思う。

 うとうと何事か考えている春の卵  那須田康之
 春の卵が、関係無いが効いている。詩情がある句である。

 新しいドラマがはじまる今朝の茶柱  伊藤 重雄
 俳句のパターン、型が出来ている。

 野のー本のしだれ桜に逢いにいく  渡野辺寿美子
 切れていないが、自然を見ながら、一本に焦点を定めている。俳句の心が解る句。愛情、愛しみが感じられ、これからも大切にしなければならない処である。

 以上、全体的に自由律の展望が見えて、大変良かつたと思った。(入選句短評は出席者のみ)

 村上選者によるミニ講演(要旨)
 井泉水については、講演を聞いたり、文通はしたが、直接会う機会は無かった。井泉水は、子規に続く、守旧俳句の大スターだった。
井泉水と虚子が、並列して、近代俳句をリードした。同じ鎌倉に在住していて、仲も良かった。
 自由律を見直す時期、とも思っている。有季定型が絶頂だけれども。
 子規は革新を進め、虚子は守旧派宣言して、人を集めた。碧梧桐は、改革を進めた。
 井泉水は、金田一京助と同様、言語学者であり、友人でもあった。また金田一の友人の石川啄木を、井泉水は依頼を受け、助けたりもしたo
 井泉水は、子規死亡前に、二〜三百句送っているが、子規には、会っていない。子規は命がけで、俳句分類を行ったが、井泉水も又、徹底して実行したが、次第に守旧でなく、革新の道に入ってゆく。
 層雲創刊時には、ドイツ文学者etc多才の人が集まって来て、期待が持てた。
 子規の影を迫って、虚子は客観写生を推進した。それは五感をまとめた心と共感出来る俳句と程遠く、一面的で、裏にあるものが見れないので、本来の自由な作り方を、井泉水は表現して行った。
 戦前は、自由律俳句は、多士済々であったが、戦後は、ライバルが居なくなり、孤軍奮闘の感があった。
 井泉水は著作数もさること乍ら、巨人と云える数少ない俳人である。井泉水が特に嫌ったのは、季題で、別の自然を見出して、自分で考える事を進めた。
 自由とは、自らによる、内在律、自然律、感動律等の音律から生まれるもの。表現の自由を心情とすることが大事で、これ無くしては、詩であるとは云えない。詩というものを、重んじている。詩によるリズムの良さを、最終的には云う。リズムは音を重視している。
 これらの事を、井泉水は主張したかったのではないか?と。
 自由律が低迷している問題は、数ではない。実際には、それ程減ってはいない。機運はいっぱい有るが、受け皿が無いのが、伸び悩みである。
一般的には、井泉水のことも、叉、俳句もあまり知られてない。手軽に読める、句集が無い。井泉水の句集も出さないと、の思いはあり、気掛かりになっている。若い人に知らしめる様にしたい。そんな危機感がある。自分があって、自らを歌う気持ちは、若い人は持っているので、先々には希望が持てる。

 閉会のことば(池田氏)
 定刻終了。
メンテ
第9回東京自由律俳句賞 ( No.3 )
日時: 2012/11/14 18:43
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

 定例の句会は萱沼良行(ぎんなん)の司会で始まった。司会から上位四句を、出席している人の十位まで、そしてこれからの未来を担う若手作家の句を取り上げて司会進行をする旨の説明がなされた。
ここでは、特選句として選んだ人の評と、句の座談の大雑把な内容をまとめ報告とする。

1位句 (17点、特選3人、並み選11人)
 この愛未然形まっ赤な苺つぶしている 宮地 祥子

吉田(數)「色々な思いが胸をよぎる。ときとして不安なことも、幸せの満ちてくるようなことだって‥‥。
まっかないちごつぶして≠フ所作が、未然形へ繋がり過不足なし。」
堀   「若者のすがすがしいまだ完成しない恋。真っ赤な苺とよく似合います。」 
上塚  「この愛未然形とは否定的な愛でしょうか、それとも希望に満ちた愛でしょうか、未然形と言いきったところ、ちょっと気になりますが、真っ赤という色や苺をつぶすという動作が思わせぶりで、効果的かなと思います。」
座談  未然形の後にまっ赤な苺は、どうかな。いいようがないが、つぶした苺がまっ赤だという方向のほうが好いと思うが。
まっ赤は情熱的な気持ちを出したいため。未然形とまっ赤な苺つぶしている所作はかなわぬ恋、不倫の恋、思うようにならな   い成就しない恋を。
採らなかった意見から、未然形という言葉が硬くて呑込めなかった、赤でなく青くても好いかとも。未然形だから青と・・・。これは赤しかないだろうと。
皆愛という言葉に弱い。雰囲気で採ってしまったことも。

2位句 13点(特選5人、並み選3人)
 荷台の牛みなコチラを見ている     矢野錆助(風狂子)

ゆかり 「余分なことを言ってないのに、東北の災害地の残酷な風景を思い出させるような句です。沢山の悲しい目がこちらを見ている様で胸が締めつけられるようです。」
堀  「売られてゆく牛でしょうか。不安げな牛の黒い目がコチラを向いて濡れているようです。育てられた牛舎まで見えてくるようで胸を打ちました。大好きな句です。」
藤田 「作者の視点が鏡に逆反射されたようで諧謔を感じる。一つの視点と多数の視点の交錯が面白い。「コチラ」がカタカナ表現されているのは、そこで次元が断絶されているからか。」
黒瀬 「無駄な言葉や形容詞はなく、それでも牛の哀しさ、切なさを痛いほど感じられる。」
富永 「放射能を浴びた福島の牛が先ず脳裏をかすめる。牛は大抵いつも悲しい目をしている。その目と目がった。牛の置かれている状況と作者の気持ちが実感として伝わってきます。「牛の目」は作者の「心の目」かもしれない。」
座談 (牛の目の位置)意識している意識していないどちらともとれる。牛の句といったら碧梧桐のひかれる牛の句(「曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ」)。目を外した牛を描かなければ。牛がこっちをみている、こちらも牛をみている。それを書いたら説明になってしまうとも。

2位句 13点(特選3人、並み選7人)
 メダカ水底に春が透きとおる  原 鈴子

座談  素直に好い句だとおもった。日射しがきれい。なつかしさがある。めだかはみかけないが、スカイツリーの水族館にいる。

4位句 11点(特選2人、並み選7人)
 握り返す指頼りなくても未来形   原 さつき

宮地  「「未来形」という表現が印象的で、生まれてきた赤ちゃんに対しての深い愛情を感じさせる。「頼りなくても」がそれを一層深めている。」
吉川  「未来形と言う言葉に引かれました。同じ作者か、それとも偶然か、九十九番に「この愛未然形まっ赤な苺つぶしている」と言う句がありました。この二句を比べて見ると、九十九番の句には少し作っているなと言う感じがしてしまいます。この七十七番の句は、赤ちゃんのなせる業か、なんと自然で希望のある句だろうと思いました。」
座談  病人だと思った。赤ん坊は(弱くて)握り返すのかな。指というのは赤ちゃん、手といえば病人なのではないか。そして赤ん坊という結論になった。

▼1位の宮地 祥子さんの句は特選が3名と少なく、2位の矢野錆助(風狂子)さんの句には、特選句が5人とほとんどで、随句を厳しく見るときに、多くの人に選ばれる句であることは大切ですが、特選句は選句の中で人の心に刺さる=心に残る句であるということです。私はこの点を指摘しておきたいです。

 彼の句以外は、西洋詩のように、少し飛躍や妄想的で、最近、特に女性句に多い傾向があり、自由律俳句が変化をしてゆく傾向を感じますが、はたして時の腐食に耐えるのか疑問です。
錆助さんの句を選んだ選者も、3・11という背景があっての選句を感じて、これも時の風雪に残る句になるかは、少し懸念を持っています。
人間を掘り下げた魂に届く句を期待したいです。
メンテ
第1回自由律句のひろば大会 ゆ評価 ( No.4 )
日時: 2012/11/20 19:49
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

第一回全国自由律句大会入賞句一覧

◎自由律句大賞・山口県知事賞
五九八番          山口県 小野 芳乃
自転の一日を眠っている父の地球   

◎自由律句準大賞・文学の森賞
七六三番        福岡市 馬場 古戸暢
どこにも行けないこの星にいる    

◎自由律句準大賞
二〇七番         山口県 部屋 範夫
まるい月にしばらく心をまるくする  

◎自由律句準大賞
三五四番       大分県 首藤 節子
薔薇 その沈黙に刺されている 

◎自由律句準大賞
六七一番      鹿児島県 藤後 むつ子
日本語折れ曲り若者達の街  

◎自由律句準大賞
五八七番         埼玉県 黒瀬 布美子
地より足少し持ち上げ夢を転がす  



選 者 特 選 賞 (五十音順)

伊藤 完吾先生
 七六三番   福岡市 馬場 古戸暢(草原)
どこにも行けないこの星にいる

いまきいれ 尚夫先生
 三五七番 岡山県 森崎 昭生(現在実験箱)
人は多面体 ふりかえる影はひとつ

おがわ ひであき先生
 七二五番          山口県 松永 眞弓(群妙)
ゆるゆる歩いている肌色の手術台へ

小山 貴子先生
 三四五番 東京・目黒  遠藤 多満(第12回放哉賞)
 誰も遊ばない春の土ある

重富 架光先生
 五四六番        北九州市   松養 榮貞(第3回井泉水入賞)
 ツリフネソウ人の気配に揺れている

清水八重子先生
  一四五番          山口県  小藤 淳子(周防一夜会)
 辛くても心に笑顔の種火を点けておく

田中 陽先生
  五八四番         さいたま市  吉本 知裕(群妙)
 デモ去った街を一人

棚橋麗未先生
  五八七番            埼玉県  黒瀬 布美子(白ゆり会)
 地より足少し持ち上げ夢を転がす

富永 鳩山先生
  五九八番            山口県  小野 芳乃
 自転の一日を眠っている父の地球

久光 良一先生
  八〇七番            仙台市  平山 礼子
 還れないふるさとは風が連れてくる

藤田 踏青先生
  七六二番            福岡市  馬場 古戸暢(草原)
 あなたのかたちに手をはわす

藤原よし久先生
  九九番             福岡県  楠本 尚子

  選 者 特 選 賞 (五十音順)

吉原陽子先生
  四七四番           山口県  富永 順子
 なんだか自分だけのような闇を見ている

渡野辺 朴愁先生
  四一五番          埼玉県  渡司 聖徳
 いい事ありそうだ心の扉を開けておく


【 ゆコメント 】

1. 選者に偏りがあるのが気になります。海紅や青い地球などの選者がいません。マイナーな句会の選者など、選者の選定基準が不明です。

2. 受賞者に福岡県と山口県の作家が目立ちます。

3. 句がランダムに表示されて、選句されたのでなければ、前書きがあるのと同じで、3句の作家より6句の作家の方が有利となります。

4. 出句はまったく初句(新作)でなく、結社内の句会などで評価されて、選者に作者名が明らかなものがあるのではないかと思うことがあります。

5. 大賞句などの分析

★自由律句大賞 山口県 小野 若乃
597番 眠り続ける命の道は空へまっすぐ   0点
598番 自転の1日を眠っている父の地球   5点(特選1)
599番 苦しみと安らぎを熟成させる父の眠り 2点
600番 だまって死を見ているうみやまそら  0点
601番 また必然に放り込まれるドアを閉める 3点
602番 伝えたいことそのままにして豆を摘む 3点
平均2.17点/句

★自由律句準大賞  福岡市 馬場 古戸暢
762番 あなたのかたちに手をはわす         3点(特選1)
763番 どこにも行けないこの星にいる        5点(特選1)
764番 急の夏空の抜け殻              0点
平均2.67点/句

★自由律句準大賞  山口県 部屋 範夫
207番 まるい月にしばらく心を丸くする   4点
208番 うれしくなるような朝 青空がその理由    0点
209番 こぬか雨仰いで微笑んでいる         0点
平均1.33点/句

★自由律句準大賞  大分県 首藤 節子
354番 薔薇 その沈黙に刺されている      4点
355番 緑陰まひるの椅子が人恋しがる      0点
356番 万緑にも脈拍があって 乱れる        1点
平均1.67点/句

★自由律句準大賞  鹿児島県 藤後 むつ子
669番 一本の枯れ木の温もりに触れている   0点
670番 払っても払っても戦の影        0点
671番 日本語折れ曲り若者達の街       4点
672番 東北の涙両手からこぼれる       0点
673番 大流し百の山々立ち上がる       0点
674番 空あおぐふるさと遠く思う時      0点
平均0.67点/句

★自由律句準大賞  埼玉県 黒瀬 布美子
 586番 戻れない日々が万華鏡の中         0点
587番 地より足少し持ち上げ夢を転がす    4点(特選1句)
588番 地球の明日へ聴診器当てる         1点
589番 捨てられた魚たちの静かな反逆       0点
590番 真夏日あかの夾竹桃は不良だ        0点
591番 あじさいゆさゆさと咲いて飽食       0点
592番 真夏日へあっかんべー白のむくげ      0点
平均0.83点/句

▼短詩の場合京大の桑原武夫教授の第2芸術論で指摘されるように、初心者の方が無心で作ることで、とてもいい1句をものにすることがあります。しかし、作家としては、コンスタントにいい句を出して来れるかどうかで評価されます。
上の分析で見る通り、作家の実力は平均点で見ると句にむらがない馬場古戸暢さんが最上位のはずです。
選者の実力も最初の1句の代表句ではなく、どんな句を選ぶのかの選句で分かります。
漢語などでごまかして表面的な小細工をした句に惑わされるとか、深みのないイメージが広がらないママ句を選ぶ選者は、基本的随句観を持っていないと私は思います。
メンテ
第11回東京自由律俳句会上位句 ( No.5 )
日時: 2013/05/26 23:01
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

第11回東京自由律俳句会で、「草原」の馬場古戸暢さんが快挙です。これが彼の実力と思います。『随句の基調』を素直に吸収しているからだと私は思います。

自由詠
大賞(21点) 花びら拾ってお母さんのとこ      馬場 古戸暢(草原)
2位(19点) 変われない私でごめん花冷えの交差点  吉田 數江(萌句会)
3位(18位) 徳利ふってひとしずく春を惜しむ    折原 義司(海紅・かみなり社)
4位(14点) 宙ぶらりんのやさしさ象の鼻      黒瀬 文子(白ゆり会)
5位(13点) 桂馬飛びのランドセル雨はあがった   本間 鴨芹(海紅)
5位(13点) 涙の跡のある不思議な夢でした     風呂山 洋三(海紅)

兼題 「青春」
大賞(21点) まだくすぶっている5%の純情      原 さつき(萌句会)
2位(15点) 春が香る手を握る            馬場 古戸暢(草原)
3位(15点) 理科室の君の残り火フラスコ       宮地 祥子(萌句会)
4位(13点) 傾きを求めてしまう公式を知る      畠 働猫(鉄塊)
5位(11点) 近頃は青春を昭和と呼ぶらしい      本間 鴨芹(海紅)
5位(11点) スケッチの下手な級友が弁当を捨てている 梶原 由紀(無所属)

▼結社の組織票や結託票をなくして、実力による選句にしなければ、新しい随句や才能は生まれず、随句という文学は衰退するはずです。自分や結社の利益しか考えないこれまでのあり方を変えるのはなかなか難しいのですが、嫌われながらも働きかけてきた私の正論がぼちぼち通るようになってきたのは、単純に嬉しいです。
撰者にも単純に好きだ嫌いだとしか言わない方がいますが、やはりそれでは新人や若手には勉強にならないので、なぜ良いのかどうすると本当によくなるかを言えなければその意見の価値がないこと、無責任のそしりを免れないことは明白です。私は、撰者の指導者としての能力や見識をも評価しています。

ベテランも若手も死ぬまでが修練と思わねば感性が鈍くなるこの随句道精進してゆきたいと思いました。
メンテ
又吉直樹にササったこあめ句 ( No.6 )
日時: 2014/06/17 21:01
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

なんと、自由律俳句の句集を2冊も出しているピース又吉氏が、『スバル』4月号の連続講義「ササる俳句笑う俳句」第7回選句で、「秀逸」にさはらこあめさんの句を選んだというのです。多分古い随句人は、彼は未だ随句を知らないとかと言うと思いますが、新時代の随句の傾向を選んでいる可能性がないとは言えません。いずれにしても誰かの心にササったということですから、読み手の心に響く句であったことは、認めざるを得ないでしょう。少なくとも古い随句人の句が現在の狭い随句界においてすら、響いているとは言えない状況を謙虚に鑑みる機会になると自分は思います。

記事全体の当該部分を引用して紹介してみます。
なお、又吉氏の相手は、俳句結社「河」の編集長をしていた堀本裕樹氏です。
詳しくは、本書をお読みください。

●妄想させる秀逸句たち

又吉 最後は、「実石榴で妻は無色になっていく」(さはらこあめ)。これは、あんまり意味がわからなかったんですよ。掘本さんだったらもっと排句っぼく作るんじゃないかと思ったんですけど、この感覚が好きなので選びました。歳時記を引いたら、「石榴」は秋の季語で、中国では八月十五夜に月に供えるらしいです。でも、「実石榴で」というのがわかんないんですよ。「で」? 石榴のあの赤い色が、月明かりに照らされて白っぽく見えて、その時間がどんどん研ぎ澄まされていったら無色になっていく……ということを表現しているのか。相手は妻だから、それで二人が一体化していくという雰囲気なのか。
堀本 不思議な句ですよね。「実石榴で」の「で」が、中七・下五以下の内容と因果関係があるようでないんですよね。ひょっとして、妻が石榴を食べているという可能性もありますよね。
又吉 ああ、そうですね。
堀本 石榴を食べながら無色になるというのは、本来ならぁり得ないことだけど、それを象徴的に、詩的に、何かを伝えようとしている。例えばものすごく石榴が好きな妻で、食べたら無心になっていって、それこそ無色になっていくように見える、とか。
又吉 石榴は、八月十五夜に供えるから、「月」というお題に対して季語の「実石榴」を持ってきたと考えることもできますね。お供えした石榴は、月に与えたもの。その月のパワーを得た石榴を食べたら、月の力が入ってきて無色になっていく……というファンタジーなのかもしれないです。
堀本 とすると、「月」というお題はこの一句の中裏に隠されているわけですね。なるはど。作者がそこまで考えて作っているかどうかわからないけど、読む側が意味づけをしていくことで俳句って立ち上がってくるというのは多々あるんですよ。想像が膨らみますよね。このわからなさ加減に、文吉さん、引かれたんじゃないですか。
又吉 そうなんです。「どういうことなんやろう?」と感じる句は、やっぱり魅力的なんですよね。

○こあめさんの自解


それではこあめさんの自解です。

『実石榴で妻は無色になっていく』
この句は、子を産んだ直後の、ベッドへ横たわる女性をテレビで見て、それをヒントにして出来ました。石榴が、子宝の象徴だと聞いたことがあります。実と種がたくさんついているからでしょう。だから、「実石榴」としました。私は出産の経験はありませんが、子を産んだ女性は大変美しいと感じます。化粧もせず、着飾らず、母性にあふれた姿が、ありのままで美しい。その様が、「無色になっていく」と表現いたしました。

石榴が子宝の象徴というのは知りませんでした。この句の納得はやはり、このことを知っているかどうかでしょうね。
一般的に、桜と言えば、花のことです、実際石榴の花は夏ですから、実石榴として、同じ秋を指すお題の「月」を意識した事は、又吉氏も気づいていて、さすがですが、石榴の象徴が子宝とまでは気が付かなかったのですが、そして、また無色は自解にあるように、人間が生きるために身につけてしまう、ロベルト・ムシールの言う特性を身につけないと世を渡れないのだが、母という生き物の本性に戻るときに、人間の素裸の美しさがよみがえると感じる、やはりこあめさんのするどい感性は、実際に又吉氏の潜在意識に響いてきて、分からないけれど、もどかしい解からなさ自体に魅力を感じたというのは、又吉さんにも繊細な触角があると言うことでしょう。
メンテ

Page: 1 |