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俳句誌への掲載
日時: 2010/11/25 23:41
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

俳句誌などへ掲載された作品を紹介したり、論じたり評したりしたいと思います。
メンテ

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現代自由律◎句セレクション ( No.1 )
日時: 2010/11/25 23:44
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

文学の森社の『俳句界』の12月号に「こんなに面白い!現代の自由律俳句」の特集が組まれています。
○座談会 和久田登生・棚橋麗未・中塚唯人
○現代自由律◎句セレクション
○論考 永田龍太郎
○私の好きな自由律俳句
−裏文子、田中耕司、中村加津彦、吉多紀彦、播磨穹鷹、藤田踏青、漆畑利男

現代自由律◎句セレクション 編集部選

1・死ぬなと云ったのに君の通夜へ来た    青倉人士(青い地球・あまのがわ)
2・白い椿は冬花火赤い椿も冬花火    渥美ゆかり(海紅、阿良野句会)
3・路地にむかしが捨ててある    有澤秀子(層雲)
4・庭に葱植えて物語にならない人生    池田常男(層雲・ ぎんなん句会)
5・ふたりに一人病みリンゴころげだす    伊東佐久(青い地球)
6・親も子もみなそろったほろ酔い    井上敏雄(草原・層雲)
7・おれが死んでも桜がこんなに咲くんだな    漆畑利男(主流)
8・化石にもなれず 巻貝たち かわいていく    裏文子(あまのがわ)
9・やがて夜明けの 鍋釜ひかりだした    江崎美実(主流・口語俳句協会)
10・生返事の口紅つけている    岡田幸生(草原)

11・師走アメ横へまいど削り節だし昆布    上塚功子(海紅)
12・電柱の影の斜めにはいる    小田部昭代(草原)
13・きこきこきこきこ骨を組み立てると僕になる   加藤太郎(主流・海程)
14・また雨音の葉の昔   北田傀子(草原)
15・日の丸がふたつ夏を征く赤とんぼ        後藤泰号(青い地球)
16・ぽっと失業の泡吐いて酒場の金魚        小山智庸(海紅・かみなり)
17・どの蟻もつかれていない隊商のラクダだ     塩野谷西呂(海紅・稲穂)
17・掌の生命線切れ病んで生きている        鈴木豊明(青い地球)
19・田という田に水張り六月のまばゆい休養     すずきゆきひと(主流)
20・買つたのよのスカートが回る          そねだゆ(草原)

21・もう少し冬帽でいる僕の歩幅でいる       高橋登紀夫(海紅)
22・烏賊さいてその夜抱かれる女である       竹村国子(主流)
23・今日も来ているうぐいす猫八はぬいた      田中耕司(海紅)
24・未来ばかり見て来た少年石につまずく      田中陽(主流・口語俳句協会)
25・句集出シテウシロスガタヲサビシクシタナ    谷村茂(主流)
26・耳に痛い話は酒に逃がして月を見ている     鶴田育久(層雲)
27・それは暑い日で青空と毒薬           中村加津彦(青い地球・海程)
28・餓死ちかい子らをコマーシャルがスパッと消す  中林一洋(主流)
29・往診 星空に嘘の言葉を さがしさがし     永海兼人(あまのがわ)
30・歩いているここは年代記で読んだ町       馬場古戸暢(草原)

31・大きな流れどう曲がる虫しぐれ         原鈴子(海紅・赤壺詩社)
32・ザクロは海へ開き じわり太る核        福原修平(不明)
33・まだしばらくは生きるつもり便箋買う      藤原よし久(層雲)
34・紙の舟 まっしろいまま 月夜に出す      ますがよりこ(あまのがわ)
35・日傘たためよ 八月の空が見えない       三ケ島 京(あまのがわ)
36・人の優しさがふと重荷に花冷えを急ぐ      松尾尚子(層雲)
37・手のひらにとけて通夜の淡雪          安田十一(層雲)
38・今宵さくらと残業いたします          湯原幸三(海紅)
39・祭囃子かぜにのって洗濯物パンパンたたく    吉川通子(海紅)
40・星がきらきら寒さこぼす一本道を行く      渡野遽朴愁(層雲)

※選句に際しては、青い地球・あまのがわ・海紅・ぎんなん・主流・層雲.草原各結社のご協力を得ました。

      1〜10  11〜20  21〜30  31〜40  合計
草原     2      3       1       0      6
層雲     2      0       1       4      6
海紅     1      3       2       3      9
主流     2      2       4       0      8
青い地球   2      2       1       0      4
あまのがわ  1      0       1       2      4
所属不明   0      0       0       1      2
(所属不明には青い地球やあまのがわの方と思われますが、両会自体が分け難い面があります)

各結社は、10句を推薦します。そして会としてどうしても載せたい句には◎印を付け、編集部に送りました。

文学の森編集部では、まず7名が◎印を無視して選句し、それを高得点順に並べ、40句になるように最後の31〜40の句には点は入らなかったが◎が付いているために入れた句と思われます。
年功序列的に推薦句を決めた部分があったのではないかと推察されます。

「草原」では、北田傀子の提唱する「随句の基調」に忠実な句を作る作品を選び、年功や好悪の選句はありません。誰でも素直な方なら短期間で良い句ができるようになれるということを知っていただきたかったのです。
メンテ
『海藤抱壺 空を駆ける』 ( No.2 )
日時: 2011/05/06 22:53
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

「俳句界」5月号に、夭折の俳人たちとして、
野村朱鱗洞などと共に取り上げられた、「海藤抱壺」について、不肖私が記事を依頼されましたので、木下信三先生や北田傀子先生の御同意を得て書かさせていただきました。


 『海藤抱壺 空を駆ける』
草原 そねだゆ
 一九〇二年五月十三日仙台市営林署勤務農林技師を父として生まれる。一九一四年県立仙台二中に入学、十七、八才頃より聖書に親しむ。また北原白秋を敬仰していたことも彼の文学的背景になったと思われる。一九二〇年肺結核のために退学し、翌年母と弟妹たちと仙台市元寺小路の借家に住む。隣家に熱心なクリスチャンで社会党の菊池代議士がいた。
 一九二五年、二四歳の時に荻原井泉水に師事、「層雲」に投句を続けた。同病の伊東俊二や鈴木蜻郎や小澤武二など同人の助力でできた句集『三羽の鶴』(一九三四年発刊)がある。
 「唯一人、ひたすら師を信頼して句作にいそしんできた。自由律俳句が型や約束に掣肘され歪められることなく、まことの把握と表現の出来る道だったから、一途にその上を歩いてこられたのである。」(『三羽の鶴』の後書)
 句作が本格的になったのは、病状が悪化して、喀血のために危険な病状になった一九三〇年前後からである。抱壺は病勢が進んで、一九四〇年九月十八日、清冽な句の数々を残して、少年の頃パイロットになって飛びたいと言っていた空に駆け昇って行ったのだ。
行年三十九歳
 仙台在の中学教員の菊池青衣子も層雲同人として親しかった。井泉水は仙台を訪れた際に出合っている。さらに昭和十一年六月鶴岡の秋兎死に迷惑をかけた山頭火が仙台に来た時は青衣子と自宅で接待している。抱壺の訃報に山頭火は、
 〈あゝ抱壺君、君は水仙のやうな人であった、・・・闘病十数年、その苦痛、その忍耐、そしてその精進、とても私のような凡夫のできることではない・・・〉と日記に書いているが、その十九日後に山頭火も逝く。
 抱壺の墓は、西多摩霊園にある。静謐な句を読んだ方この墓もまた静かである。
(この原稿を書くに当たり、これまで海藤抱壺研究で多大な貢献をされた木下信三先生並びに北田傀子先生のご了解と資料提供をいただきましたことに深く謝辞を申し上げます)

海藤抱壺代表句十句

 水薬凍らなくなつた朝はうぐひす
 寂しさわかる心にあへば別れる
 月は澄んで氷嚢のま上か
 またお医者の手の冷たい冬がきた
 日に日に薬の紙を手にして三羽の鶴
 水薬を盃にして一月一日
 楽書きのやうな命消えもせず春
 夢にも匂ふ桃が枕元
 死の近しか青木の実は赤ききはみ
 土に影おけば癒えてゐるやうな

参考文献:『海藤抱壺 句集』牧羊社1984年発刊
       『海藤 抱壺』木下 信三1992年追刊
       「海藤抱壺-発見された手紙から」北田傀子
       「随雲」2000年三、四月号

 そねだゆ略歴
 一九四一年広島に生まれる。川崎市在住。二〇〇三年、文学としての随句(自由律俳句)を求めて「草原」に入会し、北田傀子に師事。〇八年、師の急病により「草原」の編集担当。
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