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第8回東京自由律俳句会
日時: 2011/09/26 14:17
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

 【第八回東京自由律俳句会お知らせ】

今回は勉強会と句会を行います。勉強会のテーマは日頃作句のときに抱く疑問についてです。テーマは
 @ルビ A一字空け Bキレ C時事句 D添削 E多作
等について話し合います。
 また今回より最優秀作品を「自由律大賞」(東京自由律俳句会選)とし表彰します。奮っての投句および参加をお願い致します。
日時  平成二十三年十一月二十三日(水)勤労感謝の日
    午後一時〜五時

会場  江東区 芭蕉記念館・分館(いつもの本館ではありませんので近くの分館ですのでお間違えなく)
    〒135‐0006
    東京都江東区常盤1ー6ー3
    電話03ー3631ー1448
    地下鉄都営大江戸線 森下駅A1出口より徒歩7分
    東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅清澄通り改札A1出口徒歩10分

当日参加料 一〇〇〇円(資料代含む 出句のみも可)
出句料   一〇〇〇円二句一組 未発表のもの
 葉書・FAX・メール等でお名前(所属句会)、住所、電話番号、二句、当日 参加あるいは欠席を記入のうえ 海紅社 中塚唯人宛 下記までお申し込 み下さい。
〒154-0012 東京都世田谷区駒沢2−28−14 
FAX  03−3422−6962
メール tadato8008@nifty.com 中塚唯人宛
投句料千円は 郵便振替口座 00170−6−38652 海紅社口座まで

締切り 平成二十三年十月十五日(金)

プロデュース  「海紅社」
メンテ

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第8回東京自由律俳句会 報告 ( No.1 )
日時: 2012/01/30 14:33
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

第八回東京自由律俳句会
           平成23年11月23日(水)
           江東区芭蕉記念館分館に於て

 今回は「世界俳句協会」の夏石番矢氏をゲストにお招きし、「句会」と「勉強会」の二部構成で開催された。句会には結社の枠を超えた五十七名による百十四句の投句があり、事前に全員に選句を依頼し、その最高得点句(今回は二句)を第八回東京自由律俳句会大賞と認定し、賞品が授与された。
大賞
一人を独りと書いてしまいそうな月夜   渥美ゆかり

 満月 手をピストルにしてあなたを撃つ  南家歌也子

三位
 足裏の砂逃げていくひとりばっちの汀  吉田敷江

四位
 煮凝りの中までゆれてる淋しさかよ   藤田踏青

五位
 こんこんとねむるまぶたは白い貝のふた  吉原陽子

その他上位句
 今年最後の朝顔はやさしい色でした   田中耕司
 あれこれ引き算してます老いの一里塚  若山志津子
 神様ミリシーベルトが重いんです    中塚唯人
 原発をいうわたしの言葉がたりない   平岡久美子 
 抱く子の耳唇にはさむ母も幼い     吉多紀彦
 妻外泊の日の雨戸を閉める       吉多紀彦

 これら以外の句でも点数は高くなくても興味溢れる句、疑問のある句などにも活発な意見が交わされ有意義な句会となった。たった二十文字前後の言葉で表現された作者の思いを、完全に理解することは難しく、色々な読み方が出てくるのは当然であるが、決めつけることなく素直な心でよく読むことがいかに大事で、ひとの読み方を十分理解する度量も大切と実感した句会であった。
 第二部は「勉強会」となり、今回は作句の上で日頃よく話題になる五項目(@ルビA一字空けBキレC時事句D添削)にしぼり、討論が始まった。
 結論から言えばこれらに、原則・約束事などはなく、作者の自由裁量に任されるのだが、@Aについては、安易に使うことなくそれを使用する意味をよく考えて、効果的に使うべきだとする意見、Bについては、最近の若い人の作品にはキレがなく、「何々がどうした」「何々はこうです」 の散文調・綴方風の作品が多いが、この傾向はパソコンやiPhoneなどの使用に若者がなじみ、字の書き方・読み方、その意味や日本語の持つ特性、多様性などに対する理解度の欠如などが指摘された。Cについては、今回も東日本大震災の句が多く取り上げられたが、テレビや新聞などマスコミで取り上げられたものをもとに傍観者的に詠んだ句と、実際に被災に遭われた方の句とには大きな隔たりがあり、本当の心の叫びは単なる「時事句」と一括り出来るものではなく、それこそ時代の流れに風化するものでも色褪せるものではない本来の俳句との話も出た。Dについては、誰しも直ぐに上達するものではなく、また添削により真の理解なく一句をなしえても身に付くものでなく、句会などで作品を衆目に曝し、意見を求め、真撃な態度で句評に耳を傾け、その結果、最終的に自分で一句を作り上げる、その地道な努力が肝要とされた。そして自由律俳句で大事なことは自選をする、多作はいいことだが自分の作品を自信を持って提示できるような努力を怠ってはいけないと言うことが確認された。次回は「句会」を中心に五月に開催される予定で、より多くの自由律を愛する方々の御参加を頂きたい。
          レポート・中塚唯人

▲「添削」については自分がやりましたが、私の主張が無視されて、中塚さんの主観が出たレポートになっているのは、心配です。
選句も鑑賞も、作家の成長を阻害する危険があることを心してしないと、結社風になったり、旧い作家の枠内に閉じ込めてしまいます。年期の入った先輩の句や上位句の模倣に陥る危険がありますから、作家も観衆や選句においても、その作家の個性である、眼差しを独自に磨くことをまず最初に心得るように、アドバイスするべきです。
 井泉水は、彼の作品を鑑賞すると随句の基調をその表現に完全に表れていません。作為のある点や定形俳句の残滓を引きずっていることは明らかです。
 しかし、彼の山頭火や放哉への添削は神業です。井泉水がいなければ、今日の山頭火や放哉の評価はなかったでしょう。
 そうです、芭蕉や一茶を研究しつくした井泉水だからこその眼力があったので、その後彼を超える指導者がいなくなったのが、『層雲衰退』の一因と思います。
 現在の『層雲』の選者を見ても、そうした自覚もなく、自分の水準で改作を行うのでは、これからの随句の運命は、レッドブックに載るのも遠くはないと言わざるを得ません。
メンテ
小誌より はじめに ( No.2 )
日時: 2012/03/26 12:16
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

◆はじめに◆
 この会は春は句会、秋は勉強会を中心として、これまで全く横の繋がりのなかった閉鎖的な自由律界を、結社などの枠を超え、これからの自由律句の未来を切り開こうとの熱い心を持った人の仲間の輪です。今回は勉強会を中心に進行され、今回より最高得点句を『自由律大賞(東京自由律俳句会選』として認定しました。

◆参加者名簿
   (アイウエオ順、丸印は当日参加者です)
渥美ゆかり(海紅「阿良野句会」)
 有明サトミ(海紅・大阪)
○粟野賢太郎(「海紅」・「草原」)
井尾 良子(「ロマネコンテ」)
 伊藤 清雄(「層雲」・「青い地球」)
 伊藤 真一(「主流」)
○岩村 操子(「草原」)
○岩谷 照子(海紅「しらさぎ句会」)
 遠藤佐和子(海紅・東京)
○大井 恒行(文學の森杜)
大西  節(海紅「赤壺詩社」)
荻島 架人(「ぎんなん句会」)
○折原 義司(海紅「かみなり社」)
○上塚 功子(海紅「しらさぎ句会」)
○萱沼 良行(「ぎんなん句会」)
河合  謙(海紅「はらから」)
鬼頭 富子(「萌句会」)
○黒瀬 文子(「しらゆり句会」)
○小山 君子(海紅「かみなり社」)
○小山 智庸(海紅「かみなり社」)
紺  良造(海紅「かも川吟社」)
斎藤  実(「ぎんなん句会」・「層雲」)、
○佐瀬 広隆(「ぎんなん句会」)
 塩野谷 西呂(海紅「稲穂吟社」)
 渋谷 知宏(海紅・大阪)
白神 美佐子(「しらゆり句会」)
○白松 いちろう(「群妙」)
 新山 賢治(「群妙」)
 菅原 瓔子(海紅・秋田)
 鈴木 和枝(「主流」)
○そねだゆ (「草原」・「ぎんなん句会」)
 高橋 登紀夫(海紅「かも川吟社」)
○田中 耕司(海紅「海紅社句会」)
○柵橋 麗未(「しらゆり句会」)
 ちば つゆこ(「層雲」・「エトレ会」・「松の会」)
都丸 ゆきお(海紅「しらさぎ句会」)
 富永 鳩山(「群妙」)
 中島 福子(海紅・大阪)
 中塚 銀太(海紅・岡山)
○中塚 唯人(海紅「海紅社句会」)
 中塚 禮子(海紅・岡山)
○夏石 番矢(「吟遊社」・世界俳句協会」)
南家歌也子(「層雲」・「ぎんなん句会」)
原  鈴子(海紅「赤壺詩社」)
○平岡 久美子(「ぎんなん句会」)
 藤田 踏青(「層雲自由律」「豈」「でんでん虫の会」)
ベランジェ昌子(「ぎんなん句会」)
○堀  美子(「ぎんなん句会」)
○増渕 コク(海紅「かみなり社」)
 宮地 祥子(「萌句会」)
 森   命(海紅・岐阜)
 森中 芳子(海紅・大阪)
 矢野 風狂子(「草原」)
○湯原 幸三(海紅「海紅社句会」)
○吉川 通子(海紅「海紅社句会」)
 吉田 數江(「萌句会」)
○吉多 紀彦(「ぎんなん句会」)
 吉原 陽子(「萌句会」
 若山志津子(「萌句会」)

 今回は五十六名の方から百十四句の投句を戴き、当日は二十三名の方のご出席により、楽しくも有意義な会になりましたこと、誠に有り難うございました。厚く御礼申し上げます。
まずは、百句を超えることが当初の目標でした。まだまださらなる多くの句の提示が必要とも思われ、それがお互いの切磋琢磨となり自由律句の向上に繋がればと思いますので、今後とも引き続き宜しくお願いいたします。
メンテ
小誌より 詠草集 上 ( No.3 )
日時: 2012/03/26 12:47
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

第八回東京自由律俳句会詠草集

1 名月を届けたい今夜も写メールで   宮地 祥子
2 夕日を担ぐ赤とんぼとにらめっこ   佐瀬 広隆
3 網戸の破れ目すみません秋風通る   上塚 功子
4 名月やネズミの足音肥えている    湯原 幸三
5 抱く子の耳唇にはさむ母も幼い    吉多 紀彦
6 歩けば風とはふはふ対話       萱沼 良行
7 悲喜こもごも音も無く閉まる病棟のエレベーター 白松いちろう
8 伴にいて語らう道野辺のポツリポツリと寒桜 河合 謙
9 日当たり良好ドウダンツツジ赤い顔  吉川 通子
10 二枚目の袷縫う孫娘(まご)と話せた尺と寸 遠藤佐和子
11 二十世紀の甘い汁を吸う       渋谷 知宏
12 呑んで笑って俵のねずみ       佐瀬 広隆
13 団栗ごろごろ栗鼠は忙しげ冬仕度  吉川 通子
14 誕生の知らせ 毛糸編む手が踊る   堀 美子
15 焼茄子の匂い秒針ひたすらに廻す   遠藤佐和子
16 煮凝りの中までゆれてる淋しさかよ  藤田 踏青
17 私の笑顔が大好きだった亡父(ちち)のために笑う 南家歌也子
18 妻外泊の日の雨戸を閉める      吉多 紀彦
19 今年最後の朝顔はやさしい色でした  田中 耕
20 降り続いて沖にダンボの鼻がゆれる ベランジェ昌子
21 言葉に家出され句が空白       萱沼 良行
22 原発をいうわたしの言葉がたりない  平岡久美子
23 見逃した秋の七草二つ三つ浮世絵にさがす 上塚 功子
24 銀杏かがやいて三輪車がひとつ    富永 鳩山
25 甘える孫の女の目          そねだ ゆ
26 おやまのてっぺんから溢れでた秋のひと日 中塚 唯人
27 稲穂、金色に棚引く田だから大丈夫さ 渋谷 知宏
28 老爺のおかしらに赤トンボ止まる稲田 岩村 操子
29 雷鳴ころがって花の私語止まる    高橋登紀夫
30 寄れば鯉の口が媚びている      ちばつゆこ
31 夜長の灯つなぎ合わせて母になる   棚橋 麗未
32 夢の世界へA列車で行こう=@   都丸ゆきお
33 指先へきついバンドエイド寂しさが鈍る 吉田 數江
34 幽霊も同居柳の下に泥鰌が二匹    小山 智庸
35 子供達が目ヤニだらけの犬と遊んでいる 風狂子
36 山の墓は天保天明生きた証      原 鈴子
37 もみじの天ぷらあります 茶屋森閑  藤田 踏青
38 喪の朝 ただ曼珠沙華あかく立ち   宮地 祥子
39 原発の賛否ひたひた地球のなぎさ   吉原 陽子
40 茗荷食べすぎ又はがき出し忘れ    岩谷 照子
41 ミュージシャン絵と焼き物にメロディたっぷり 中塚 銀太
42 道標の如く墓迄続く彼岸花      有明サトミ
43 満月を一目見に出て床につく     中島 福子
44 満月 手をピストルにしてあなたを撃つ 南家歌也子
45 迷い道我ひとり地球の真ん中     鬼頭 富子
46 孫とキャッチボールができて敬老の日 増渕 コク
47 枕木も稚内から鹿児島まで炎天に耐えている 塩野谷西呂
48 僕の植木ばち虫達の家        粟野賢太郎
49 ほおずきの中スパニッシュダンス   井尾 良子
50 慣れれば余震の尻が重たい      そねだ ゆ
51 今度は洗濯機ピーで動かされる俺が秋だ 田中 耕司
52 不景気な暖簾の高さに紫苑咲かせた  紺 良造
53 一人を独りと書いてしまいそうな月夜 渥美ゆかり
54 甘酒たんと召し上がれ彼岸供養    中塚 禮子
55 花火のよく上がる秋だ鴉の流し目   高橋登紀夫
56 箸がころんでもという子は独立の秋  ベランジェ昌子
57 値下げしても来年の物は買わない九十才 中島 福子
58 茄子は花もむらさきだから碧空だ   塩野谷西呂
59 どんぐりちょいちょいふまぬよう   粟野賢太郎
60 どんぐりコロコロ地球の自転に逆らわず 紺 良造
61 どらえもんにもらった赤い羽根ですね 鈴木 和枝
62 時には仲たがい九月の人と水     森 命
63 冬瓜の太くてでかい農婦の尻だ    伊藤 眞一
64 トイレかってほどのキンモクセイにぶつかる 湯原 幸三
65 電波時計を引っ張って来た子雀    白神 美佐子
66 出刃包丁の刃がかけた栗カボチャ割る 小山 君子
67 手負いのカマキリと歩く砂利道    黒瀬 文子
68 大根があるから秋刀魚を買うか    都丸 ゆきお
69 それぞれの場所こそ違え十五夜の月(東北震災) 森中 芳子
70 爽涼稲穂の御辞儀に挨拶返す     折原 義司
(つづく)
メンテ
小誌より 詠草集 下 ( No.4 )
日時: 2012/03/26 12:48
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

71 壮絶に生きた母のぼんやりした巻き寿司の味 若山 志津子
72 芒の原ナビが現在地を迷う      菅原 瓔子
73 白いクレヨンなぐり描き涙ポタリ   鬼頭 富子
74 叱ったこともあるが実にでかい大根  鈴木 和枝
75 山頭火 放哉時々オクラ       井尾 良子
76 さわやかに泥をかぶったピアノ直してコンサート (石巻、歌手のくみ子さん)森中 芳子
77 百日紅残暑といっしょに長い日日   中塚 銀太
78 更地、あのにぎわいあの頃のかお顔貌 斎藤 実
79 里芋煮つめてサンマ焼いて円高円安  岩村 操子   
80 今夜は名月夫と眺め心もまあるい   増渕 コク
81 こんこんとねむるまぶたは白い貝のふた 吉原 陽子
82 米光る日本まだまだ生きている    伊藤 眞一
83 ごくろうさん終日土の手入れ又春よろしく 岩谷 照子
84 蟋蟀瓜喰べ切って瓜底でなく     大西 節
85 子犬が金木犀の匂いを探してる    ちばつゆこ
86 金木犀のすだれをくぐって逢いにいく 荻島 架人
87 経本に雨つぶ読経の若い僧の背    原 鈴子
88 昨日今日今日から明日と真赤な夕日  渥美 ゆかり
89 聞き分けのない株もと石蕗の偶然   大西 節
90 川を破らんと台風の雨ぐんぐん増員してゆく 斎藤 実
91 神様ミリシーベルトが重いんです   中塚 唯人
92 カマキリが私の中にも野原にも    黒瀬 文子
93 限りある季節咲くときは咲こう曼珠沙華 森 命
94 お若いですね喉に刺さった秋刀魚の棘 小山 智庸
95 慙悸を隠し歓喜に浸る陽の落ちる早さよ 河合  謙
96 親子亀セシウム張り付く片かげり   伊藤 清雄
97 ウソ・ホント目玉にうつる赤トンボ  白神 美佐子
98 遺作展在りし日の彼岸花に魅せられし 中塚 禮子
99 いいんですよ忘れて下さい秋の水   平岡 久美子
100 あれこれ引き算してます老いの一里塚 若山 志津子
101 重い荷も軽々第一子と退院の父    白松 いちろう
102 甘草の不在飛び飛びにあるパステル  伊藤 清雄
103 あの日より斜めに話す瓦礫の山    富永 鳩山
104 アスファルトに落ちたドングリの未来 堀 美子
105 足をとめれば金木犀がくれた時間   荻島 架人
106 足裏の砂逃げていくひとりぽっちの汀 吉田 數江
107 秋日和礼服の一団バスから今日は大安吉日 有明 サトミ
108 蒼空仰ぎ頂く新米の塩むすび    折原 義司
109 三月十一日の一本松に名月寄り添う 菅原 瓔子
110 十三夜誰にも言えないことひとつ  棚橋 麗未
111 何もない田に蝶          風狂子
112 夕暮の暑さに生まれたての蝉鳴く  小山 君子
113 バス停にいつもの男女タンポポも並んでいる 新山 賢治
114 誰かに不義理してそうで手帳をめくる 新山 賢治
メンテ
報告書 ( No.5 )
日時: 2012/03/26 12:51
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

【第八回東京自由律俳句会】湯原 幸三
 平成二十三年十一月二十三日、「第八回東京自由律俳句会」が開催されました。会場はこれまでと同様に江東区の芭蕉記念館ですが一階会議室ではなく、少し離れた分館。天候に恵まれない本会には珍しく、天気は晴。事前投句数は前回よりも増えて百十四句。当日出席者は二十三名で、世界俳句協会の夏石番矢氏にもご参加いただきました。
 勉強会中心に行われた今回は海紅社がプロデュース。会場の机をロの字型に配置し、お互いの顔が見えるように着席して、いよいよスタートです。

 まずは前回のプロデューサー「群妙」の白松いちろう氏からご挨拶。「自由律俳句は楽しい、また、自由律俳句界は動いてきているし、皆で肝胆相照らす時間が持てることが素晴らしい」、といったお話でした。次に、初参加の賢太郎氏がひとこと。それからゲストの夏石番矢氏。夏石氏によると、海外では国内と違って有季定型にこだわらない自由律が当たり前になっているそうです。自由律俳句も元気をだしていきましょうとお言葉をいただきました。

 そして、句会が始まります。披講は田中耕司氏。事前選句による結果の上位五位に選ばれた句の作者が全員欠席でしたので、自句自解を送ってもらっており、今回は出席者全員で句に対する意見を出し合った後にそれを読み上げる方式。しばらく、班分けして少人数で話し合うシステムが採用されていたので、いきなり全員参加の句会を行うのは久しぶりです。それでも何の問題も無く、上位句や参加者が選んだ句、誰にも選ばれなかった句などを取り上げて皆で発言し句会は大いに盛り上がりました。

 続いて、勉強会。テーマは
「添削・時事句・ルビ・一字空け・キレ」
について。考え方は人によって違うので答えを出すことは出来ないけれど、句作の参考にするため、さまざまな意見を出し合うこと自体が目的です。司会は中塚唯人氏。それぞれの項目で肯定派も否定派も、あるいは単純には肯定も否定もできないという考えの方もいて、活発に意見交換を行いました。

 最後に、白松氏より「自由律句のひろば」に関するお知らせ。一部の地域に限定せず、全国的な規模で、自由律俳句に携わるすべての人々が結社の枠を超えて集まる場としてスタート。今後、このひろばは、アンソロジーの発行、全国大会の開催を計画していたり、将来的には自由律俳句協会の設立をも視野に入れての活動を始め、少しずつ動き出しているそうです。現在は、今後どのように具体的に行動してゆくべきかを検討するための多くの意見を集めている段階とのこと。この流れを止めないように東京自由律俳句会としても今まで同様、協力出来ることは協力することになっています。

 真面目な話のあとは同会場で懇親会。こちらも句会や勉強会と同じく盛り上がります。こうして楽しいしいイベントはお開きとなりました。
 終了後、気づいてみると外は雨。やはり東京自由律俳句会には雨がつきもののようです。
メンテ
披講を終えて by 田中耕司 ( No.6 )
日時: 2012/03/26 12:52
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

 【披講を終えて】       田中 耕司
 今回は百十四作品が寄せられました。その結果、「第一回自由律句大賞(東京自由律俳句会選)」には二句が選ばれ、その得票数は十七ポイントでした。
 十七ポイントが多いのか少ないのかも意見の分かれるところでしょうが、全体のレベルが高くなっているからであると思います。また、そうでなければいけないのだと思います。前置きが長くなりました。
 それでは、先ずは大賞同点二句。
満月 手をピストルにしてあなたを撃つ
南家歌也子
 南家作品は、六名の特選を得ています。それだけ強い印象を受けたのでしょう。満月の神秘性とからめての評が多かったようです。この句の、一字明けについてもう少し時間をかけて意見を交換したかったのですが、それほど問題となるような使い方ではないというのが大勢だったようです。
 「手をピストルにする」という作品は過去にあるので手を出したくなかったとの指摘がありました。すべての作品を知るのは不可能ですし、同じ様な言葉の並びの句があっても発想が違えば問題はないと思います。
 それよりもちょっぴり男と女の愛憎があって、しかもそれがユーモアをもって深刻にしていないところに魅力があり、満月にはこのような魔力もあることを皆さん感じたのが高得点の原因だと思います。
一人を独りと書いてしまいそうな月夜
渥美ゆかり
 渥美作品の特選は三名でした。同じポイントですから、賛成者の数ではこちらのほうが多いという結果でした。「絶対に残したい日本の文化」と言う特選の評もありましたが、非常にうまい使い方であると感じましたし、そこが賛成者の多くに共通した受け取り方だったのではないかと思います。女性らしい作品だなと思っていましたが、別に女性でなくても通じる作品だと思うようになりました。それが何に起因するのかは分かりませんが、正直な句作がそうさせるのだと思います。
 秋らしく、月を題材としていながら全く違う表現で一句を構成している。南家作品の、「一字空け」、渥美作品の「一人を独り」、この二句には、音で聞いたのでは理解できない、活字や描いたものを見なければ理解できないという共通の弱点があります。この弱点を克服するために現在の我々には、不断の努力が求められています。ここに自由律俳句の大きな可能性があるのだと確信をしました。
 第三位には、十四ポイントで
足裏の砂逃げていくひとりぽっちの汀
吉田 數江
 吉田作品の特選は、三名でした。特選に選ぶのは人によって基準が違うのでしょうが、共通しているのは作品との一体感を持てるかどうかだと思います。その意味で、この作品がもっている感覚は、多くの人に共感をもって迎えられる作品なのだと思います。そのために作者は、渚と書かずに汀と書いている。この一字の選択が一句を成功へと導いたのだと思います。個人的な話で恐縮ですが、少年時代、私もこの作品と同じ状況の一句を作った覚えがあります。その時、この状況を上手く一句にできたら免許皆伝にしてあげると言われました。このようにかなり普遍的な題材なのかもしれませんが、だからこそ多くの賛成を得たのだと言えるのではないでしょうか。
第四位には、十一ポイントで
煮凝りの中までゆれてる淋しさかよ
藤田 踏青
 藤田作品の特選は、一名でした。特選が一名で、ポイントが多いのは賛成者が多いのですから、作者の想いが多くの人に伝わったのだと言えます。食べ物の煮凝りを思うよりも、そこからの発想で今回の震災を思い浮かべた人たちが多かったように感じました。あのプリン体の頼りなさが、震災による液状化を思わせたのかもしれません。この作品の結句「かよ」についても色々な意見があったと思うのですが時間的余裕がありませんでした。ここを話し合うべきなのにという思いです。

 第五位には、十ポイントで
こんこんとねむるまぶたは白い貝のふた
吉原 陽子
 吉原作品は、二名の特選を得ています。この作品の解釈は二つに分かれていました。小さな子供が遊び疲れたのかぐっすり寝てしまっているという、普遍的な人間愛を感じた人と「こんこんと」の言葉から重い病の床にある友人や、家族を思った人です。どちらが正しいとかは問題ではなく、この作品にある、人を思う心が読む側に伝わったのだと思います。私は、貝のふたから固く閉じられたと感じたのですが、友人の死までは読み取れませんでした。
今回、高得点の作者が参加できない人ばかりでしたので、自解を送ってもらっていて作者の気持ちが解ったのですが、やはり直接お話を聞きたいという思いは、参加者の皆に共通していたのではないかと感じました。そして、「一句を作るのは上手くなったが、読み方がちっともうまくならない。」と言われた師の言葉にほんの少しは答えられたのだろうかと、振り返っています。この会を、続けていくうちにきっと一位の作品にある弱点を克服する次の世代が出てくるのだと、大きな希望を持てました。参加された皆さんには、十分な満足をしてもらえなかったのだろうとは思いますが、私は、十分に満足できた句会だったと感じています。
 その他上位句
今年最後の朝顔はやさしい色でした 田中 耕司
あれこれ引き算してます老いの一里塚 若山志津子
神様ミリシーベルトが重いんです 中塚 唯人
原発をいうわたしの言葉がたりない 平岡久美子
抱く子の耳唇にはさむ母も幼い 吉多 紀彦
妻外泊の日の雨戸を閉める       〃
メンテ
勉強会より ( No.7 )
日時: 2012/03/26 12:54
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

【第八回東京自由律俳句会勉強会より】
中塚 唯人
 今回の勉強会は作句の上で日頃よく話題になる次の五項目について話し合ってみました。
@ル ビ― 例えば女を「ひと」、娘を「こ」、温泉を「ゆ」、今回の句でも亡父を「ちち」、孫娘を「まご」とルビを振っています。これは日本語に同義語が多いという特性にも由来しており、これはこう読みたいという作者の意思も含み、その必要性も否定できません。ただし日本語としては必要、有意義なものであっても、世界俳句に於いては、英訳されればその使い分けは無意味であるし、音にして朗読する場合はその特性も通用しないのではないかという夏石番矢氏の話にも頷くものがありました。ただし、日本語の持つ特性を十分に理解し、それを認識して使うものであれば、日本人としてその美を後世に残して行くことも大切なことであると思います。
いずれにしてもその意味を把握し、必要不可欠な場合を除いての乱用は慎みたいとのことでした。
A一字空け―この効用はキレにも繋がり、一拍おくことにより時間的経過や場面の転換、新たなる展開、その空白に語られないところのイメージの広がりなどをもたらすこともあります。また文字が続くことにより意味が変化する場合もあり、作者の伝えたいことをハッキリとさせる効用もあるのです。それを自分自身で明確に意識し、充分に「てにをは」や言葉の置き換え、前後の入れ替えなどを推敲し、その後で自信を持って使用するべきで、これも無用なところまで安直に乱用することは避けたいものです。
Bキ レ―最近の句、特に若い人の句にはキレがなく、「何々がどうした」「何々はこうです」の散文調、綴り方風の句が多く、高校生などの句を読むとほとんどがその傾向で、一層その思いが強くなります。これは口語俳句が定着した今日に於いては致し方のない傾向とは思われます。
元々の俳句は定型を基調とし、「や」「かな」「けり」の切れ字が存在し、文語調を好まないとされる自由律では、先ず今日ではお目にかかれない言葉であり、また五七五自体にもキレの効用があるのです。
それがない自由律としては代替として一字空けや散文調に頼るのも時代の流れとも言えましょう。
 またこの傾向も現代の教育環境や世相も背後にあり、パソコンやiPh0ne等の普及で、現代人が手紙などを使った文字による通信手段の使用が少なくなったことから、漢字の書き方や読み方、その意味や、日本語本来の持つ特性、美しさ、多様性などに対する理解度が欠如し、それすら必要のない時代になりつつあるのも事実です。
 逆説的に言えば俳句をたしなむことで、日本語がもう一度見直される絶好の機会とも言えるのではないでしょうか。特に益々それが失われて行く傾向が強くなるであろう、これからの若い人に必要不可欠なことと思われます。
C時事句―「時事句はその場その時、有効な力があるがやがて鮮明さが失われて行くもろさがある」と言っておられる方がおられました。
 今回も東日本大震災の句が多く取り上げられましたが、テレビ・新聞・マスコミなどで取り上げられたものをもとに傍観者的に詠んだ句と、実際に被災に遭われた方の作られた句には大きな隔たりがあり、体験した自分自身の心の奥底から湧き出た叫びは、それこそ人間の生に触れたもので、単に「時事句」と一括り出来るものではなく、その真実は時代の流れに風化するものでもなく、それこそ本来の俳句のあるべき姿であるとの話が出ました。
D添 削―句歴の浅い方には必要なことも否定するものではありませんが、直ぐの上達の近道はなく、自分で努力することこそが一番大切なことです。そして作者の心を理解せず添削されたものは単なる「直し」で、形として一句をなし得たとしても、何か人の句になったようで、それは本当に自分の句でもなく、身に付くものではありません。句会などで、もちろん自分の心持ちを語るのも必要ですが、評を受けて他人の言にも聞く耳を持ち、それを十分に理解し、良いところは素直に受け入れ、その上で再度自分自身が考え、最終的には自分の納得いく自信作、すなわち自選句を作ることが大事と云う話になりました。

 結論から言うと原則、約束事等はなく最終的には作者の判断によるものでありますが、改めてみなで話し合ってみると、自由律の利点と共に、その問題点も色々と見えてきたようで、非常に興味深いことであるように思われました。
メンテ
話題になった句 ( No.8 )
日時: 2012/03/26 13:03
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

 次に句会の中から話題になった何句かを取り上げてみたいと思います。まずは、田中耕司氏の【披講を終えて】にも登場した三句から、
一人を独りと書いてしまいそうな月夜
 渥美ゆかり
 この句についての意見交換から人の句を読むことがいかに難しいかと感じました。一句目は誰しも作者の孤独感までは読み取りましたが、披講した田中耕司氏は「それほど孤独とは思わない」言いました。それは「しまいそうな」のそうなにあるとのことです。
そして作者の自解を読むと(もちろん披講者はその内容を知りません)
「月の美しさは誰にも邪魔されず静かに味わいたいもの。この寂しい程の美しさは孤独にも似た静けさでもある。孤独という言葉はなかなか照れくさく使えないが、月の美しさに託して独りの楽しみを知って欲しかった」と述べています。それはあたかも

 こんなよい月を一人で見て寝る   放哉

の句境につながるものがあります。

 足裏の砂逃げていくひとりぽっちの汀  吉田 數江

 この句は最初私が読んだ時になぜ「汀」を「渚」
と書かないのだろうかと疑問に思いました。すると作者からの答は、字が好みであったのと、「汀」はみぎわ(身際)と読むことも意識したそうです。田中耕司氏は披講の時最初にそう音読みしました。すでにそのときそのことを感じていたのでしょう。

 こんこんとねむるまぶたは白い貝のふた  吉原 陽子

 二句目は、幼い子供がぐっすり眠っているのを想像した人が大勢を占めていました。しかし披講者はそれならば「すやすやと」、あるいは「遊び疲れて」と言うはずで、「こんこん」とは言わないのでこれは重病人なのではないかと指摘しました。その読み方を個人の決めつけと声を大にして反論する人もいましたが、もちろん十七文字かそこいらで表現するのですから、作者の意思を正確に読み取ることも、逆に作者が読者に伝えることも難しいのですが、作る方にも推敲が必要なように、自分の読み方が絶対だと思う前に、読む方も作者の伝えたいことを読みとるに足る充分な力量がいかに必要かと言うことです。
 次に話題になった句を何句か。

 降り続いて沖にダンボの鼻がゆれる     ベランジェ昌子  

 先ず疑問なのは「沖」とはどういう場面か、次に「ダンボ」ならば一般的にまず思いつくのは「耳」
でなぜここに鼻が出てきたのかです。勝手に想像するには沖行く大型船が霧にかすんでそう見えた、あるいは岸壁の巨大クレーンが港越しにダンボの鼻のように見えたなど意見が出ましたが、その実は誰も解りませんでした。そこで作者に後日聞いてみると、あんまり雨が降るので、昔映画で見たダンボが鼻から降らしているのではないかと思って作ったそうで、ダンボは空を飛ぶのでそうしたそうです。
 少し飛躍しすぎの感はありますが、中々面白い句で句会などにおいて作者に直接に聞いてみれば、発想にも新味があり一層興味深くなると思いました。

 白いクレヨンなぐり描き涙ポタリ      鬼頭 富子

 この句はゲストの夏石番矢氏が特選に選んだ句で、普通なぐり描きするには白は使わないのに、「白いクレヨン」との出だしに注目したそうです。そして「ぽたり」で句自体に動きを感じたそうです。そしてこの句は朗読に堪えうる句で一番好きだと言うことでした。俳句は文学だと頑なに、目で文字を読むものだと信じている人が多い中で、音を大事にする、これも大切なことだと思い知りました。

 おやまのてっぺんから溢れでた秋のひと日   中塚 唯人

 作者の思いは溢れ出たのは「陽」ではなく「もみじ」です。それでも「ひと日」がそれを難しくしているようなので「いちにち」としてみようかと思っています。

 二十世紀の甘い汁を吸う      渋谷 知宏

 この句は何気なく読み過ごしてしまう句ですが奥深い句と思われます。つまり二十世紀までは世の中はバブル期で甘い汁を吸っていましたが、今世紀になって、特に大震災後はすべてがうまくいかなくなったと、時代への諦めとか皮肉が込められています。ただし川柳的なところをもう少し巧く出来たらなとは思います。

 トイレかってほどのキンモクセイにぶつかる
 湯原 幸三

 この句は皆さんほとんどの方が意味を理解できなかったようです。つまり「かってほどの」という若者の話し言葉、いわば俗語的な使い方が難しかったようです。つまり「トイレかと思うほどの(すごい匂いの)」と言うことだと思います。
それでも前句同様、二人を含め他にも若い人達が一生懸命に何かをやろうとしている努力には、まだまだ未熟な面はあると思いますが、今後の可能性を大いに期待が持てるところです。

 今後益々若い人の参加が多くなってくると思います。その時に全員がさらなる飛躍が出来るようにありたいと思います。
メンテ
好みの句朗読 第一部 ( No.9 )
日時: 2012/09/16 20:20
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

第一部
@夏石番矢(吟遊社)
 「空飛ぶ法王」より

A中塚唯人(海紅)
 「第一作」より   中塚一碧楼
 菜切庖丁では死ねない、冬日屋根に落つる
 霙る。その頸筋(うなぢ)へメスを刺させい
 大事な抽斗しにろうそくも這入つて居て冬
 乳母は桶の海鼠を見てまた歩いた
 賭博でもよい、滅法勝って女をアツと云わせたき夜かな
 土を掘るか、我を埋めんとて、土を掘るか
 絽蚊帳にくるめて愛人(おまえ)をそつと捨てんかな


B吉多紀彦(ぎんなん句会)
  産児の死ほか    荻原井泉水
 此子此世の光を見ねば叫ぶことなし
胎を離れて冷えていく子ぞ母にも抱かれず
生と共に死する子の端正あわれ
小さき仏に編笠草履小さくてあわれ
病む母に初孫の棺打つ音の秘すよしなし
思いつむれば物皆凍る夜の涙堕つ
男と女あなさむざむと抱きあうものか
汗して我影を引いて行かねばならない

  
第二部
Cそねだゆ(草原)
 また雨音の葉の音                   北田 傀子
春の海に裾を上げる                  高橋 暁子
ちらほら雪降る手をつなぐ               馬場 古戸暢
欠伸の夜景滲む                     風狂子
さびしさのヒゲの生え                春風亭 馬堤曲
打ち上げ花火の満月と並んだ               福 露 
ケータイのけぞるスカイツリー             そねだ ゆ 



D棚橋麗未(白ゆり句会)
 どこから撃たれてもよい春の岬に立つ          内田 南草(感動律)
 肩で切ってゆくおとこの芽木の風              〃  ( 〃 )
 男にない乳房が雪山をみたいという           湖  光子(感動律)
 この水に生きぬいたわたしの固いうろこ           〃  ( 〃 )
 いちばん深い湖を見ている残り時間           瀬戸青天城(感動律)
 海が匂う あなたが匂う 何もきこえない        森本 一影(白ゆり句会)
 海へのびる単線逢えるかもしれない           棚橋 麗未(白ゆり句会)
  

E白松いちろう(群妙)
  山頭火作品より
 ほうたるこいこいふるさとにきた              
雨ふるふるさとはだしであるく               
松はみな枝垂れて南無観世音                
分け入っても分け入っても青い山              
酔うてこほろぎと寝ていたよ                
うしろすがたのしぐれてゆくか               
もりもり盛り上がる雲へあゆむ               


F田中耕司(海紅)
  「黄土高原」より    中塚  檀
 わたりどり去り空のふかいまんなか              
春の昼小さい庭を横切る無頼の猫               
自祝の豆腐を買う春浅きわがてのひら             
爪切ることはひとりでいるということです           
首夏の朝机の上にある強弱二つのめがね            
素直にうれしくて山々のみどり人々のかお           
いのちの階段をのぼる薬袋こんなにも重いのか         
 伴奏曲希望なし
メンテ

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