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第9回東京自由律俳句会
日時: 2012/03/12 22:36
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

『第九回東京自由律俳句会お知らせ』
今回は句会を中心に開催します。前回同様、皆様の投句を心からお待ちしています。尚、最高得点句は「自由律句大賞」(東京自由律俳句会選)として認定し、ささやかですが賞品をお送りします。
1.会 場 : 森下文化センター
            三階・第三会議室
 住 所 〒135l0004
     東京都江東区森下3l12l17
 電 話 03l5600l8666
 ◆地下鉄
   都営新宿線・都営大江戸線 森下駅
          A6出口より徒歩8分
  東京メトロ営団半蔵門線 清澄白河駅
          A2出口より徒歩8分
※前回の芭蕉記念館ではありませんのでご注意下さい。参加者には後日地図をお送りします。
2.出句料:  一〇〇〇円 二句(未発表のもの)
             出句のみも可です。
3.当日参加料一〇〇〇円(資料代含む)
4.締切り: 平成二十四年四月十五日(日)
5.プロデュース: 「ぎんなん句会」
6.応募要領: 同封用紙にて海虹社中塚職人宛お申し込みください。
メンテ

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Re: 第9回東京自由律俳句会 ( No.1 )
日時: 2012/03/25 14:21
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

○名称は前回同様今回は「自由律大賞」とします。
○大賞は前回ともし重複した時は、今回も対象とするか、別の方法があるか、その時考えます。
ただし今回二名以上いた時は二句の合計得点でどちらかに決めます。
1位:5,000円
2位:3,000円
3位:2,000円

大賞だけは併せて記念品を贈呈します。
メンテ
第九回東京自由律俳句会詠草集 ( No.2 )
日時: 2012/05/26 23:22
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

1冷えたおでん喰いながら花海棠の色を想う
2旅立ちの軽い嘔吐
3龍 橋となって赤富士を跨ぐ
4夜半目覚めて海鳴りを聞く
5夜に追い越されて無人駅にいる
6黙って回鍋肉食べる母そっと肉を入れてあげる
7迷った花びらVネックの中
8万の客固唾(かたず)呑む行司時間なし百舌の声はしる
9歩き始めた背中に寂しさがはりつく
10網の柄が短くて春がなかなか捕まらない
11仏の提灯 灯りの裏は表
12悲しい地球で遅い桜が笑った
13薄い胸にあなたが暖かい
14早熟なコイが空を泳いでる
15猫をそっともちあげて床をふく老女(ひと)
16置いてきぼりの花森は待ちきれずに枯れてしもうた
17誕生日に買う白百合一輪なけなしのお金
18生きていればこそ飛んでくる春のつぶて
19震災後一年屋根のブルーシートに降る雨(茨城)
20商店街の灯り温もりいただきます
21女ひとりリュックで入院
22春が空へ向かって土筆
23手のひらの庭にも小鳥くる
24時代をなぞり古いネガが降らす雨
25散った桜の泥に染まる
26山はひっそり西行のさくら
27三月十一日まだまだ帰らぬ御霊(みたま)多し紙面を追って目頭潤む
28桜ことしは期待はずれの春でした
29菜の花はなびらひたすら散らす風
30見たい行きたい奈良吉野シロヤマザクラ
31月夜のよく見れば枯木の山だったよ
32記憶の迷子まだ帰れない
33春風駘蕩心のネジを落としてきたよ
34芽吹き始めの空の稜線
35荷台の牛みなコチラを見ている
36花火が消えたあと星たち現れた
37雲の上の提灯と提灯の上の蝶
38右も左も致死量を越すさくら道
39稲妻もやり場なし稲の花
40ヨレヨレ花八ツ手の葉突風ふかせまくる
41余寒知っている猫柳の孤独が芽吹いた
42弓のような国になお弓なりの春嵐
43雪どけ日ざしに円まると福寿草
44山うど歯応えシャキッと盃重ね
45メダカ水底に春が透きとおる
46胸突き八丁ここらで手拍子をください
47みんな青春をふところに一斉ほぐれる木の芽
48見通されて仏像の前では善人になれる
49見えない自分との闘いシャドーボクシングが続くよ
50まっすぐはなぜか淋しい一本松
51間近に春の水豆腐放つ気泡
52また振り出しセロリポキポキ折る
53春の駅わたしの行く先聞かないで
54ぼそぼそと話す口が老いている
55墓石が見上げる桜 いの一番に咲く
56返事のきれいな女が後輩
57碧空、あの世もこんな色ですか母さん
58不老不死ですツンツンゆれる水中花
59ずぶり突き刺す深い泥濘になる
60冬星座動く庶民の指定席
61フクシマをセールス太陽系の赤シャツ
62不安で不安で夕日の誘いに目を背け
63ヒントいただき生きる夜が短い
64膝頭ふたっつミニのお嬢さん春ですね
65春はあいまい店先の造花に黄を許した
66まだ男でいたいか看護婦の白い腕
67春の嵐からプレゼント桜の小枝
68外は雨セーターほどいている
69春一番ドンキホーテの眼の光
70花見に行こう手話の指動かす
71花日和コップ溢れる陽差しいただく
72白昼の闇の中を平泳ぎ
73廃村のさくら一樹散るわたしを知っていた
74野蒜コリリと辛く畦道の幸
75ネッカチーフ春色に替え亡父へ墓詣で
76猫じゃらしを攻めているとりわけフラミンゴ
77握り返す指頼りなくても未来形
78生身の体に湯が突き刺さる隠れ宿
79鳥が来ない赤い実びっしり残された
80止まらない会話二人の肩へ花ふぶく
81とつとつと五指踊らせ伝えたき藝術論(吉本氏)
82溶けたのか世界が雲へ消えてゆく‥‥、溶けたのか。
83天上の紺が染めたいぬふぐり
84卓袱台にリンゴ一つそんな部屋で生きてる
85大地の亀裂に立ちあがる土筆ん坊
86染めようか鏡の中の私の白髪
87雑木林うぐいすの一声
88背にガムテープの小辞書にのせたひと花
89すみれ心にも咲いて明日へ
90フランスパン抱えきれない女の挽歌
91砂にくずおれ鯨の軋める眼だ
92巣立つ孫胸のうちせめて今宵は祝膳
93じりじりと鰊(にしん)は海をしたたらせる
94シュッとひと吹き三十年分のしがらみを捨てる
95四月の自動ドア オムレツの力走
96佐竹の城下めっきり菜の花いろの暖かさ
97今夜は寒鰤の煮付けと蜆汁
98この空にだれかちぎってそっと浮かべた雲
99この愛未然形まっ赤な苺つぶしている
100流れる花びら僕は先にゆく
101雲よさくらの向うにきっと死ぬ日がある
102風だより 児捨ての母のご再縁
103かすむ目が故郷を見ている
104春日春風時知らせるサイレン
105女ふりむかず、手をふって消える
106思い切り屁をたれて個室
107おとぎ話も子犬の腹もあたたかい
108園児の好奇心五感に春兆す
109梅ヶ枝餅やく匂い参道春近し
110ウソでしょう椿の赤い饒舌も
111鶯のこわいろどことなし木瓜の芽のいろだ
112いま独り立ちしたばかりのサクラ舞う
113あれこれ傾き地球はやく廻る
114雨は霧ほどに寂しい春
115雨に歪んだ窓の景色を切る電車
116雨にぬれわが家根恋路と野良の猫
117明日咲こうなんて今日咲く蕾よ
118「バレンタインデー」忘れられない米軍のチョコ
119「三丁目の夕日」むかしの私が同化する
120指の欲望ついついクリック

◆選句締切  五月十五日(火)
メンテ
東京自由律俳句会結果報告 1 ( No.3 )
日時: 2012/11/14 18:28
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

by 佐瀬 広隆

 定例の句会は萱沼良行(ぎんなん)の司会で始まった。司会から上位四句を、出席している人の十位まで、そしてこれからの未来を担う若手作家の句を取り上げて司会進行をする旨の説明がなされた。
ここでは、特選句として選んだ人の評と、句の座談の大雑把な内容をまとめ報告とする。

1位句
 この愛未然形まっ赤な苺つぶしている 宮地 祥子

吉田(數)「色々な思いが胸をよぎる。ときとして不安なことも、幸せの満ちてくるようなことだって‥‥。
まっかないちごつぶして≠フ所作が、未然形へ繋がり過不足なし。」
堀   「若者のすがすがしいまだ完成しない恋。真っ赤な苺とよく似合います。」 
上塚  「この愛未然形とは否定的な愛でしょうか、それとも希望に満ちた愛でしょうか、未然形と言いきったところ、ちょっと気になりますが、真っ赤という色や苺をつぶすという動作が思わせぶりで、効果的かなと思います。」
座談  未然形の後にまっ赤な苺は、どうかな。いいようがないが、つぶした苺がまっ赤だという方向のほうが好いと思うが。
まっ赤は情熱的な気持ちを出したいため。未然形とまっ赤な苺つぶしている所作はかなわぬ恋、不倫の恋、思うようにならな   い成就しない恋を。
採らなかった意見から、未然形という言葉が硬くて呑込めなかった、赤でなく青くても好いかとも。未然形だから青と・・・。これは赤しかないだろうと。
皆愛という言葉に弱い。雰囲気で採ってしまったことも。

2位句
 荷台の牛みなコチラを見ている     矢野風狂子

ゆかり 「余分なことを言ってないのに、東北の災害地の残酷な風景を思い出させるような句です。沢山の悲しい目がこちらを見ている様で胸が締めつけられるようです。」
堀  「売られてゆく牛でしょうか。不安げな牛の黒い目がコチラを向いて濡れているようです。育てられた牛舎まで見えてくるようで胸を打ちました。大好きな句です。」
藤田 「作者の視点が鏡に逆反射されたようで諧謔を感じる。一つの視点と多数の視点の交錯が面白い。「コチラ」がカタカナ表現されているのは、そこで次元が断絶されているからか。」
黒瀬 「無駄な言葉や形容詞はなく、それでも牛の哀しさ、切なさを痛いほど感じられる。」
富永 「放射能を浴びた福島の牛が先ず脳裏をかすめる。牛は大抵いつも悲しい目をしている。その目と目がった。牛の置かれている状況と作者の気持ちが実感として伝わってきます。「牛の目」は作者の「心の目」かもしれない。」
座談 (牛の目の位置)意識している意識していないどちらともとれる。牛の句といったら碧梧桐のひかれる牛の句(「曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ」)。目を外した牛を描かなければ。牛がこっちをみている、こちらも牛をみている。それを書いたら説明になってしまうとも。

3位句
 メダカ水底に春が透きとおる  原 鈴子

座談  素直に好い句だとおもった。日射しがきれい。なつかしさがある。めだかはみかけないが、スカイツリーの水族館にいる。

4位句
 握り返す指頼りなくても未来形   原 さつき

宮地  「「未来形」という表現が印象的で、生まれてきた赤ちゃんに対しての深い愛情を感じさせる。「頼りなくても」がそれを一層深めている。」
吉川  「未来形と言う言葉に引かれました。同じ作者か、それとも偶然か、九十九番に「この愛未然形まっ赤な苺つぶしている」と言う句がありました。この二句を比べて見ると、九十九番の句には少し作っているなと言う感じがしてしまいます。この七十七番の句は、赤ちゃんのなせる業か、なんと自然で希望のある句だろうと思いました。」
座談  病人だと思った。赤ん坊は(弱くて)握り返すのかな。指というのは赤ちゃん、手といえば病人なのではないか。そして赤ん坊という結論になった。

 夜に追い越されて無人駅にいる    新山 賢治

白松  「夜更け、仕事か飲み会か思わず遅くなってしまった帰路、終電車も出て駅には誰もいない。時間の経過を「夜に追い越されて」と表現した所がとてもおもしろい。」
湯原  「無人駅の暗さや夜のひんやりとした空気を感じました。」
加藤  「眠ろうとしてもなかなか寝付かれない。そのうちに深夜も更けて、自分だけがただ一人、世界から取り残されたような隔絶感を覚えた。「無人駅」は絶妙な措辞だ。」

 女ひとりリュックで入院   堀  美子

中筋  「ただならぬ心細さと気負いが感ぜられ、強烈に印象に残りました。リュックが特に強烈かと。」森中「先日外来で待っていると年老いた女性が、リュックで入院の手続きをなさっていました。それを見てこれからの高齢社会にあるべき姿だと思いました。」
斎藤  「深刻な病ではなさそうだが、ひとりで入院とは寂しい。気丈な女性のさまざまを思いました。」

 フランスパン抱えきれない女の挽歌   吉田 數江

棚橋  「フランスパンと女の挽歌との取り合わせは巧みに絶妙で、「抱えきれない」に女の心情が強く表現され、内容が深く最高に心に残った句です。」
中島  「もう余り若くない女の、ふとした悲しみが「挽歌」という言葉で、明るくシックに現されていて、よい感じ好もしいです」
大西  「女の挽歌をさりげなく詠っているのが、中々なかみが深く、「抱えきれない」というところが作者は色々語りたいところでしょう。長い人生を振り返っていることでしょう。別れた一人ひとりを思い浮かべています。」

 おとぎ話も子犬の腹もあたたかい  藤田 踏青

佐瀬  「冬の夜小さな子におとぎ話を聞かせてあげている母親がいる。その足元には犬もいる。無駄なく自然体で暖炉が燃えているようなあたたかさが良く出ている。」

 流れる花びら僕は先にゆく   安井 雪枝

渋谷  「淡々としているけど、現状に対する不満もあり、それでも進まなければいけない。そんな決意が感じられる句だと思いました。」
原   「「流れる花びら」が大会(海紅)の時のホテルから見た川の花筏が浮かんだ。でも「僕は先に行く」、ゆっくりとしたいきもちと裏腹の現実を実感。」
大江  「花びらを「流れる」と表現したところに強く惹かれました。花びらが舞うさまが浮かんできます。その斜めの花びらの流れに抗して、進んでいく読み手の姿勢は、清清しいようでいて、どこか寂しげ、世の賑々しいこととは少し離れたところで人生を歩んでいるようすに読み取れ、共感できました。」

(つづく)
メンテ
東京自由律俳句会結果報告 2 ( No.4 )
日時: 2012/11/14 18:30
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

猫をそっともちあげて床をふく老女(ひと)   吉多 紀彦

森   「この情景、この所作が何ともすてがたい。願わくばこの猫雑種であれ。」
清水  「昼寝でもしているのでしょう。おとなしい猫をそっと持ち上げて‥‥優しい仕草が目に見えるようです。床を拭く老女をひとと読ませるところが良い。」
座談  猫をかっていた。猫の状態がよくわかる。多分雌の猫で、雄は固太りだが雌はふわっとしてやわらかい。そんな状態もよくわかる。飼い主の優しさもでている。隣のお婆さんの仕草を句にした。女も婆さんもおかしいので表記のようにルビをふった。

  碧空、あの世もこんな色ですか母さん    斎藤 実

堀切  「人は生まれ百%死ぬ。生母から生まれ、幻想の世界へ母の胎内に戻る。死の恐れは癒される。」
青空句会「お母さんへの沢山の想い出ももちろんで
すが、それだけじゃなく、生きてゆく中で逝ってしまった「あの人」にも思いを馳せることが懐かしく、悲しく、切なく、嬉しくいろいろの想いがつまっています。」
座談  この句は青空句会で一番の句であった。碧空の碧は青でなくて碧なのは、これは天につながっているという意味でこの碧を使った。すごく素直な句で・・・。
上句がひっかかった。点を打ってあるが、つながった方がいいとも。

 黙って回鍋肉食べる母そっと肉を入れてあげる 大江 成子

座談  書かれた通りだから説明的になる。若い人は散文化する傾向にある。若い人は互いの気持ちを推察できない時代。だから説明的になる。俳句の詩形は、わかってもらいたい時は、つめてつめて描く。言っていることはわかるし、目線もわかる。これからどんどんそういう事をすれば良くなってゆく。情愛を描きたかったが、回鍋肉(という言葉)が大事だと思ってしまった。捨てる勇気も必要、親子の情愛の方にもってゆくほうがいい。

 旅立ちの軽い嘔吐 松岡月虹舎

座談  緊張感ですね。旅に出るとき緊張感がある。嘔吐でその気持ちがよくわかる。
   嘔吐ではなく酸っぱいだ液くらいでは。嘔吐だからおもしろいと思う。旅に出るときストレスを感じて嘔吐したことがあったと。

 商店街の灯り温もりいただきます 湯原 幸三

座談  商店街の灯りで温もりがある、温もりがあったのが好いのか。最近はLEDで(温もりがないので)、温もりといれる意味がある。名前入りの商店街にしたほうがいい。具体化したほうがもっと身近になる。

 溶けたのか世界が雲へ消えてゆく‥、溶けたのか。 中筋 祖啓

矢野  「表記の仕方がいくぶん気にはなるもののあまりにも「書きモノ」としての表記であり、「うた」としてはどうなのだろうかと思うが……)、それを凌駕して余りある詩性。強靭な一行詩として高い完成度をほこっていると思う。」
座談  何故繰り返すのか、その効果が見えないので賛成しない。迷いがあるから若い人「‥」である。今は通用しないが、これをやったことはすごいこと。目の前のものが雲でかくれてしまったということ。句読点は反対だが、何かあると思うから否定したくない。好い句だと思うから、もう一度考え整理してもらいたい。

 流れる花びら僕は先にゆく    安井 雪枝

渋谷  「淡々としているけど、現状に対する不満もあり、それでも進まなければいけない。そんな決意が感じられる句だと思いました。」
原   「「流れる花びら」が大会(海紅)の時のホテルから見た川の花筏が浮かんだ。でも「僕は先に行く」、ゆっくりとしたいきもちと裏腹の現実を実感。」
大江  「花びらを「流れる」と表現したところに強く惹かれました。花びらが舞うさまが浮かんできます。その斜めの花びらの流れに抗して、進んでいく読み手の姿勢は、清清しいようでいて、どこか寂しげ、世の賑々しいこととは少し離れたところで人生を歩んでいるようすに読み取れ、共感できました。」
座談  卒業し、彼女をのこして東京へ行くというときの。先にゆくは、死にゆく人に‥‥(私も)この句をよんでいて不安になった。

 まだ男でいたいか看護婦の白い腕  都丸ゆきお

吉多  「看護婦の白い腕にかすかなときめきを覚える自分。そして「まだ男でいたいか」と自分に問いかけている。やがてそうでなくなるときが来るのか、それが携えてくるのは寂しさなのか、安らぎなのか。心をよぎる一瞬の揺らぎをうまくとらえている。」
座談  官能的、着物の裾から白い足がみえる。枯れてもいいような歳なのに。この句は男性でないととれない。

四月の自動ドア オムレツの力走 井尾 良子

夏石  「よくわからないところもあるが、イメージを唐突に突き出しているところが、他の散文的な句との大きな違い。」
平岡  「ちょっと不思議な句ですが、遅かった春の訪れでしたが四月の扉が開いたとたん、どっと黄色いオムレツが走り出したのでしょう、春の気持ちがうきうきと表わされています。」
中塚  「待ちかねていた春がどっと流れ出たような躍動感を感じる。」
座談  春だからオムレツをつくるぞという意気込みでオムレツをつくっている。オムレツの黄色のイメージと春をかけている
メンテ
【初めての席題句会】 ( No.5 )
日時: 2012/11/14 18:49
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

by 吉多紀彦(ぎんなん)

第九回東京自由律俳句会のために、プロデュース当番の「ぎんなん」のメンバーが中塚さんを中心に何回かの打ち合わせを行いました。今回は通常の句会のほかに、「席題」による句会をやろうという事になりました。この「席題句会」は定型俳句会では聞きますが、自由律俳句会ではあまり聞きません。しかしやっても面白いし勉強になるだろうと言うのが企画会議での多くの意見で、今回実現しました。
 あらかじめ出しておく「兼題」と違って当日その席で目にする「席題」ですからその題をどう決めるかが問題になりました。その席で参加者から候補を募集し、そのなかからいくつかを決めてもらうのが一番ですが、限られた時間のなかではやはり事前にこちらで用意しておいたほうがよいということになり、次の四題を用意しました。「大相撲」「スカイツリー」「衣替え」「雨」。これを句会開始の前にホワイトボードに掲示しましたが、そのとき会場から声があって「金環蝕」が追加され五題となりました。
 受付と同時に、あらかじめ小さな短冊を全員に渡しておき、「席題句会」の前の休憩時間に回収されて、十八人一人一句、十八句がコピーされた選句表が配布されました。
投句は私の予想では句題として扱いやすい「雨」と「衣替え」に集中するだろうと思っていました。ところが蓋を開けてみると、十八句のうちトップは横文字の「スカイツリー」で十一句。あと「金環蝕」が三句、「雨」と「相撲」がそれぞれ二句ずつ。「衣替え」に至ってはゼロ。さすが皆さん昨日今日自由律俳句をはじめた方とは違います。
 無記名で集められた十八句を互選三句、それぞれ自分の選んだ句を発表し集計されました。その結果にさすがの本日の名司会者萱沼氏も困惑した様子。最高点が五点、それが七句も。つまり半分弱が「最高点句」これはどうも主催者側の設定ミス。三句選としたのが少なすぎたのか、あるいは特選句は二点扱いという通常句会のやり方を適用しなかったのも原因か。次回への反省です。でも、句会はそれぞれに言いたい放題。楽しい句会となりました。
 折角ですからその「最高点」七句を左記に記します。
 
雨だから布団はたたまずにおこう     大江 成子
 レインブルー紫陽花ぬれている      斎藤  実
 四方八方一方向の金環蝕         そねだ ゆ
 天空の塔白い時が滲み出す        黒瀬 文子
 両手いっぱい星をつかみたいスカイツリー 棚橋 麗未
 打ち出しの音消えて今日のニュース    吉多 紀彦
 光も人も流れを変えるスカイツリー    白松いちろう
メンテ
【懇親会における朗読会報告】 上 ( No.6 )
日時: 2012/11/14 18:56
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

               by 萱沼 良行

【初めての席題句会】吉多紀彦(ぎんなん)

第九回東京自由律俳句会のために、プロデュース当番の「ぎんなん」のメンバーが中塚さんを中心に何回かの打ち合わせを行いました。今回は通常の句会のほかに、「席題」による句会をやろうという事になりました。この「席題句会」は定型俳句会では聞きますが、自由律俳句会ではあまり聞きません。しかしやっても面白いし勉強になるだろうと言うのが企画会議での多くの意見で、今回実現しました。
 あらかじめ出しておく「兼題」と違って当日その席で目にする「席題」ですからその題をどう決めるかが問題になりました。その席で参加者から候補を募集し、そのなかからいくつかを決めてもらうのが一番ですが、限られた時間のなかではやはり事前にこちらで用意しておいたほうがよいということになり、次の四題を用意しました。「大相撲」「スカイツリー」「衣替え」「雨」。これを句会開始の前にホワイトボードに掲示しましたが、そのとき会場から声があって「金環蝕」が追加され五題となりました。
 受付と同時に、あらかじめ小さな短冊を全員に渡しておき、「席題句会」の前の休憩時間に回収されて、十八人一人一句、十八句がコピーされた選句表が配布されました。
投句は私の予想では句題として扱いやすい「雨」と「衣替え」に集中するだろうと思っていました。ところが蓋を開けてみると、十八句のうちトップは横文字の「スカイツリー」で十一句。あと「金環蝕」が三句、「雨」と「相撲」がそれぞれ二句ずつ。「衣替え」に至ってはゼロ。さすが皆さん昨日今日自由律俳句をはじめた方とは違います。
 無記名で集められた十八句を互選三句、それぞれ自分の選んだ句を発表し集計されました。その結果にさすがの本日の名司会者萱沼氏も困惑した様子。最高点が五点、それが七句も。つまり半分弱が「最高点句」これはどうも主催者側の設定ミス。三句選としたのが少なすぎたのか、あるいは特選句は二点扱いという通常句会のやり方を適用しなかったのも原因か。次回への反省です。でも、句会はそれぞれに言いたい放題。楽しい句会となりました。
 折角ですからその「最高点」七句を左記に記します。
 
雨だから布団はたたまずにおこう     大江 成子
 レインブルー紫陽花ぬれている      斎藤  実
 四方八方一方向の金環蝕         そねだ ゆ
 天空の塔白い時が滲み出す        黒瀬 文子
 両手いっぱい星をつかみたいスカイツリー 棚橋 麗未
 打ち出しの音消えて今日のニュース    吉多 紀彦
 光も人も流れを変えるスカイツリー    白松いちろう


【懇親会における朗読会報告】萱沼 良行

今回初めて行われた試みは、席題俳句会と懇親会における朗読会です。その朗読会は当初ギターの伴奏付きの朗読でしたが、ギタリスト奏者の都合による欠席で、文字どおりの朗読となりました。
定例句会等の余韻が残る中での懇親会。出席者それぞれが、美味しいお弁当とこれまた美味しいお酒とで懇親を図り、充分に身体はもとよりこころまでリラックスしてきたところで、いよいよ朗読会が開始という次第です。

まず、中塚唯人氏より行われ、朗読は中塚一碧楼の「第一作」よりの作品です。一碧楼は「第一作」で自由律宣言を行い、今までいう俳句とは立脚点が異なり、全然季題や形式に囚われず、私が書きたいように書く等…と、一碧楼の見解を述べ、作品の朗読の始まりです。朗読後、作品の中に句読点の入った句があり、定例句会でもいろいろと議論された句読点の問題が、ひとしきり話し合われました。
  朗読句 「第一作」より  中塚一碧楼
 菜切庖丁では死ねない、冬日屋根に落つる
 霙る。その頸筋へメスを刺させい
 大事な抽斗しにろうそくも這入つて居て冬
 乳母は桶の海鼠を見てまた歩いた
 賭博でもよい、滅法勝って女をアツと云わせたき夜かな
 土を掘るか、我を埋めんとて、土を掘るか
 絽蚊帳にくるめて愛人をそつと捨てんかな

 次に、吉多紀彦氏より、荻原井泉水の産児の死ほかの作品の朗読です。「ぎんなん井泉水研究会」として井泉水の句集を読み込み、俳句鑑賞を行っており、その中で非常にこころ打たれた井泉水の亡き児を詠んだ作品を中心とした話があり、作品の朗読の始まりです。吉多紀彦氏が本当に切切と、亡き児に対する哀感のこもった静謐な朗読は、文語のリズムも効果をあげ、肉声の魅力を充分に感じました。

  朗読句 産児の死ほか  荻原井泉水
此子此世の光を見ねば叫ぶことなし
胎を離れて冷えていく子ぞ母にも抱かれず
生と共に死する子の端正あわれ
小さき仏に編笠草履小さくてあわれ
病む母に初孫の棺打つ音の秘すよしなし
思いつむれば物皆凍る夜の涙堕つ
男と女あなさむざむと抱きあうものか
汗して我影を引いて行かねばならない

三番目は、そねだゆ氏より、「草原」の方たちの作品の朗読です。そねだゆ氏から、作者の眼差しは、その世界観を反映しかつその人生観をも表しており、素直に感じた感動を素直に表現することで、詩や随句は成り立つ筈です。読み手に受けようとか格好を付けるために作った作品は、決して読み手の心に共感を与えず、それが「草原」と私の詩観や随句観となっています。との発言の後、作品の朗読が始まりました。

  朗読句
また雨音の葉の音        北田傀子
春の海に裾を上げる       高橋 暁子
ちらほら雪降る手をつなぐ    馬場古戸暢
欠伸の夜景滲む         矢野錆助(風狂子)
さびしさのヒゲの生え      粟野 賢太郎(春風亭馬堤曲)
打ち上げ花火の満月と並んだ   福露
ケータイのけぞるスカイツリー  そねだ ゆ

(つづく)
メンテ
【懇親会における朗読会報告】 下 ( No.7 )
日時: 2012/11/14 18:57
名前:   <yusoneda@yahoo.co.jp>
参照: http://soneda.or.tv

四番目は、棚橋麗未氏より、「感動律・白ゆり句会」の作品の朗読です。棚橋麗未氏から、感動律主義の生い立ちの丁寧な説明があり、そのもとで、ものに感じて深く自分の情を表す感動主義こそ、俳句の生命と、私たちは勉強を続けてきました。これからも感動律のいのちを引き継ぎ、こころのまん中から詠い続けていきたい。と、熱情あふれるお話の後、作品の朗読が始まりました。
  朗読句
どこから撃たれてもよい春の岬に立つ     内田南草(感動律)
肩で切ってゆくおとこの芽木の風        〃  ( 〃 )
 男にない乳房が雪山をみたいという     湖 光子(感動律)
この水に生きぬいたわたしの固いうろこ    〃  ( 〃 )
 いちばん深い湖を見ている残り時間     瀬戸青天城(感動律)
 海が匂う あなたが匂う 何もきこえない  森本一影(白ゆり句会)
 海へのびる単線逢えるかもしれない 棚橋麗未(白ゆり句会)

 五番目は、白松いちろう氏より、種田山頭火の作品の朗読です。白松いちろう氏は山頭火と同じ防府の生まれであり、自分の父親はその時代として、ふるさとの俳人山頭火をある意味、忌み嫌っていたそうです。しかし、自分の山頭火に対する思いは非常に強く、生家の没落と共に持ち続けたふるさとへの複雑な思いに共感した話の後、ふるさとの作品を筆頭として行乞流転、そして、コロリ往生までの作品の朗読が始まりました。
  朗読句 山頭火作品より
 ほうたるこいこいふるさとにきた
雨ふるふるさとははだしであるく
松はみな枝垂れて南無観世音
分け入っても分け入っても青い山
酔うてこほろぎと寝ていたよ
うしろすがたのしぐれてゆくか
もりもり盛り上がる雲へあゆむ

 最後は、田中耕司氏より、中塚檀の「黄土高原」よりの作品です。中塚檀とは、その家族を除けば、誰よりも誰よりも一番多く言葉を交わしたのは、私自身であると、とても熱く語られ、田中耕司氏から見た中塚檀独特の世界の披瀝後、作品の朗読の始まりです。田中耕司氏の語り口より、中塚檀から受けた影響そして学んだ大きさがうかがい知れ、また、中塚檀の絶句の背景などの話も、とても興味を覚えました。
  朗読句 「黄土高原」より  中塚 檀
 わたりどり去り空のふかいまんなか
春の昼小さい庭を横切る無頼の猫
自祝の豆腐を買う春浅きわがてのひら
爪切ることはひとりでいるということです
首夏の朝机の上にある強弱二つのめがね
素直にうれしくて山々のみどり人々のかお
いのちの階段をのぼる薬袋こんなにも重いのか

 以上で予定していた朗読会は終わりましたが、飛び入り参加で、松岡月虹舎氏が当日の定例俳句会の作品を、加藤邪呑氏が「層雲」に投稿予定の作品をそれぞれ朗読し、これまた大いに盛りあがりました。
初めての朗読会はどうなることかと危惧していましたが、これはこれで立派な催しです。視覚から味わう作品と違い、肉声による朗読作品は本当に趣がガラリと変わり、朗読者から発せられる気持、そして、精神状態がストーレートに出るものと、感じ入りました。懇親会参加者から、また行いたいとの発言もうなずけるものです。

 【初めて参加して】
大江 成子
 初めての参加でしたが、とても和やかな雰囲気で新参者も発言しやすかったのがありがたかったです。俳句についても、いろいろな考え方があってよいという流れでしたので、新しい人間にも馴染みやすいものだったと思います。

松岡月虹舎
夏めく江東区森下文化センターの昼下がり、自由律のひろば参加を切っ掛けに、第九回自由律句会に投句句会参加させてもらいました。ぎんなんの萱沼さんの気配りのある進行で、あらかじめ募集した句評、テーマを決めた即興の句会、句の朗読を主にした懇親会へとスムーズに進行、会も終わり文化センターを出るころにはほんのり赤ら顔での帰宅となっていました。
 若者の「句の心」と「文字による表現」と「朗読句」等、新顔にも発言できるご配慮に感謝いたします。
メンテ

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