第11回東京自由律俳句会 詠草集 ( No.1 ) |
- 日時: 2013/05/31 14:54
- 名前: ゆ <yusoneda@yahoo.co.jp>
- 参照: http://soneda.or.tv
- 第十1回東京自由律俳句会詠草集
@ 雑 詠 句 1これからのことは皆で相談新芽吹く 2袋とばされて行く先は誰も見ない路地 3青いところまでが空だと思ってた 4昨日から螺旋階段蟻の隊列雨の予感 5早春マネキン人形の軽量と思い 6欠落するモラル集めて千羽鶴 7みんな眠ってしまったらしい春猫がなく 8日本が一つになって花見酒 9犬の粗相拭き取る花冷えの朝 10少女朝日に包まれ爪先までミルフィーユ 11さくらの精の落し文いくつ 12海溝からこだまする水琴窟でこころ洗う 13七彩に死をかがやかせ虫である 14肺腑焼印し滾りたつ葦原 15抱き合うこともなく五十代終る 16ポンコツの洗濯機がんばれの一言で回る 17一枚の空汚れおとなしい菜の花怒る 18胸のふくらみに沿う心という古代文字 19涙の跡のある不思議な夢でした 20青いそらなお青く啼鳥につられ白い雲 21花びら拾ってお母さんのとこ 22踊り終えて幕とする生きた証 23何と寂しい宵の如月息子転勤と聞く 24変われない私でごめん花冷えの交差点 25春の玄関あけたときからおともだち 26チューリップも手配写真だ港の警察署前 27鼻歌は花は花は花は咲く 28草餅がぶりとくらう春の日 29喧嘩やめない豆腐屋を過ぎればおっちゃんひとりで ラジオ体操してる朝だった 30貨車いっぱいの理屈がきょうもやってくる 31なんどでも生まれ変われる魔法の種を蒔く 32桂馬飛びのランドセル雨は上がった 33行先を教えてください花筏 34花水木大きく開いて出番よ 35離陸する学校 むくどり百羽と 36憶えてますかあの約束を菜の花明かり 37記憶の空白持ち歩く 38ぽっとここに火をともした赤ん坊 39咲く頃を教えあってまだ寒い 40四月あらあら僕オッサンだ 41ヴェールとれて聞えてた山の息づかい 42街灯ふんわり夜梅を浮遊させる 43活断層の島に群れ咲くシャガの静けさ 44徳利ふってひとしずく春惜しむ 45人知れずちる山のさくらか 46見ず知らずの一人に手を合わせている 47ゆっくり話すやがて歌になる 48里山と老いて山桜こんもり丸くなり 49さくらさくらCTにも映らぬ腹の底 50宙ぶらりんのやさしさ象の鼻 51花は花として生まれることが歓びでした 52短い夢に一日傷ついている 53今が春黄色い絨毯開いて舞う 54葉桜ばかりだ犬の眉を探す 55流れ星と一緒にあなたがあいにくる 56クレーンに釣り上げた春窓にかかる雨 57さえずりは一番高く強く鳴く Aテーマ句「青春」 1頭つき合わせて居眠り春うらら 2わかい熱がこわした恋がある夜 3飛行機雲まっすぐ消えていく 4春の陽にもっともっとと命ふき込む紙風船 5僕にもあった青春の歩幅草萌える 6まだくすぶっている5%の純情 7若き日の別れの予感持ち続け生き 8夢見る顔が向かいの席に居る 9帰りたくなく遠くへも行けず夕焼けが赤い 10帰り道のコロッケは古里の停車場 11ひたすらな愛 ひたすらに悲歌 12触覚を研ぎ澄し南十字星を探す旅人 13花屑にもぐりこんで青春供養 14こころ串刺し春の血は両手に 15青春時代も今も純粋に生きている 16何があっても大丈夫初めから信じてはいない 17汚れなさい在校生のユニホーム 18ふと小指の約束氷片カチッと鳴る 19失恋した部屋友の来る一人また一人 20春が香る手を握る 21潮満ちて足首ぬらす砂浜の青春 22焼野原肩を並べて夕日を見送ったあの日 23「好き」と言われ指文字で恥じらった砂丘 24春の夕暮れ欲しいのは豆腐屋のラッパの音 25ベニバナアメリカハナミズキそれでいいのだ 26津波も奪えない青春遺児の卒業式 27古びたアルバムに妻との青春が 28咲いては散って咲いては散って風が吹いて忘れてしまう 29机にしがみつき「永遠の未完成」と書いている 30あの日のバラの花言葉を胸に今を生きてる 31近頃は青春を昭和と呼ぶらしい 32戦争に剥ぎとられた青春のベール 33映画、音楽、歌舞伎一人の時を埋めてたあの頃 34青春のあったこの道ソプラノの反戦歌 35理科室の君の残り火フラスコ烟る 36青春捨てた残る紙魚 37下り坂をなおこぐ自転車の少年が飛翔 38故郷の山だおっぱいもあんなふうかな 39あのころの歌くちずさむ足取り軽く 40しあわせって碧い空に桜あふれるほど 41この笑顔夢まだあきらめてない 42桜見上げ踊子草も花ざかり 43青春は笑う山の彼方に飛んだ 44陽にサルビア炎える芝生のふたり 45流星群をつかまえる前の夏空 46断頭台落ちる日までの居眠り 47好きな子の前で鉛筆ぽきり 48朝もやを追いかけていた鶯の笹鳴き 49青春 二十歳の頃の句に出あう 50青い痣化石になって 残る青春 51輝いてたいつまでも続くと思った遠い日々 52傾きを求めてしまう公式を知る 53色いろいろ人も花も私だって 54スケッチの下手な級友が弁当を捨てている 55あなたのまなざしが花影に揺れる 56朝露にぬらす足もと麦の丈 57間違いを勘違いで乗り越えろ
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第11回東京自由律俳句会 ( No.2 ) |
- 日時: 2013/09/21 21:28
- 名前: ゆ <y_soneda@yahoo.co.jp>
- 参照: http://soneda.or.tv
- ◆はじめに◆ 中塚 唯人
今回は若い方、一八名の投句を得、自由律俳句の新し い夜明けを迎えました。今後はこの火をさらに大きく燃やしたいと思います。 会は白松いちろう氏と松岡月紅舎氏のダブルプロデュースで進行されました。今回は「雑詠部門」とテーマ句の二部門で投句を募集しましたが、レベルの高い作品の中で「雑詠句」では原さつきさん、「青春句」では馬場古戸暢氏がそれぞれ大賞を受賞されました。ささやかですが大賞には賞金と記念品、二位と三位の方には賞品を送らせて頂きました。 この会は作品を自由に創作すると同じように、年代も句歴も関係なく、参加者全員が自由に好きな作品を作り、そして選ぶことが出来る会です。また結社ではありませんので、年会費も徴求しませんし出入り自由の本当に自由律俳句を楽しむ会です。 今後とも自由律俳句界の発展、さらに自由律俳句の向上には結社を超えた数多くの作品の提示が必要です。その中から自らの信ずる句を選び、そこで学んだことから、お互いに研鑽、切磋琢磨することに意義があります。 今後とも皆様のお力添えを宜しくお願い致します。
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第11回東京自由律俳句会 ( No.3 ) |
- 日時: 2013/09/21 21:59
- 名前: ゆ <y_soneda@yahoo.co.jp>
- 参照: http://soneda.or.tv
- 【第十一回東京自由律俳句会】 白松いちろう
句会に入る前に本日初参加のフレッシュ句友―天坂寝覚、梶原由紀、小笠原陽子、独楽猫の四方から自己紹介。 続いて、前回プロデュースのそねだゆさんの開会の挨拶。 続いて、句会の進め方について、松岡月虹舎さんから、特に今回初めて取り上げた「テーマ句」の考え方について説明がありました。
一、雑詠句の部 司会 白松いちろう ○大賞 花びら拾ってお母さんのとこ 馬場古戸暢 花びらを手のひらいっぱいに拾って、母のとこに届ける少女の可愛いらしさが素直に評価された。リズム感のある現代的表現が良い。特選五人を含め二十一点。
○二位 変われない私でごめん花冷えの交差点 吉田 數江 ごめんと思いながら面と向かって謝れない女心を見事に詠んでいる。特選四人を含め十九点。
○三位 徳利ふってひとしずく春惜しむ 折原 義司 ひとしずくの洒落た表現に感動。人生の春を惜しむかのような味わい深い句です。特選五人を含め十八点。
○四位 宙ぶらりんのやさしさ象の鼻 黒瀬 文子 象のやさしさをちゅうぶらりんの鼻で感じて十四人で 十四点。
○五位 涙の跡のある不思議な夢でした 風呂山洋三 どんな夢を見ながら泣いたのか、「でした」に詩情を感じる。十二人で十三点。
○五位 桂馬飛びのランドセル雨は上がった 本間 鴨芹 雨上がりに嬉しくって堪らない小学生の姿が生き生きして甦る。特選五人を含め十三点。 この後、出席者の作品を中心に句評や自解を発表し合い白熱した句会となりました。若き句友の感想を聞きながら、参加者全員からの積極的な句評は作者にとって大切なヒントになりました。
二、テーマ句「青春」の部 司会 松岡月虹舎 句会の進行は、雑詠句と同様に高得点から順に、その句を採っているいないに関わらず句会参加から評を戴きました。本来は連作で力を発揮するのが表題句ですが、今回は一句で敢えてチャレンジしてみました。青春のとらえ方は作者によって千差万別で不安もありましたが、「青春」の現役組と卒業組がほぼ同数で、句評では活発な本音の発言が交わされ、会の進行と共に理解が深まっていきました。このような句会は、結社句会では絶対にあり得ない「ひろば」的雰囲気の成立でした。(松岡氏原稿参照)
○大賞 まだくすぶっている5%の純情 原 さつき 五%に共感し、特選五名で二一点
○二位 春が香る手を握る 馬場古戸暢 心ウキウキ、特選四名で一五点)
○三位 理科室の君の残り火フラスコ烟る 宮地 祥子 淡い恋心を感じて、特選二名で一五点
○四位 傾きを求めてしまう公式を知る 畠 働猫 青春期に知った公式、特選三名で一三点
○五位 スケッチの下手な級友が弁当を捨てている 梶原 由紀 苦しみをさらっと、特選二名で一一点
懇親会 本会終了後、同会場にて懇親会。平成生まれの若者を含めて十一名出席。会場でお弁当を食べ、ビールを飲みながら早速、自作の気に入った一句を各自短冊に書いて朗読しました。 若き句友の参加によって、彼らの詠みかたや独特の感覚に新鮮さを覚えました。自由律俳句の持っている「包容力」が若者の心を動かしていると思うと、今後の底辺の広がりを予感します。
【当日の句会から】 中塚唯人
〇雑詠部門 花びら拾ってお母さんのとこ 馬場古戸暢 「花びら」と「お母さん」の組み合わせが優しさをよく表しています。そして「花」でなく「花びら」であることが小さな手を連想させ、「とこ」という言葉が幼い子である事を感じさせます。誰にでもすっと入るいい句でした。 それにしてもお母さんの句はいつでも人気があるようです。若手からベテランまで幅広い票が集まりました。
(作者自解) 横断歩道を渡ろうと、信号待ちをしていた時のことです。付近の小さな公園にいる親子が目に入りました。二、三歳くらいの女の子と若いお母さんが、桜の木の下で遊んでいるようです。お母さんはベンチに座り、女の子は地面に落ちているたくさんの花びらをみつめています。 女の子は桜の花びらを拾うと、とことことお母さんのとこへ駆けて行きました。信号が青に変わるまでの、よく晴れた日のひとこまでした。
変われない私でごめん花冷えの交差点 吉田 數江 「変われない」か「変わらない」かの議論は「変われない」が圧倒的な支持のようでした。やはり前者の方が後悔の念が良く出ているようです。自分は変われなくても、時間が来ると信号はやがて変わります。そして私は現実に戻り一歩を踏みだすのです。
(作者自解) 今、人生七十路を歩いている私の生き方です。他者に応えられないときは、正直に素の心を申告ごめんなさい≠ニ伝えて自分を解放します。少し寂しいときもありますが‥‥。 上句@〈変われない〉A〈変らない〉(動・ラ・四)。 そのラ行に拘った。@何かが介在、己の意志を柔軟に表白。A己の意志を断定。今も迷う。
徳利ふってひとしずく春惜しむ 折原 義司 「ひとしずく」に春を惜しむ気持ちと同時に人生の春を惜しんでいる作者を感じます。作者の寂しさが感じられます。 そしてここもやっぱり酒の句は強いと言う事です。
(作者自解) 大好きな酒の数本目、最後のひとしずくまで味わって飲む、いつもそんな飲み方です。大好きな春が去って行くのも最後まで見送りたい。そんな気持をひとしずくの中に入れたつもりです。人生の春を惜しむとか老年期の孤独とかまで詠んで頂ければ出来すぎです。
宙ぶらりんのやさしさ象の鼻 黒瀬 文子 「象の鼻」を先頭に持ってきたらどう違うかという意見がありました。そうなるとまず「象の鼻」がぱっと眼に入って、すべての視点が象の鼻に行ってしまうのでやはりこの方が良いと言うことになりました。 作者自身も出席されているのでお聞きしたところ、やはりこの句は「宙ぶらりんのやさしさ」が先に出来たとの事でした。
涙の跡のある不思議な夢でした 風呂山洋三 夢の中身は憶えていない、そういうことってよくあります。みんなそれってなぜだろうと不思議に思った句です。 若手の女性から自由律らしい句だという声がありました。
(作者自解) この句は、夢から目覚めた時に泣いており、だけど夢の内容はあまり覚えていないという体験から詠んだ句です。多くの方から選をいただき感激しております。ありがとうございました。
桂馬飛びのランドセル雨は上がった 本間 鴨芹 嬉しそうな子どもの生き生きとした姿がよく見えます。 この子はスキップしているのでしょうか。「桂馬飛び」がいかにも楽しげです。この言葉を見つけただけでもう作者のお手柄です。読む者もほのぼのとして思わず微笑みます。
(作者自解) 四月、新しいランドセルを背負って登下校している新一年生、そのランドセルが水たまりを避けるように跳ねている様子を句にしてみました。雨上がりの午後、学校帰りの水色のランドセルでした。
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第11回東京自由律俳句会 ( No.4 ) |
- 日時: 2013/09/21 22:00
- 名前: ゆ <y_soneda@yahoo.co.jp>
- 参照: http://soneda.or.tv
- 【その他気になった句から。】
少女朝日に包まれ爪先までミルフィーユ 松岡月紅舎 この句も人気のあった句です。 「朝日に包まれた少女の白い肌、爪の先まで透き通って美しい。薄く何層にも焼き上げたミルフィーユ。フォークで切るとすぐ壊れてしまう。短い少女期をうまく表現しています。」と言う評がよくこの句を言い当てていると思いました。作者は少女の着ている衣裳から柔らかさを表現したかったようです。「はかなさ」と「柔らかさ」、作者と読者のちょっとした行き違いがあったようです。 喧嘩やめない豆腐屋を過ぎればおっちゃんひとりでラジオ体操してる朝だった 渋谷 知宏この句の長さは俳句として許容されるかどうかとの問題提起がありました。そしてただ情景を並べているだけで、何も言い果せてないという意見が圧倒的でした。 私はこの句は四コマ漫画を言葉で表現したのだと思いました。それがいいかどうかとか、巧くはまっているかの問題でなく、この句会ではこういう試みがもっとなされるべきで、その結果は作者が考えるべきと思うのです。
〇青春部門 まだくすぶっている5%の純情 原 さつき まだと言ってるからには作者は失礼ながらそんなにはお若くないようです。そして残っている純情が5%なのがちょうどほどよいところで、1%でも10%でもこれほどの支持は得られなかったと思います。 そして若者からベテランまで幅広い共感を得ることが出来たのが素晴らしいことだと思います。
(作者自解) 大人になるとついいい人ぶってしまいます。良い妻だったり、すてきなお母さんだったり、立派な社会人だったり‥‥。そうやって、頑張ることはとても大切なことで幸せなことですが、時々、肩の力を抜きたくなる。そんな時、ふと思い出す苦い一コマ。今ならもっと素直になれるのに≠ルろっと出来た句です。
春が香る手を握る 馬場古戸暢 この句は「春が香る手を」で切ると幼い子の手を連想するという意見がありました。「春が香る」で切ると素直に若者の愛のかたちが見えてきます。また「春が」で切るとまた違ってきます。作者の意図は別として思ったよりも読み手によって解釈が色々できる句でもありました。
(作者自解) この句について多くを語ることは、かえって無粋な気もします。春とは得てしてこういう季節なのでした。いただいた評にあったどこで切るのかという点については、読み手にお任せします。個人的には、読み方としては、春が香る/手を/握るとなるかと考えています。
理科室の君の残り火フラスコ烟る 宮地 祥子 理科室とフラスコ、青春の一場面を振り返るには誠に見事な設定です。そして「残り火」と「烟る」で淡く過ぎ去ったはかない恋が偲ばれます。青春にはぴったりの道具立てに感服です。
(作者自解) テーマ・青春=ほのかな思いが私の中で表現したかった事。あまり得意でない実験、その理科室でやさしく親切にしてくれた友(男子)への淡い思いをフラスコの白い烟りに表現してみました。理科室でしたので「あなた」でなくあえて「君」としました。
好きな子の前で鉛筆ぽきり 藤井 雪兎 青春と言うよりももっと幼い時代を連想した人も出てきました。 そして誰にでもある思い出が心をくすぐったようです。 しかし「青春」というテーマが前になければ、この句はどう取られたかとも思うのです。その意味でも上手にテーマを生かした句であると思いました。
(作者自解) 気持ちを悟られまいと心では平静を装うのですが、身体が言う事をきかず、鉛筆を握る手に余計な力が入ってしまい、その結果「ぽきり」というわけです。心と身体のズレを表現してみました。
傾きを求めてしまう公式を知る 畠 働猫 この句はもう一つよく解らないのが皆さんの本音でした。その中で思い浮かべるのは、公式のような決まった謎解きの方法を知ってしまったら、青春にしても人生にしても無味乾燥になるといった、社会や人間関係へのアンチテーゼを秘めているのではないかとの予測です。実際のところは時間の関係上、自解を得ていませんので想像の域です。
スケッチの下手な級友が弁当を捨てている 梶原 由紀 これは実際に見たものかという疑問が出ました。悪く言えば作りすぎの感ありと言ったところです。その原因は前半と後半の繋ぎに少々飛躍があり過ぎと言うことです。 ただし昔の連中は弁当を捨てるなんて考えられない。 弁当は蓋に付いた飯粒から食べたもんだという発言には笑ってしまいました。そのせいかどうかは解りませんが賛成者九人中六人は若い人でした。
(作者自解) 器用に立ち回れないフラストレーションを、弁当を捨てるようなどうしようもない方法で解決しようとする、それが思春期特有の至らなさであると考えました。 この句は、自身の青春時代の呪い(ひたすらに冴えなかった)を、架空の「友人」に託したものです。 余談ですが、ベランダで笑いながら水筒の水を撒いている友人の姿を見たことがあります。友人の清清しい表情と、翌日の朝礼で「二階から水が降ってきたらしいけど何か知らないか」と担任の怪訝そうな発言は、今でも記憶に残っています。
【その他、話題になった句。】 ベニバナアメリカハナミズキそれでいいのだ 田中 耕司 最近の街路樹は昔からの定番のいちょうやさくらはアメリカから来たハナミズキに押されてすっかり影が薄くなりました。それはそれなりに理由がある事で作者は納得しています。が、それはそうでも腹の中では嘆いているのです、怒っているのです。そんな気持が「それでいいのだ」に含まれていると思います。 会場に来られた皆さんの評と、投句時の感想を纏めてみました。今回は特に初参加の若い女性三人が、それなりの経験の中でしっかりとした考えを持ち、句会できちっと述べられていたことが印象に残りました。それが誰でも自由に話が出来る自由律の良さだと確信しました。
◆感想◆ 梶原 由紀 これまで有季定型の俳句を作っていたのですが、自由律俳句についてはほとんど知識がありませんでした。 正直なところ、どのように作ったらよいかも見当がつきませんでした。しかし、句会に足を運んでお話を聞いていると、自由律の韻律と有季定型の違いはもちろん、散文との違いなど、感覚的に作り方の違いをつかむ事が出来た気がします。まだまだ勉強量が足りないため、句会の意見をもっとお聞きしたいです。 句会で印象的だったことは、 四月あらあら僕オッサンだ という句が「四月」によって俳句となったという指摘、喧嘩やめない豆腐屋を過ぎればおっちゃんが一人ラジオ体操をしてる朝だったを自由律として成立するかの議論でした。 句会に足を運ぶ機会がなかなか得られなかった分、今回は非常に貴重な機会でした。交わされる発言も、初心者でも分かりやすい明快なものが多く、また、厳しい意見も背景にきちんとした俳句観があったため、とても勉強になりました。今後、自由律も練習していきたいと考えているので、次回も参加したいと思います。
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