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慰安婦プロパガンダには国際法で反撃できる
2017/07/09
Japan On the Globe(1014)■国際派日本人養成講座■H29.07.09より転載

Common Sense: 慰安婦プロパガンダには国際法で反撃できる

「平和の回復後も、『歴史認識』問題を振りかざす中国と韓国の行為は、国際社会のルール違反である

■1.「前政権での日本との慰安婦合意は受け入れられていない」

 ドイツ・ハンブルグでの20カ国・地域(G20)首脳会議に出席している安倍首相は、7日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談したが、あらためて慰安婦問題に関する日韓合意がくすぶり続けている様が見てとれた。[1]

 文氏は大統領選前は、日韓合意の無効や再協議を主張してきたが、就任後は「再協議」は公言せず、「前政権での日本との慰安婦合意は韓国人、特に被害者(元慰安婦の女性)に受け入れられていない。彼女たちは合意に反対している」などと語ったと報じられている。

 今回は「慰安婦問題が関係発展の障害となってはいけない」とだけ語ったようで、日本政府が一貫して政府合意を守れ、と主張しているのに対し、じりじりと後退を続けている。支持者の手前、強い態度を見せたい一方で、経済・防衛問題でこれ以上、日本政府との関係をこじらせたくない、というジレンマに陥っているようだ。

 日韓合意の問題は、国家間の約束とはどのようなものか、国際法の諸原則を理解する上での良い演習テーマである。これを次のような企業間の契約になぞらえて、考えて見よう。

 A社の製品をB社が販売する、という契約が成立し、A社はB社に10億円分の商品を渡した。しかし、B社の社長が替わり、「前社長が結んだ契約に、社員は反対している」から、再交渉が必要だ、などと言い出したとしたらどうだろう。

 A社は再び、B社と交渉し直す必要があるのだろうか? あるいは「B社が契約を守らないなら、ご破算にして損害賠償請求する」と言うべきだろうか?


■2.政権が替わったら、国家間の合意もご破算にできるのか?

 まず文氏の発言で引っかかるのは「前政権での日本との慰安婦合意」という言い方だ。会社間の契約とは、会社と会社の契約であって、A社社長とB社社長との個人的契約ではない。会社間の契約だからこそ、社長が代替わりしても、その契約は引き継がれる。

 企業は「法人」であって、社長という「個人」とは別個の存在である、というのは、近代的な法律原則であって、近代以前の人々にはなじみのない考え方だ。

 たとえば、B社が前近代的な個人商店だったら、内部の勢力争いに勝った新社長が「前社長は追放した。前社長のなした約束には縛られない。文句を言うなら、前社長に言ってくれ」と言う事もできよう。文在寅大統領の「前政権での日本との慰安婦合意は」という言い方は、そんな前近代的意識が感じられる。

 しかし、契約が社長個人の間のものだけだと、社長が代替わりするたびにすべての契約を結び直さなければならない。逆に気に入らない契約を、社長の代替わりを装ってご破算にしようとする悪巧みの余地も出来てしまう。

 だから近代的な契約社会では、会社を仮想的な「法人」と捉え、会社間の契約は「法人」間の契約であって、社長が替わっても、すべての権利や義務は引き継がれる、という事になっている。

 国家も同様であって、政権が替わっても、国家間の条約は変更できない、というのが、国際社会の原則である。文在寅大統領が「前政権での合意は受け入れられない」などと言うなら、日本も戦前の大日本帝国の行為に現在の日本国の責任はない、と言えることになる。


■3.一部の国民が反対していたら、国家間合意も反故にできるのか?

 もう一つ、「韓国人に受け入れられていない」という言い分も面白い。B社がA社との契約締結後、「実はB社の中には、A社との契約に反対のものがいるので、再交渉したい」などと言い出したら、どうだろう。

 一つの会社の中で、いろいろな考え方の社員がいるのは当然である。だから、B社の社員全員が賛成しなければ、A社との契約は成立しない、などと言い出したら、会社間の契約は不可能である。

 また、B社が気に入らない契約をご破算にするために、「一部の社員には受け入れられていない」などと強弁する余地も出来てしまう。だから近代法では、会社を代表して契約することのできる「代表取締役」を設けて、その人がサインすれば、会社として合意した事とする。

 A社としては、B社の代表取締役と署名を交わせばいいだけで、B社内でどんな反対勢力がいようと、それはB社内の問題で関係ない、ということになる。

 国家間の条約も同じ事で、たとえば、60年の日米安保条約改訂の際には、どんなに過激派が大暴れしようと、日本国の首相がサインをしたら、それは日米間の正式な条約として成立する。

 そのために、日本国の中では、条約は国会が承認し、天皇が公布する、というプロセスがある。韓国内にもそれに相当するプロセスがあるはずだが、それは韓国政府内の事だ。日韓慰安婦合意は当時の岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が共同記者発表で述べたもので、国際的には正式な国家間合意である。

 文在寅大統領は弁護士出身ということで、当然、こんな事は百も承知だろう。それでも、こんな事を言い出すのは、こういう近代的な国際法に疎い日本国民と、日本政府の間にくさびを打ち込もうという政治的魂胆からだろう。


■4.「信頼関係で成り立ってますので」

 安倍政権は国内の一部の反対を押し切って、韓国との合意を結んだが、それは国際法を有効に使って、韓国のプロパガンダを押さえ込む妙手であった。

 たとえば、今回の合意で「最終的かつ不可逆的な解決」という文言が使われており、しかも、それが韓国側外交部長官の発表で使われている点。これは「二度とこの問題を蒸し返さない」という意味であり、こう言った政府がまたこの問題を蒸し返したら、国際社会では二枚舌と受けとられてしまう。

 第二に、この合意に、アメリカを仲介人として巻き込んでいる点がある。この1月、釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されると、安倍首相はバイデン米副大統領と電話で会談し、「米政府として慰安婦問題に関する日韓合意を支持しており、着実に履行されることを強く期待する」という発言を引き出した。

 アメリカとしては、自らの仲介で日韓合意を成立させたのに、わずか1年のうちに韓国がそれを無視した、という事で、メンツをつぶされた思いであったろう。そしてそれが国際社会の面前で行われたことにより、韓国の国際常識のなさが世界の国々にも明らかになってしまった。

 麻生財務省は、日韓通貨交換(スワップ)協定再開に向けた協議を中断し、「信頼関係で成り立ってますので、約束した話を守られないと貸した金も返ってこない可能性もある」と韓国が信頼できない国であることを指摘した。

 慰安婦問題は、今までは「日本がどのように反省し、謝罪するか」という「日本側の誠意」の問題にされていたのだが、日韓合意後は「アメリカも巻き込んで合意した「最終的かつ不可逆的な解決」を「韓国はなぜ守らないのか」という国際法上の問題に置き換えられたのである。これで文在寅大統領も押さえ込まれている。


■5.慰安婦問題への二つのアプローチ

 慰安婦問題には二つのアプローチがある。一つは、それが歴史的な史実ではなく、韓国および一部の反日日本人によるプロパガンダである、ということを立証していく、というアンチ・プロパガンダの戦いである。この点は、日本の外務省がはなはだ怠慢で、韓国側の一方的攻勢にさらされてきた。一部の民間有志が取り組んでいるが、政府レベルの努力がもっと必要だ。

 本年3月には、米国アトランタでの慰安婦像設置が不許可となり、この決定の背景には、アトランタの総領事館からの働きかけがあったと米メディアは伝えている。筆者がアメリカで、外務省の関係者に「アトランタはよくやった」と言ったら、返ってきた反応は、「韓国側を怒らせて、ちょっとやり過ぎた」というもので、唖然とした。

 韓国側は、日本側を平気で怒らせてプロパガンダを続けているのに、日本側の外交関係者が、こういう「紳士的態度」では対等の戦いにはなりえない。

 果たして篠塚隆・駐アトランタ日本総領事が米地方紙のインタビューで「慰安婦は金をもらった売春婦だった」と語ったというニュースが流れ、韓国外務省報道官が批判するという一幕が6月末にあった。篠塚総領事は「プロスティチュート(売春婦)という言葉は使っていない」との事で、これまたフェイク・ニュースのようだ。

 こういう反撃が「韓国側を怒らせて、やりすぎた」という事なのだろうが、紳士的な事なかれ主義では、国際謀略戦は戦えない。我が国もアンチ・プロパガンダ広報に努めて、世界中の慰安婦像が韓国のプロパガンダの象徴として嘲笑の的になり、韓国政府が自ら撤去したくなる位にやり込める姿勢が必要だ。


■6.「中国と韓国の行為は、国際社会のルール違反である」

 もう一つの戦いが、日韓合意に見られるような、条約や国際法の次元で戦っていく事で、特に中韓はこれらを無視した攻撃が多く、また日本国民の無知につけこんでいる。この点で、元外交官で、戦時国際法の第一人者・色摩力夫(しかま・りきお)氏の最新刊『日本の死活問題 国際法・国連・軍隊の真実』[3]が一般国民にも分かりやすく書かれていて、お勧めである。

 氏の名著『国際連合という神話』[4]は、弊誌223号「国際連合、3つの幻想」[a]でも参考にさせていただいた。国連は世界平和を目指す機関などではなく、その英語名称が"The United Nations"と、第2次大戦中の「連合国」と同じであることから、戦後体制を固定化するための機関である、という本質が明かされている。

 色摩氏の新著では、国連や憲法の問題と並んで、戦時国際法の視点から中韓の歴史認識問題を論じている。「平和の回復後も、『歴史認識』問題を振りかざす中国と韓国の行為は、国際社会のルール違反である」と指摘されているように、日本国民が国際法を理解することが、中韓の攻撃を跳ね返すアプローチなのである。


■7.「いっさいの請求権を一括して最終的に解決」

 慰安婦問題に関する国際法の立場からの色摩氏の指摘は、まことに簡明直截である。

__________
 第2次大戦の結果、韓国は日本から独立しましたが、その法的根拠が1965年の「日韓基本条約」です。・・・また、その際同時に締結した「日韓請求権協定」によって、両国およびその国民の間のいっさいの請求権を一括して最終的に解決したのです。したがって、その後は、韓国も日本に対していかなる賠償も請求できなくなっているはずなのです。[3, p36]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 たとえば、韓国の元慰安婦が、日本に対して賠償請求できるというなら、終戦直後、身一つで半島から脱出してきた日本人は、半島に置いてきたすべての財産に関して韓国政府に請求ができる、ということになる。

 かつてライシャワー駐日大使は「日本は敗戦に際し、韓国に30億~140億ドルの財産を残してきた」と発言した。1ドル100円とすれば、3〜4兆円の規模になる。それに対して韓国側が提出した資料を日本側で査定した所、総額7千万ドルにしかならなかった。[b]

 日韓両国はこういうやりとりを経て、双方で請求権を諦め、しかも日本が無償3億ドル、政府借款2億ドル、さらに民間借款3億ドル以上の経済協力で合意したものである。「日韓請求協定」によって韓国は日本に対していかなる賠償も請求できなくなっている。


■8.韓国の元慰安婦が賠償を求めるべき相手は韓国政府

 韓国政府はすでに請求権を失っているが、韓国の元慰安婦が日本政府に賠償を求める権利はあるのだろうか? 「日韓請求権協定」は韓国政府が署名したものだが、それは韓国という国家を代表して署名したもので、国民も含めた国全体を縛るものである。

__________
 つまり、韓国の元慰安婦が戦時賠償を求める相手は、日本ではなく、ほかならぬ韓国なのです。韓国政府はその責任を免れるわけにはいきません。このことには具体的な条約上の根拠があり、しかも国際法の一般原則から見てもまったく疑義はありません。[1, p37]
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 だから文大統領が「前政権での日本との慰安婦合意は韓国人、特に被害者(元慰安婦の女性)に受け入れられていない」と言ったら、日本政府は「そうですか。それでは貴政府の決定が貴国民に受け入れられるよう頑張ってください」と応えれば済んでしまう。

 もう一つ、「日本政府は真摯な謝罪を」という声も、国際法から見れば簡単に排除できる。そもそも「真摯な謝罪」をしたかどうか、などということは客観的に判断できることではないし、条約の前提条件でもない。

 こんな事を認めたら、韓国は未来永劫、日本に「真摯な謝罪」を求め続けることができる。韓国の今までの大統領が毎回、日本に謝罪を求めてきたのが良い例である。それを国際法と条約に基づいて、はねつけないから、韓国大統領が替わるたびに日本との交渉カードに使うのである。

 我が国は韓国とはすでに「日韓請求権協定」を結び、相互の請求権はすべて消滅している。そういう国際法上の原則をしっかり主張しないから、ここまで慰安婦問題がこじれてしまった。今回の「日韓合意」も、国際法上は屋上屋を重ねたものだが、国際法の次元でこの問題に終止符を打とうとする努力である。

 だから、我々国民も、国際法・国際条約への理解を深めて、韓国側、および、それに同調する反日日本人への国際常識に基づいた反撃をしなければならない。なお、紙数が尽きたが、シナの「南京大虐殺」などの歴史攻撃も、まったく同じアプローチで反撃できる。詳細は色摩氏の著書[3]を読んでいただきたい。
(文責 伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(223) 国際連合、3つの幻想
 第2次大戦の戦勝国が作った国連を徳川幕府に例えれば、わが国は旧敵国の外様大名。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog223.html

b. JOG(380) 筋を通した日韓交渉
 日本政府は足かけ14年もの交渉で筋を貫き通して、「完全かつ最終的な解決」にこぎつけた。
http://blog.jog-net.jp/200501/article_1.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 産経新聞、H29.07.07「文在寅氏、気さくな印象狙ったか 『告げ口外交』転換、『慰安婦問題が障害となってはいけない』
http://www.sankei.com/world/news/170707/wor1707070074-n1.html
2. 産経新聞、H29.06.25「『日本の努力が足りない』といいながらスワップなど改善切望の韓国 日本気にしつつ慰安婦合意で本音」
http://www.sankei.com/politics/news/170625/plt1706250001-n1.html
3.色摩力夫『日本の死活問題 国際法・国連・軍隊の真実』★★★、グッドブックス、H29
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4907461127/japanontheg01-22/
4.色摩力夫『国際連合という神話』★★★、PHP新書、H13
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4569618251/japanontheg01-22/

陳登元著「敗走千里」
2017/07/01

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」通算第5335号(2017年7月1日より転載
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「戦争とはこんなもんです」と中国人兵士は記録を残した
  このような第一級史料がなぜ戦後の日本から消されていたのか

陳登元著別院一郎訳『敗走千里』(ハート出版)
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 「南京大虐殺」なるものが政治宣伝戦争上で、でっち上げられた架空の事件だったことは、120%証明されている。客観的科学的証拠がなく、反論もなせず、しかし中国は政治的プロパガンダを続ける。フェイクの総合展覧会が南京にある反日記念館である。
 本書は、南京大虐殺の虚妄、フェイクを中国軍兵士として参戦した中国人が自ら語った貴重な証言である。
 じつは昭和十三年に、この本は出版され、百万部を越えるベストセラーとなっていた。それを消したのはGHQだった。焚書として、発禁図書としてGHQが没収し、廃棄したのだ。
 「南京に山積みされた死体の山」とは、蒋介石軍の督戦部隊が、敗走しようとした自国軍兵士を機関銃で撃ったものだった。
便衣隊とは、つねに軍人が一般市民に化ける服装を携帯していたという実態があった。
 実際に中国軍に強制徴募され強制的に戦闘地に駆り出された中国人青年・陳登元が見たのは、中国軍人の腐敗、その略奪ぶりのおぞましさだった。
 陳登元は父親が重慶で親日家だった関係で十代で日本留学の経験があり、ちょっと祖国へ帰るといって日本を去って、そのまま運悪く徴兵されてしまった。
 彼は手記を綴った。
 それを日本で家庭教師だった別院氏が翻訳した。
 「僕はこの二度と得難い戦争を記録しておく決心をしました。幸い、僕の耳はまだ、砲弾にやられた断末魔の人間の叫喚が残っています。生臭い血の臭いが鼻に残っています。
 バラバラになった人間の腕や、旨や、首や、そんなものが目に残っています。僕は書きました。僕の経験し、見聞せる範囲内においての殆ど残らず書きました」
 読んでみると、中国軍とは、こういう出鱈目な行為をする匪賊だったことが了解できる上、南京大虐殺は完全に否定されている。

なぜ前川さんは 出会い系バーで貧困調査という苦しい釈明をしたのか
2017/06/14
ITmedia ビジネスONLiNE アイティメディア株式会社2017/05/31より転載
© ITmedia ビジネスオンライン 提供
 先週、日本中がなんとも言えないモヤモヤした空気に包まれた。
 国会で大騒ぎになっている「総理のご意向」文書を本物だとぶちまけた、前川喜平・前文科省事務次官が「出会い系バー」に通っていたという読売新聞の報道を事実と認めつつも、その理由を「女性の貧困について、ある意味実地の視察調査の意味合いがあった」と釈明したのである。
 ご存じのように、文部科学省は教育を所管している。待機児童やイジメ問題の現実を見るために身分を隠して保育所や教育委員会に潜り込むとかならばまだしも、マジックミラーごしに女性をチョイスし、小遣いをちらつかせて店外デートの行き先を「交渉」するような大人の社交場で、女性の貧困を潜入調査してくれなんてことは国民は誰も頼んでいない。
 百歩譲って、前川さんがおっしゃるように、援助交際に走る女性たちと実際にメシを食ったり小遣いを渡したりしなくては見えない「文科行政、教育行政の課題」というものがあるとしても、ひとつの店に多い時は週3日も通いつめて「常連」になる理由はまったくない。
 なんてことを言うと、「そんな個人の人格攻撃はやめろ!」というお叱りの言葉が飛んでくるかもしれない。
 前川さんを「ヒトラー安倍の恐怖政治に屈しない正義の官僚」として持ち上げている朝日新聞や民進党のみなさんからすれば、「出会い系バー通い」は官邸が前川さんの社会的評価を貶(おとし)めるための印象操作なのだからスルーしてやんなさいよ、という主張なのだ。
 あれが「告発潰し」なのは明らかだ。ただ、だからといって、あの「おもしろ回答」に目をつぶれという理屈には大きな違和感を覚える。
 もしも加計学園問題の全貌を本気で解明しようというのなら、前川さんの「出会い系バー通い」が本当に「貧困調査」なのかという検証も避けては通れない。というよりも、このあたりの釈明から、一連の獣医学部新設をめぐるドタバタの「本質」が見えてくるのではないかと考えている。なぜなら、前川さんという方が官僚としての「面子」をなによりも重くとらえていることが、この苦しい言い訳から痛いほど伝わってくるからだ。
●官僚トップの「面子」があったのか
 もし前川さんが「出会い系バーで貧困調査」なんて「おもしろ釈明」をせず、「日ごろのストレスを発散したくて若い女性とデートしたかった。でも買春はしてません」とか潔く答えていれば、日本中からここまでツッコミを入れられることはなかったはずだ。朝日新聞だったら「事務次官だって人間だ、出会い系バーに通って何が悪い!」とか人権的な観点から援護射撃をしてくれただろうし、せっかくの「告発」にもケチがつかなかった。
 にもかかわらず、無理筋の釈明をしてしまったというのは、やはり官僚トップの「面子」があったとしか考えれないのだ。
 それを踏まえると、今回の「行政がゆがめられた」という「告発」も同じような背景があるように見えてしまう。つまり、政権の不正を正すためというよりも、単にご自分の「面子」を守るためにやっているように思えてしまう。
 それがいったいどういう「面子」なのかということを分かっていただくには、そもそも「獣医学部新設」というものが文科省と、前川さんにとってどのようなものかということを説明しなくてはいけない。
 前川さんもおっしゃっているが、文科省は文部省時代から長く獣医学部の新設に難色を示してきた。昭和51年(1976年)の「獣医師問題検討会報告」(農林水産省)などの需給予測をもとにして、昭和54年(1979年)以降、獣医学部の定員抑制方針というのを一貫として続けているのだ。
 この背景には、民進党の玉木雄一郎幹事長代理にも働きかけていた日本獣医師会からの猛烈なロビイングがあることは言うまでもない。
 ハタからみると、どうしても参入障壁を上げて既得権益を守っているような印象しか受けないが、獣医学部をつくって獣医が多くなりすぎると、しょうもないことをする輩(やから)も出てきて、「質」が落ちるというのが獣医師会のロジックである。このあたりはやはり「国家戦略特区」によって38年ぶりの医学部新設を押し切られた、日本医師会の主張とよく似ている。
 ちなみに、獣医師会が本気で「数より質」にこだわっているのは、1984年4月1日の朝日新聞を読むと嘘ではないことが分かる。獣医師会が個人会員に対して10年以上、厳しい広告規制をかけていたことを認め、公正取引委員会が問題視していたというのだ。
●前川さんが「正義の告発者」になるまでの背景
 このように、とにかく獣医師を増やしたくない獣医師会が「獣医学部新設」の重しとしてすがっていたのが、自民党の「文教族」である。
 「獣医師問題議員連盟」にはこれまで森喜朗、麻生太郎、高村正彦、鳩山邦夫という文教族が文教族がズラリと名を連ねており、そこには前川さんの義理の弟で、森内閣で文部大臣を務めた中曽根弘文参議院議員も含まれている。
 ちなみに、中曽根さんの政治団体の収支報告書(平成23年分)を見ると、前川さんの実父で、前川製作所の前社長を務めた前川昭一さんとご親族が、政治資金パーティーに計200万円を支払っている。前川さんと中曽根さんが文科官僚と政治家という立場を超え、「ファミリー」として強い結びつきがあることがうかがえよう。
 こういう事実関係をひも解いていけば、前川さんにとって「獣医学部新設」がどのような意味をもつかが見えてくる。獣医師会という業界もノー、文部省時代から諸先輩たちもノー、そして義弟もいる自民党文教族もノーということで、「文教ムラ」に生きる者として絶対に認めてはならぬタブーなのだ。本来なら、前川さんは歴代の事務次官のようにこの動きを未然に潰さなくてはいけないのだが、官邸が岩盤規制に穴を開けるためにつくった「国家戦略特区」の前になす術もなかった。つまり、官僚トップとしての「面子」が丸つぶれになった形なのだ。
 そうなると、自分をコケにした官邸に対して恨み節のひとつもぶちまけたくなるのは分からんでもない。おまけに、天下りのあっせんをしていたことが暴かれて、国会で吊るし上げられて「万死に値する」なんて謝罪をさせられただけではなく、辞めた後には追い打ちをかけるように「懲戒処分」まで出された。入省した時から「未来の事務次官」ともてはやされてきたエリート官僚の「面子」は、安倍官邸によってズタズタにされたのである。
 このように「獣医学部新設」と、前川さんが「正義の告発者」になるまでの背景を振り返っていけば、「行政がゆがめられた」という言葉を、そのまま素直に受け取ることはできないだろう。
 あまり注目されていないが、実は文部科学省では獣医師会の主張する「質」を上げるための施策として、各地の大学の獣医学部や獣医学科を連携させる「共同獣医学部・獣医学科・協定」を後押ししてきた。海外と比較して恵まれていると言い難い獣医学教育の教員や施設を複数の大学で共有するといういわば「養成機関の絞り込み」の方向で動いていたのだ。
 そんな苦労をしている中で、四国エリアにないからという理由で新しい獣医学部がポコンとつくると聞いたらどうか。俺たちが今まで必死にやってきたことを無駄にする気か、と官邸の「横暴」に腸が煮えくり返るのではないか。つまり、前川さんの言う「行政がゆがめられた」という言葉の裏には、純粋に文科省の「面子」を潰されたことへの怒りもあるのだ。
 そんな「妄想」は、安倍晋三総理が加計学園に便宜を働いた問題から論点をすりかえているのだ、という人がいるが、論点ずらしで言えば、民進党や朝日新聞も目くそ鼻くそだ。
●支離滅裂なロジックを言ってしまう
 菅義偉官房長官が言っているように、自民党文教族がガッチリガードしていた岩盤規制に勇ましく切り込んだのは、旧民主党政権である。そして、それを応援していたのが、今回うれしそうに「総理のご意向」スクープを放った朝日新聞である。民主党本部の陳情要請対応本部に、愛媛県の民主党県連から「今治市で獣医師養成系大学を設置するための規制緩和」という要望があがってくる少し前、朝日はこんな援護射撃をしている。
 「獣医師の定員を定める20都道府県のうち12の都県で定員割れとなっていた。北海道で51人不足し、岐阜県で18人、鹿児島県で10人、新潟県で7人足りない。薬剤師や臨床検査技師が獣医師の仕事の一部を肩代わりしている県も複数もある」(朝日新聞 2010年6月10日)
 こんな調子で、「獣医学部新設」をたきつけていた両者が、それを実現した安倍政権を目の仇(かたき)にして叩くというのは、ハタから見ていてあまり気持ちのいいものではない。政権批判のためのポジショントーク感がこれでもかというくらい伝わってくるからだ。
 霞ヶ関の論理で言えば、安倍首相が「行政をゆがめている」のは間違いない。そこにお友だちが関係していることが確かならば、さっさっと首をとればいい。
 だが、ひとつ忘れていけないのは、霞ヶ関の中でも、特定業界にすりよって行政をゆがめている人々がいるということだ。そういう人たちを見抜くポイントが「面子」である。
 既得権益でがんじがらめになった「ムラ」の住人は、自分たちの世界のロジック、自分たちの世界のルールに固執する。そういう内向きの「面子」を守るために、国民の常識とかけ離れたおかしな言動をする。そんな「ムラ人」たちが霞ヶ関にはウジャウジャいるのだ。
 文科省トップが「出会い系バーで貧困調査」という支離滅裂なロジックをしれっと言ってしまうということが、そんな日本の現実を如実に示している。
(窪田順生)

父の謝罪碑を撤去します
2017/06/13

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)6月13日(火曜日)  通算第5324号より転載
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜大高未貴『父の謝罪碑を撤去します』(産経新聞出版)
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 嘗てオートバイを駆って、世界一周女性単身の冒険をなしたエネルギー溢れる大高さんが、保守ジャーナリズムが未踏の領域に力一杯斬り込んだ。
 そのフットワークの力強さ、感受性の鋭さ。好奇心が本書に充ち満ちている。
 いまさら言うまでのないが、吉田清治は日本を貶めるために「創作」に熱中し、あり得なかったことを次々とでっちあげ、朝日新聞と「共闘」して我が国に名誉を著しく汚した張本人である。
しかし朝日新聞が、この嘘を自ら謝罪したことにより、吉田証言なるものが、かえって注目を集めた。朝日新聞は、購読者数を激減させ、経営がふらつき、東大の就職希望者がほとんどいないというほどの惨状に追い込まれた。
 長男の悲壮な決意とは、
 「父が発信し続けた虚偽によって日韓両国民が不必要な対立をすることも、それが史実として世界に喧伝され続けることも、これ以上、私は耐えられません。いったい私は吉田家最後の人間としてどうやって罪を償えばいいのでしょうか。せめてもの罪滅ぼしに決断したことがあります」
それが吉田清治の謝罪碑の撤去である

 さるにても吉田清治なるは、本当はどういう人間で、いったい何を考えていたのか?
 本書はその生い立ち、生活ぶり、戦後の妖しげな足跡、その晩年のくらしぶりに長男の証言をもとにぐいぐいと真実に迫る。
 吉田清治は結構な文才があり、応募作で懸賞金を手にしたり、週刊朝日の手記で佳作に入選したりした経験があった。
その多少の文才が、かえって作家になれるかもという幻影を追って、その夢想に取り憑かれて就職もせず、ぶらぶらとしていた。まさしく戦後の「知の荒廃」という時代の背景を鮮明に連想させてくれる。
 下関時代に吉田は共産党から「市議会選挙に立候補し落選している」(72p)という過去があることも分かった。
 また済州島の惨劇を吉田清治は書いたが、長男は作りごとだと明言している。
「父は済州島には行っていません。それは父から聞いています。それで、父は済州島の地図を見ながら原稿用紙に原稿を書いていました」(99p)
 衝撃的な証言はまだまだ続く。
 「慰安婦慰霊碑建立」の活動に立ち上がったある女性は、韓国からイ貞玉なる韓国人女性(運動の中心人物)の訪問を上、国会議員会館を訪ねると、
「土井たか子の秘書が(イに)『いつもの活動費』と言って、百万円ほどの封筒を渡したこと」があるという。
 直後、河野談話が発表された。
 長男も次男もソ連に留学しており、大田薫の推薦があって、逆に留学記録を書いたためにソ連から追放され、帰国後も公安の頻繁な接触があったという後日談も加わっている。
 舞台裏の闇に繰り広げラテいる日本を貶める策謀に一端が、本書を通じて明らかになった。

加計学園問題
(読者の声1) 加計学園問題はとっくに決着しているのですが、依然として野党が国会で取り上げ、マスコミもまたテレビなどを中心に連日報道しているので、安倍内閣は大丈夫か、などといった疑問が生じています。
 この問題の根幹は、大学学部新設の許認可権限を持つ文科省がなぜ50年以上にわたってこれを認めて来なかったかという点にあります。
 農水省によると、2015年時点での獣医師は全国に計約3万9千人。うち最多はいわゆるペット病院で診療を行う約1万52百人(39%)。伝染病など公衆衛生にかかわる公務員が約95百人(24%)。家畜の診療を行う産業動物診療が約43百人(11%)。
 都会のペット病院の獣医師は倍増しているが、鳥インフルエンザや口蹄疫、BSEなどの対策に携わる獣医師が減少している。地方自治体が公務員としての獣医師を募集しても、応募が募集の半分しかないという。
 加計学園が獣医学部新設を計画する四国には獣医学部が全くなく、かなり前から学部新設の要望が文科省に寄せられていた。しかし文科省ががんとして首を縦に振らないため、第2次安倍政権の目玉政策であるアベノミクスの3本の矢の1本、規制改革として国家戦略特区の中に愛媛県今治市への獣医学部新設が入れられた。もし加計学園の理事長と安倍総理の友人関係が「有効」ならとっくの昔に認可されていただろう。
 しかも抵抗する文科省に対し、規制改革推進の内閣府が学部新設を主張。この論争でも文科省は学部新設に伴う需要予測を示すことができず、内閣府側の勝利に終わった。
 文科省が文書に「総理の意向」なるものが書いてあるというのは、論争に負けた側の言い訳に過ぎない。
今になって事務次官を辞めた人物が「行政を歪められた」などと言っているが、もしそれが本当なら、2016年3月の閣議決定の時、引責辞任をし、抗議すれば良かった。
 要は、自らは文科省員の天下り斡旋という法律違反を犯しながら、必要な学部新設には目をつぶってきた文科省の体質にある。
この際、同省の解体も含め、業務全般の全面見直しが必要だと思います。
(加藤清隆)(宮崎正弘のコメント)わかりやすいご説明、納得がいきました。優秀なはずの官吏たちは国益より省益が大事だったということですね。外務省が害務省と言われるように文科省は悶蚊省でしょうか。

アイリスチャン
2017/06/02

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」通算第5312号平成29年6月2日より転載
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高山正之『中国と韓国は息を吐くように嘘をつく』(徳間書店)
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 『正論』の巻頭言を纏めた最新版だから、殆どの文章は読んだ記事もあるが、基軸は朝日新聞批判である。
 絶望的な馬鹿新聞を、いまさら俎上の載せて斬っても、馬鹿が治る可能性は薄いが、保守陣営のなかでさえ、記事を疑いながらも騙されているお人好しが多い。だから、本書の役割はやはり大きい。
 戦後、GHQがやらかした日本精神壊滅施策は予測以上の功を奏し、馬鹿を大量生産した。その世代は『あほー世代』として後世の歴史家が書くことになるだろう。
そのGHQに便乗し、ときに権力に媚びて、ますます日本を貶めた朝日新聞が、こんにちまだ日本に存在していること自体が奇々怪々である。聞くところに拠れば、最近東大生の朝日就職希望組が激減したとも言うのだが。。。。

さて本書で採り上げられている話題は全方位で、ヒラリーの陰謀から韓国のダメさ加減まで、国内的には三浦和義から少年の猟奇殺人まで。あまり詳細をここで紹介してしまうと読者が本を買わない、営業妨害になると言われそうなので、一つだけに留める。
それはアイリス・チャンの妄言、誹謗批判の続きである。

評者(宮崎)の経験でも南京に鳴り物入りで解説されたフェイク記念館(ダイギャクサツ記念館)の中庭に、金ぴかの像が聳えているが、これ、アイリスチャンである。
その周りに市民がピクニックがてら弁当を拡げて「この女、誰?」と言っていたのには別な驚きもあったが、そのことは措く。
彼女が死んだとき、香港のメディアまで、彼女を『中華民族のヒロイン』と書いた。すでに彼女のペンギンブックス「レイプオブナンキン」は、すべてがフェイクであることは、120%証明されており、いまさら、その出鱈目を指摘する積もりはない。

 問題はその後に起きた。彼女の人生が暗転したのだ。
増長し、ハイになった彼女はクーリーの悲劇の歴史ドキュメントに挑んだのだ。アメリカの西部開拓史とはインディアンを虐殺、殲滅し、ついでにバッファローを殲滅したことだが、カリフォルニアに達して、西部まで鉄道が繋がっても、鉱山労働者不足に陥った。そこでアメリカ人は、奴隷を清国から大量にいれることにした。これがクーリー貿易である。

おりからのゴールドラッシュ。中国人労働者は奴隷とも知らず、また使役されたあと、ダイナマイトで殺されることも知らず新大陸にやってきた。
アイリスは、この真実を暴いた。
フェイクの『南京虐殺』を高く高く評価して止まなかった米国ジャーナリズムが、この作品には戦慄し、そして罵倒を始める。
百八十度の評価変えが起きたのだ。
「あ、これがアメリカ人を怒らせたな、だからノイローゼになって拳銃で自殺したのだ」と考えていたが、高山氏も、そう結論した。
評者は『TIME』書評欄で、信じられないほどの悪罵に満ちたアイリスへの酷評と罵倒を読んだ。
「『歴史の裏付けもない』、『『軽率な駄作』とこき下ろした』(28p)
高山氏は、その後日譚を綴る。
「落ち込む彼女にこんどは米国の出版社が再起のチャンスを与えてきた。『パターン死の行進』を書いてみろ、日本の悪口をもっともらしく書くのがおまえの仕事だと。(しかし)アイリス・チャンには支那人には珍しく良心があった。調べれば歩いたのはたったの60キロ。日本軍は食事も休息も与えていた。米国人の嘘に呆れた。でも嘘はもう書きたくない。悩んで鬱になって、その果てに彼女はサンノゼ市の自宅近くで拳銃自殺した」

共同通信の偏向ニュースと社説を配信
2017/05/29

Japan On the Globe(1007)■国際派日本人養成講座■より転載
Media Watch: 共同通信と地方紙の左翼偏向独占報道体制

 共同通信が偏向ニュース・社説を配信し、各県の独占的地方紙が転載するという左翼偏向報道体制の実態。

■1.英国のコンサートテロと日本の「テロ等準備罪」衆院通過

 5月22日夜、英国マンチェスターのコンサート会場で自爆テロとみられる爆発事件があり、少なくとも22人が死亡し、59人が負傷した。おりしも我が国では「テロ等準備罪」新設法案が衆院本会議を賛成多数で通過した。

 この二つを結んで、石川県金沢市に本社を置く地方紙・北國(ほっこく)新聞の24日付け社説「英国で爆弾テロ 国際条約で日本も備えを」は、次のように述べた。

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 訪日外国人数が年間2千万人に達しようとするなか、犯罪組織の情報共有は極めて重要だ。日本も国際組織犯罪防止条約の締結を急ぎ、テロ抑止に役立てたい。

 車やナイフなどを使った単独犯によるテロは摘発が難しいが、組織犯罪は準備段階で発覚するケースも多く、フランス政府は先月、南東部の都市マルセイユで、大統領選候補者らを標的にテロを計画したとして、男2人を拘束した。

 フランスには「凶徒の結社罪」があり、「重罪等の準備のために結成された集団または、なされた謀議に参加したとき」に適用できる。英国には「共謀罪」があり、「ある者が他の者と犯罪行為を遂行することに合意したとき」に逮捕し、取り調べが可能である。

 欧米先進国にはこうした「共謀罪」が既にあり、犯罪の摘発に威力を発揮している。日本でも共謀罪の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する法案が衆議院本会議で可決され、187の国・地域が参加する国際組織犯罪防止条約の締結まであと一息のところまできた。各国と連携して監視の網を広げる必要がある。[1]
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 国際組織犯罪防止条約は2000年11月、国連総会でテロ組織などの国際犯罪に対応するために採択されたもので、すでに187の国・地域が締結し、国連加盟国で未締結なのは日本、イラン、ソマリア、コンゴなどわずか11カ国に過ぎない。この条約の締結には共謀罪を盛り込んだ国内法の整備が必要だが、我が国では過去3度も廃案になって、この条約を締結できていなかった。

 国際組織犯罪防止条約を締結していないと、どのような問題が起こるのか。たとえば、ある国際テロ集団が東京オリンピックで来日する英国選手団にテロを計画し、それを察知した英国の警察が「共謀罪」で犯人の検挙を日本の警察に求めても、日本では該当する法律がないため、阻止できない恐れがある。

 もし、そのテロが実行されたら、我が国民も巻き添えになる可能性がある。さらに国際テロ集団について警告を受けながらも、阻止できなかった我が国は国際的な非難を浴びるだろう。こういう背景を考えれば、この北國新聞の社説はごくまっとうな意見を述べたものだという事が分かる。


■2.社説のタイトルまで同じ地方紙

 この法案に関して、全国紙では読売、産経が賛成、朝日、毎日、日経が慎重・反対と従来の如く二つに分かれたが、興味深いのは地方紙の動向だ。[2]の一覧を見ると、賛成は上記の北國新聞と、同社の系列の富山新聞のみ。主要地方紙35紙は軒並み反対だ。特に目立つのが、社説のタイトルまで同じ地方紙がいくつもあることだ。

 東奥日報    基本的人権との摩擦生む
 茨城新聞    基本的人権と摩擦生む
 下野新聞    基本的人権との摩擦生む
 岐阜新聞    基本的人権との摩擦生む
 日本海新聞   基本的人権との摩擦生む
 長崎新聞    基本的人権との摩擦生む
 大分合同新聞  基本的人権との摩擦生む

 青森県の東奥(とうおう)日報の社説の中心的な主張点を引用すれば、

__________
 通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。[3]
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「目を光らせたり、隠し撮りしたり」となかなか文学的な表現だが、シナ以外の世界の187の国・地域でそういう事が日常的に行われているとは聞いた事がない。

 次の茨城新聞では、タイトルは「基本的人権と摩擦生む」と「の」の字が抜けているが、文章は句読点に至るまで、完全に同じである。

__________
 通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。・・・憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。[4]
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■3.「共同通信社から配信される『資料版論説』をほとんどそのまま掲載していた」

 日本各地の地方紙の社説がなぜこれほど見事に一致するのか、答えは単純だ。日本の全国紙や各県の地方紙にニュースを配信している共同通信が、「資料版論説」という「社説を書く際の参考資料」を配信しているからだ。山梨日日新聞の元論説委員長は、次のように語っている。

__________
 社説は委員長ひとりにすべて任され、県内のテーマを取り上げるとき以外は、社説・論説のための参考資料として共同通信社から配信される『資料版論説』をほとんどそのまま掲載していた。その場合、私がやるのは、行数調整のために言い回しを変える程度だった。[5, p45]
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 前節で紹介した各地方紙の社説タイトルの見事なまでの一致は、この指摘が事実である事を示している。

 経営規模の小さい、取材陣容も限られた地方紙が、全国ニュースや国際ニュースの報道に通信社に頼るのは当然である。世界各国の通信社はそのためのニュース配信を行っている。しかし社説まで配信するのは世界でも珍しいという。

 さらに問題なのは、日本のほとんどの地方紙、ローカルテレビ・ラジオ放送局が依存している共同通信の報道・社説が異常に偏向していることである。


■4.戦中戦後に設立された報道統制システム

 まずは共同通信がどれほどの影響力を持っているのか、見ておこう。共同通信は「全国の新聞社、NHKが組織する社団法人」として1945年に設立され、加盟社はNHKを含め56社、加盟社が発行する新聞は67紙に及ぶ。県紙と呼ばれる地方紙が各都道府県ごとにほぼ一社ずつ加盟している。

 日本の一般紙全ての発行部数約47百万部のうち、全国紙5紙(朝日、毎日、読売、産経、日経)が合計28百万部で、地方紙は合計19百万部程と4割を占める。全国紙はある程度の市場競争もしており、その報道や論評については読み比べも可能だ。(それでも偏向報道、捏造報道が絶えないのは弊誌でも何度も見てきたとおりであるが[a])。

 しかし多くの地方紙は県内独占に近く、読者は県紙の論説以外に触れる機会が少ない。

 そもそも地方紙が概ね一県一紙になったのは、戦時中の新聞統合による。戦前は同一県内に三、四紙が存在していることも珍しくなかったが、戦時下における情報統制を目的にした昭和16年12月の新聞事業令によって、地方紙はその多くを整理・統合され、最終的に都道府県ごとに一、二の新聞社しか発行を許可されなくなった。[5, p274]

 多くの新聞は戦時中の「軍国主義」による報道統制を悪しざまに批判するが、現在の地方紙の一県一紙独占体制そのものが、その報道統制の産物なのである。

 共同通信が終戦直後の1945年に設立された点にも留意する必要がある。共同通信は占領軍の情報統制の手段の一つとして設立され、GHQ編集の「太平洋戦争史」を翻訳して各紙に配信した。

 共同通信と一県一紙の地方紙の体制は、まさに戦中・戦後に設立された報道統制システムなのである。


■5.「困つた地元紙」「赤旗愛媛版」

 この報道統制システムの要である共同通信がどのような偏向報道をしているのか、一例を見てみよう。以下は平成16(2004)年、東京都中央委員会が扶桑社の「新しい歴史教科書」を採択した際の報道である。

__________
(読売新聞)束京都教育委員会は26日午前、台東区に来春開校する都立中高一買校で使う教科書として、「新しい歴史教科書をつくる会」(八木秀次会長)のメンバーらが執筆した扶桑社の歴史教科書を採択した。

(朝日新聞)(事実を述べた後で)扶桑社版教科書をめぐっては「戦争を美化している」などの批判もあり、全国的にはほとんど使われていないが、都立の普通校での採択は初めて。

(共同通信)(事実を述べた後で)扶桑社版は「戦争賛美」「国粋主義的」との指摘があり、中国や韓国が「歴史を歪曲している」と反発、外交問題になった。
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 読売新聞は淡々と事実のみを伝えているが、朝日新聞は「戦争美化」という概括的な批判のみを伝え、賛同の声は紹介していない。両論併記の原則を無視した一方的な報道である。共同通信社はさらに中国や韓国の声まで伝えている。朝日新聞以上の偏向報道である。

 この26日から翌日にかけての2日間で、共同通信は11件もの記事、それもほとんどが批判的な内容のものを配信している。ニュースの配信を生業とする通信社にしては、異様な入れ込みようであった。[5, p55]

 こういう偏向記事をそのまま使う事の多い地方紙も、当然、歪んだ報道姿勢となりやすい。北海道全域で圧倒的シェアを持つ「北海道新聞」は心ある道民から「困った地元紙」と言われ、愛媛県で6割近いシェアを持つ愛媛新聞は「ミニ朝日」「赤旗愛媛版」とも呼ばれている。[5, p205]

 沖縄には沖縄タイムスの琉球新報という2つの県紙があるが、左翼偏向ぶりを競い合っているかのようで、尖閣危機は報道せず、米軍基地の県外移転のみを叫んでいるのは、[b]に紹介したとおりである。


■6.北國新聞の鋭い論法と高い見識

 これらに比べ、先に紹介した北國新聞は数多くの偏向地方紙の中でも真っ当な報道と論説を掲載している例外的な存在である。その鋭い論法と高い見識には賛嘆を禁じ得ない。一部を紹介すると:

__________
 竹島の領有権を主張する日本に対して、韓国側は「植民地侵略を正当化するもの」などといって抗議しているが、日本が竹島の編入措置をとったのは韓国併合以前であり、そうした非難は当を得ていない。[5, p191]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 憲法89条は『公の支配』を受けない教育などの事業に税金を充ててはならないと定めている。朝鮮学校が『公の支配』下にあるとは言い難く、国民の税金で就学支援を行うのは、憲法上問題があるのではないか。[5, p116]
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 九条の規定、とりわけ二項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しなぃ。国の交戦権は、これを認めなぃ」という規定が主権国家の根本と矛盾するのは、今や日本国民の多くが理解するところだ。自国や自国民を侵略等々から防衛しないという主権国家というのはあり得ないからである。[5, p239]
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 こうした鋭い主張とともに、北國新聞は地元発の情報発信にも熱心である。例えば:

・県支援で644組成婚/縁結び役育てた成果出た(H25.05.24)
・自衛隊基地で心身鍛え 輪島進出のサンテック、新人研修で体験入隊(H29.05.25)
・森崎(解体・土木工事・産業廃棄物処理企業)が舟橋で農園、雇用創出 企業と地域、農業で一体(H29.05.25)

 こうした地元発の豊かな情報発信こそ、全国紙ではカバーできない地方紙の真骨頂であろう。


■7.良識ある国民は見識あるメディアを育てる

 共同通信−独占地方紙という左翼偏向独占報道体制をいかに突き崩すべきか。効果的な戦術は、市場競争を導入して質の高いメディアによって粗悪なメディアを駆逐するというものである。

 尖閣諸島が属する八重山市の地元紙「八重山日報」は、尖閣危機の報道を続けてきたが、最近沖縄本島版の発行を開始したところ、購読申し込みが殺到して配達員の確保に悲鳴をあげているという。[6]

 もう一つが電子版の活用である。北國新聞はスマートフォンで読める電子版を月300円で配信している。同地出身で他の地域に暮らしている人々には、ぜひふるさと発の豊かな情報と見識ある論説を電子版で読んでもらいたいと思う。

 各地域の歴史と文化に根ざして独自の発信のできる地方紙は、インターネットが発展していっても、存在価値を失わない。良識ある国民は見識あるメディアを育て、見識あるメディアが良識ある次世代国民を育てる。それが自由民主主義社会を護る国民の責務である。
(文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. メール講座「国民を欺く捏造報道」
http://blog.jog-net.jp/201501/article_1.html

b. JOG(960) 沖縄の歪められた報道空間
 沖縄を独占する二つの県紙は、尖閣危機は報道せず、米軍基地県外移転のみを叫んでいる。
http://blog.jog-net.jp/201607/article_3.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 北國新聞、H29.5.24「今日の社説 英国で爆弾テロ 国際条約で日本も備えを」
http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm

2. 毎日新聞、H29.3.30「<共謀罪>大半の地方紙懸念 全国紙社説は論調分裂」
https://mainichi.jp/articles/20170330/org/00m/010/006000c

3. 東奥日報、H29.3.22「基本的人権との摩擦生む/「共謀罪」法案」
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20170322023565.asp

4. 茨城新聞、H29.3.22「共謀罪法案 基本的人権と摩擦生む」
http://editorial.x-winz.net/ed-45911

5. 日下公人『だれも書かなかった「反日」地方紙の正体』★★★、産経新聞出版、H23
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/481911137X/japanontheg01-22/

6. 産経新聞「沖縄『第3の県紙』八重山日報 報道に新風 発刊から1カ月余で購読申し込み殺到…配達員確保に悲鳴」、H29.05.22
http://www.sankei.com/politics/news/170522/plt1705220012-n1.html

第38回山頭火全国大会
2017/05/29
    ★作品募集★
                                 山頭火ふるさと会
        山頭火全国自由律俳句大会実行委員会

 山頭火全国自由律俳句大会は山口県防府が生んだ自由律俳人「種田山頭火」の業績を顕彰すると共に、自由律俳句の啓蒙のため、一般等に自由律俳句作品を公募し、俳句大会で表彰を行います。
10月には「山頭火ふるさと館」がオープン致します。ふるって、ご応募下さいますようお願いいたします。

募集規定 自由律俳句・口語俳句とします。定型俳句は対象になりません。

1 部門は「一般の部」と「幼・小・中・高校生の部」とする
2 「一般」は3句を1組とし、1人2組までとする「幼・小・中・高校生」は1人1句とする
3 未発表作品に限ります(原稿は返却致しません)
4 楷書でお書き下さい・ルビは打ちません
5 所定の応募用紙を使用して下さい(コピー可)
6 投句料 ☆一般・会員 3句組 2,000円 ☆幼・小・中・高校生のみ「無料」です
7 投句料の送金方法−「郵便小為替」又は「現金書留」

締 切

1.一  般  の  部  平成29年8月26日(土)必着
2.幼・小・中・高校生の部 平成29年7月15日(土)必着

賞  ☆一般の部
@ 頭火賞(1名)          「表彰状・副賞30,000円」
A 頭火ふるさと館開館特別賞(1名) 「表彰状・副賞20,000円」
B 生誕地賞(5名)顕彰貴(若干名) 「表彰状・副賞5,000円」
C 選者特選賞(8名)        「表彰状・副賞図書券2,000円」

☆幼・小・中・高校生の部
@山頭火ふるさと会会長賞(1名)  「表彰状・副賞図書券5,000円」
A防府市教育長賞(1名)      「表彰状・副賞2,000円」
B優秀賞(若干名)         「表彰状・副貨図書券2,000円」

選  者  伊藤 完吾  いまきいれ 尚夫  窪田 耕二  富永 鳩山
那須 正幹  久光 良一  清水 八重子  藤原 よし久


第38回自由律俳句大会表彰式及び交流会
   ◇第38回自由律俳句大会表彰式
   12月9日(土)12:45〜 アスピラート3F 音楽ホール(防府市戎町1−1−28)
                 防府駅北出口より徒歩2分
   ◇交流会
   12月9日(土)17:00〜 防府グランドホテル(防府市駅南町15−20TEL25−1133)
                     (交流会申込必要一会費5,000円)

送付先〒747−0841山口県防府市仁井令町19−1 島田茶々 内
           山頭火全国自由律俳句大会実行委貞会事務局 宛
                            TEL: 0835‐38‐2205
 主催 山頭火ふるさと会・山頭火全国自由律俳句大会実行委貞会
 後援 
山口県・山口県教育委員会・山口県観光連盟・防府市・防府市市議会・防府市教育委員会・防府市文化振興財団・防府市観光協会・防府市文化協会・防府商工会議所・防府天満宮


第一回尾崎放哉賞のご案内
2017/05/28
「尾崎放哉賞」は、故井上泰好氏の献身的な努力によって長年続けられた「放哉賞」の跡を継いで、自由律俳句結社「青穂」が主催となって創設されました。
尾崎放哉の愛した自由律俳句の魅力を世に広め、多くの方々に親しんでいただくことを目的として自由律俳句を公募し、「青穂」の大会で表彰を行うものです。
どうぞふるってご応募ください。お待ちしております。
         「青穂」代表 小山 貴子
          尾崎放哉質実行委員長 きむら けんじ
          大会事務局長 西川 勝
 <作品募集要項>
募集規定 1.投句料 2句1組で2,000円(何組でも可/郵便小為替または現金書留)
       ※《高校生の部≫は無料です。ただし一人二句まで。
     2.未発表に限ります。違反のあった場合、表彰を取り消します。
     3.応募用紙または原稿用にて(郵便番号、住所、氏名、電話番号記入のこと)
       ※高校生は所属高校名、高校の郵便番号・住所・担当の先生の氏名、本人氏名
応募先  〒545−0041大阪府大阪市阿倍野区共立通1−1−9
     (株)たまてばこ内 尾崎放哉賞事務局 宛

応募締切 2017年12月10日(必着)
《一般の部≫
表彰  選者の選により票数の多いものから表彰します。
尾崎放哉大賞   1名 賞状と賞金100,000円
   優秀賞   5名 賞状と賞金10,000円
    入賞   10名 賞状とクオカード3,000円分

《高校生の部≫
  最優秀賞   1名 賞状とクオカード5,000円分
   優秀賞   10名 賞状とクオカード2,000円分

選者  自由律俳句結社「青穂」役員
表彰式日時 2018年6月2日(土)14時より
場所 未定 (青穂大会にて表彰をおこないます。)

主催 自由律俳句結社「青穂」 (代表:小山貴子)
協賛 ・泉の会(京都)・エトレ句会(大阪)・萌句会(名古屋)・きやらぼくの会(鳥取)
   ・ぎんなん(東京)・群妙(防府)・山頭火ふるさと会(防府)・主流(島田)・白ゆり句会(東京)・城の会(名古屋)・周防一夜会(山口)・層雲自由律(神奈川)・草原(神奈川)・でんでん虫の会(兵庫)・常磐ネットワーク(つくば)・新墾(福岡)・花野句会(仙台)・仏の里句会(大分)・松の会(浜松)・莱荊花(浜松)・路の会(大分)・山彦(下松)・ロマネコンテ(兵庫) (アイウエオ傾)

後援   ・自由律句のひろば・鳥取県・日本海新聞社・「放哉」南郷庵友の会 (アイウエオ順)

問合せ  メールアドレス:support@hosai-seiho.net(事務局)
     FAX:06-6654-5253(事務局)
     電話:090-4134-4104(きむら)
     ホームページはhttp://www.hosai-seiho.net/

歴史教科書読み比べ 日清戦争は何のため?
2017/05/21
Japan On the Globe(1006)■国際派日本人養成講座■H29.05.21より転載

歴史教科書読み比べ(36): 日清戦争は何のため?
 明治政府は何故に日清戦争を戦ったのか?

■1.朝鮮が日本との国交を断った訳

 列強がひたひたと押し寄せるなかで、維新に成功して発足した明治新政府は、早速、朝鮮との国交を求める。東京書籍(東書)版は、次のように記述する。

__________
 成立したばかりの新政府は、朝鮮に新しく国交を結ぶように求めますが、朝鮮はこれまでの慣例と異なるとして断りました。新政府は、1871(明治4)年、朝鮮が朝貢する清と対等な内容の条約(日清修好条規)を結ぶことで,朝鮮との交渉を進めようとしましたが,うまくいきませんでした。[1, p167]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「これまでの慣例と異なるとして断りました」では、読者は何がなんだか分からないだろう。この点は、育鵬社版の方がもう少し具体的に説明している。

__________
 江戸時代、わが国と朝鮮は通信使などを通じて良好な関係にありました。しかし、1868(明治元)年、新政府が朝鮮に使節を派遣した際,朝鮮側は,国書の文言が従来と異なることを理由として, 日本と外交関係を結ぶことを拒否しました。[2, p173]
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 この「文言」について、以下の側注がある。

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 国書には天皇をさす「皇」の文字が使われていたが、中国や朝鮮では、中国の皇帝以外には使ってはいけない文字とされていた。
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 近代的な外交関係を目指す日本に対して、朝鮮はいまだ太古からの「華夷秩序」(シナを世界の文明の中心“中華”とし、周辺の野蛮国“夷”はすべてその属国とする世界観)の意識のままだったのである。日本政府はこのような文字を避けて国書を書き改めたが、朝鮮の態度は変わらなかった。


■2.「日本政府が何よりも期待したのは朝鮮の近代化であった」

 そもそも、明治新政府はなぜ朝鮮との国交を求めたのか。ロシアから国を守るためである。ロシアは1706年にはカムチャッカ半島を領有して、南下を続け、1860年には沿海州を清から奪って、ウラジオストックに港を開いた。

 1861年にはロシア軍艦が船体修理を理由に対馬に入港し、そのまま居座ってしまうという事件が起きた。この時は、イギリス公使が幕府に提案し、英軍艦を送って威嚇し、退去させた。渡部昇一氏はこう語る。

__________
 陸伝いに領土を広げつつあるロシアの姿を見たとき、日本人がただちに気づいたのは、朝鮮半島の重要さであった。もしロシアが南下し、朝鮮を植民地にするようなことになれば、日本にとって、これほどの脅威はない。

彼らはまず、日本本土と朝鮮の間にある対馬や壱岐を占領し、島伝いに日本にやってくるであろう。かって、そのコースで日本に攻めてきたのは蒙古人王朝の元であった。ロシアに“元寇”を再現されたら日本は危ういというのが、彼らの実感であったろう。[3, p54]
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「そこで日本政府が何よりも期待したのは、朝鮮の近代化であった」と氏は指摘する。

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 もし朝鮮がその宗主国、清朝の真似をして、いたずらに西洋を侮り、抵抗すれば、かえって外国の植民地になってしまう。それより、さっさと開国し、近代化したほうが朝鮮のためにもなるし、日本の国益にも合致すると考えたのである。[3, p55]
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 前号で述べた「大攘夷」の考えである。しかし、相手は華夷秩序に固執し、国書の文字遣いにまで難癖をつけて、日本の近代化を侮蔑する古代国家であった。


■3.「朝鮮国は自主の国であり日本国と平等の権利を持っている」

 しかし、朝鮮はそんな日本の危機感を理解することもなく、無礼に国交要求を拒絶している。ここから「征韓論」が出てくるのだが、それは単純に朝鮮を「征服」しようという事ではなかった。

 西郷隆盛の考えは、自分が単身、朝鮮に赴き、国王の実父大院君と腹を割って話し合い、日本と朝鮮が手を結んで、欧米列強から両国を護ろうと説得することだった。武力を用いるのは、それが失敗してからで良い、と西郷は考えていた。

 しかし、西郷が朝鮮で殺されれば必ず戦争になり、欧米列強に介入の口実を与えてしまう、と岩倉や大久保は考えて徹底反対した。論争に敗れた西郷は鹿児島に戻り、遂には西南戦争に至る。[a]

 東書版はその後について、以下のように記す。

__________
 その後も,日本は朝鮮と国交を結ぶ交渉を続けましたが,うまくいきませんでした。日本政府は1875年の江華島事件を口実に,翌年朝鮮との間に条約(日朝修好条規)を結び,力で朝鮮を開国させました。条約の内容は,日本のみが領事裁判権を持つなど不平等なもので,日本が欧米諸国からおし付けられた不平等条約を,朝鮮に当てはめるようなものでした。[1, p167]
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 この第1条には、「朝鮮国は自主の国であり日本国と平等の権利を持っている」と書かれている。

 さらに原文には「日本人が開港にて罪を犯した場合は日本の官吏が裁判を行う。また朝鮮人が罪を犯した場合は朝鮮官吏が裁判を行うこと」とあり、この双務規定を、上記引用で「日本のみが領事裁判権を持つなど不平等なもの」としている理由が、筆者には理解できない。


■4.「いくら朝鮮内部の改革派を支援しても、清国がいる限り、埒があかない」

 その後の情勢は、東書版によれば、以下のような展開を見せる。

__________
 朝鮮半島では、日朝修好条規を結ぶことで朝鮮に清との朝貢関係を断ち切らせたと考えた日本と、朝鮮に対する影響力を欧米諸国と植民地との関係のように強化しようとする清とが、勢力争いをくり広げていました。[1, p175]
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 朝鮮や清との関係は、具体的な史実を見れば、とても「勢力争い」などという生易しいレベルではなかった。

 明治15(1882)年、朝鮮軍の兵士が暴動を起こしたのに乗じて、攘夷派の大院君がクーデター(壬午政変)を仕掛け、さらに大院君にそそのかされた兵士が日本公使館を襲った。館員7人が殺害され、花房義質(よしとも)公使も、命からがら朝鮮を脱出した。だが、日本政府はあくまでも話し合いでの解決を図り、賠償条約を結ぶことで一件、落着した。

 しかも、この暴動を口実に清国軍が介入し、反乱を鎮圧し、大院君を逮捕して、事実上、朝鮮は清国軍の支配下に置かれた。

 明治17(1884)年、今度は日本に学んだ開国派の金玉均や朴泳孝らがクーデター(甲申政変)を起こす。これも袁世凱が1500名の清軍を率いて武力介入した。清国軍は宮廷内にいた日本人を殺害し、さらに金玉均らが日本公使館に逃げ込むと、公使館そのものに火をかけ、多数の日本人が殺された。

 明治19(1886)年には、清国の北洋艦隊の主力艦、当時の世界最大級の戦艦、定遠、鎮遠などが長崎港を訪れて、日本を威圧し、さらに上陸して酒に酔った清国水兵の一部が日本人に暴行を働いたことをきっかけに、彼らと日本の警察の市街戦となり、双方に死傷者が出た。これも日本政府は話し合いによる解決を図った。

 こうした事から、日本は、いくら朝鮮内部の改革派を支援しても、清国がいる限り、埒があかない、という事がつくづく分かったのである。このまま朝鮮の攘夷派が政権を握って、欧米列強を侮っているだけでは、やがて彼らの植民地にされてしまうだろう。


■5.「日本も朝鮮に進出しなければ危険である」

 こうして、日本は清国との戦いは避けられない、と考えるに至る。東書版はこの点をこう述べる。

__________
 1880年代後半以降,朝鮮では日本の勢力が後退する一方,清の勢力が強くなると,日本は清に対抗するため,軍備の増強を図っていきました。さらに,ロシアのシベリア鉄道建設など,列強の東アジア進出に対抗して,日本も朝鮮に進出しなければ危険であるという主張が,日本国内で強まりました。[1, p175]
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 東書版の「日本も朝鮮に進出しなければ危険である」という表現は飛躍している。というのは、当初、日本が狙っていたのは、朝鮮を独立国にする事だったからだ。この点は、日清戦争後の下関講和条約の第一条で、「朝鮮が清の属国ではなく、独立国である」事が謳われていることから明らかである。

 この部分を、育鵬社は次のように説明する。

__________
 また同じころ,大国ロシアがその南下政策によって太平洋側に勢力を伸ばし,これに対抗しようとしたイギリスが朝鮮南岸の島を占領する事件もおこりました。

こうした朝鮮をめぐる諸外国の動きの中で,わが国でも,隣接する朝鮮がロシアなど欧米列強の勢力下に置かれれば,自国の安全がおびやかされるという危機感が強まりました。そして,まずは朝鮮を勢力下に置く清に対抗するため、軍事力の強化に努めました。[2,p188]
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 ここで述べているように、「隣接する朝鮮がロシアなど欧米列強の勢力下に置かれれば,自国の安全がおびやかされるという危機感」が日本を突き動かしていた動機であり、そのためにも「朝鮮を勢力下に置く清に対抗する」事で、清の影響力を排除し、朝鮮を独立国にしようと、軍事力強化に努めたのである。


■6.欧米列強を驚かせた日本の近代化努力と武士道

 1894(明治27)年、政府や外国勢力に反対する大規模な農民の暴動(甲午農民戦争、東学党の乱)が起き、清は朝鮮の求めに応じて「属国を保護する」という理由で出兵した。これに対抗して日本も出兵したため、ついに日清戦争となった。

 黄海海戦は、鉄や鋼で防備を固めた装甲艦どうしの史上初の艦隊決戦ということで、英仏独米露の軍艦が観戦する中で行われた。清国が金にあかせて購入した主力艦「定遠」「鎮遠」は世界最大級、最新鋭の巨艦であり、大方の予想は7割方、清国の勝利というものだった。

 しかし、日本艦隊は艦の大きさは半分程度ながら、高速航行と速射砲、兵員の鍛錬度、士気で圧倒して、欧米列強を驚かせた。最新最大の軍艦を買ってくれば良いと考えるシナと、西洋技術を自分なりに消化吸収して、自らのものとする日本の近代化への姿勢の違いが如実に現れた戦いだった。[b,c]

 日本が欧米列強を驚かせたのは近代化だけではなかった。連合艦隊司令長官・伊東祐亨は旧友である清国北洋艦隊提督・丁汝昌に投降を勧める懇切な手紙を送り、丁が服毒自殺を遂げると、その亡骸を送るのに粗末なジャンク船では忍びないと、運送船を提供した。その武士の情けは、欧米の騎士道に通ずるものとして世界に感銘を与えたのである。[b]


■7.「中国を中心とする東アジアの伝統的な国際関係はくずれました」

 日清戦争の結果、育鵬社版は本文で「朝鮮は初めて中国から独立国と認められました」と書き、さらに側注で「朝鮮は1897年,国名を大韓帝国(韓国)と改め、朝鮮国王は大韓帝国皇帝となった」と記しているが、この記述ではその意味合いが十分、伝わらないだろう。

 この点は、東書版の次の記述の方が、その重要性をきちんと書いている。

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 日清戦争での清の敗北によって,古代から続いていた中国を中心とする東アジアの伝統的な国際関係はくずれました。朝鮮は清からの独立を宣言し,1897年に国名を大韓帝国(韓国)に改めました。[1, p177]
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 過去数千年続いてきた「朝貢体制」、あるいは「華夷秩序」では帝国、皇帝はシナのみであり、周辺諸国はシナ皇帝に冊封されて王に任じられていた。

 我が国は聖徳太子の時代から「天皇」を名乗って、この体制を否定してきたのだが、朝鮮はこの華夷秩序の最優等生だった。だからこそ日本の国書に「皇」の字があるだけで、朝鮮は受け取りを拒んだのである。

 日清戦争に敗れた清国は、張り子の虎であることが証明されて、以後、列強から領土を蚕食されて、半植民地状態となる。その物理的な影響だけでなく、古代からの華夷秩序を粉砕したことは、周辺国家のみならず、シナ人自身の覚醒にとっても、近代世界の仲間入りをするための良い教訓だったろう。

 こうして、我が国は自ら血を流して、朝鮮に独立を与え、「大韓帝国」と名乗れるまでにしてやった。もし、このまま大韓帝国が明治日本のように、独立国として近代化を進めて、日本とともに欧米列強と張り合ってくれたら、我が国もさぞ心強かったろう。

 しかし、数千年にわたって、常に強きに従う事大主義が染みこんだ朝鮮は、「大韓帝国」という立派な衣装を着せられても、その行動は変わらなかった。朝鮮のその後の振る舞いによって、日本の期待は裏切られ、再び大戦争を戦わねばならなくなる。
(文責:伊勢雅臣)


■リンク■

a. JOG(212) 無私の激突、征韓論〜西郷 対 大久保
 意見の純粋さだけで、かれらは国家をふたつに割るほどの対立をしてしまったのである。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h13/jog212.html

b. JOG(976) 国史百景(22) 海の武士道 〜 伊東祐亨と丁汝昌
 連合艦隊司令長官・伊東祐亨の清国北洋艦隊提督・丁汝昌への思いやりは世界を驚かせた。
http://blog.jog-net.jp/201611/article_1.html

c. Wing(2620) 国民国家が古代帝国に勝った日清戦争
 JOG(976) 「国史百景(22) 海の武士道 〜 伊東祐亨と丁汝昌」を書いていて痛感したのは、日清戦争とは国民国家・日本と古代帝国・清の戦いだった、ということだ。
http://blog.jog-net.jp/201611/article_2.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
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1. 『新編新しい社会歴史 [平成28年度採用]』★、東京書籍、H27
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2.伊藤隆・川上和久ほか『新編 新しい日本の歴史』★★★、育鵬社、H28
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4905382475/japanontheg01-22/

3.渡部昇一『「日本の歴史」5 明治篇 世界史に躍り出た日本』★★★、WAC BUNKO、H28
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北朝鮮のミサイルは防衛費の2%で抑止できる
2017/05/14
Japan On the Globe(1004)■国際派日本人養成講座 ■H29.05.14より転載

The Globe Now: 北朝鮮のミサイルは防衛費の2%で抑止できる
 独裁者をピンポイントで狙える巡航ミサイルを活用すれば、抑止力を発揮できる。歓迎

■1.北朝鮮は核ミサイルを使うために開発している
 元北朝鮮人民軍のパイロットで、1996年にミグ19に乗って韓国に亡命し、今は韓国の空軍大学教授となっていた李チョルス氏は、次のように語ったと西岡力(つとむ)・東京基督教大学教授は記している。[1]

__________
 自分たち北朝鮮軍人は士官学校に入ったときから現在まで、ずっと同じことを教わってきた。1950年に始まった第1次朝鮮戦争で勝てなかったのは米軍基地のせいだ。あのとき、(韓国への)奇襲攻撃は成功したが、在日米軍基地からの空爆と武器弾薬の補給、米軍精鋭部隊の派兵などのために半島全域の占領ができなかった。

 第2次朝鮮戦争で勝って半島全体を併呑するためには米本土から援軍がくるまで、1週間程度韓国内の韓国軍と米軍基地だけでなく、在日米軍基地を使用不可能にすることが肝要だ。だから、射程の長いミサイルを実戦配備している。
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 北朝鮮の核ミサイル開発の目的について「冷戦後、国際的に孤立する中、体制を維持するために核ミサイルを持とうとしている」とか「米国との外交カードとして使い、米朝国交回復を狙っている」などの見方があるが、西岡教授は「これらの見方は、実は北朝鮮が政治工作として意図的に拡散しているウソだ」と断言している。

 その証拠として氏が挙げているのが、金日成が核開発を始めたのは、1953年7月の朝鮮戦争休戦の数ヶ月前だったという事実である。この時点では北朝鮮は軍事や経済でも韓国より優勢だった。金日成が、朝鮮戦争に勝てなかったのは在日米軍基地のためだと考えたからこそ、核ミサイル開発を決意したのである。

 とすれば、金正恩も、このままでは北朝鮮経済も行き詰まり、体制も崩壊すると追い詰められて、生き残る唯一の道は、韓国を併呑してその富を奪うしかない、と一か八かでこの戦略に出る可能性はある。

「それを確実に抑止する方法は、核のボタンを押せば必ず報復を受けて金正恩が死ぬと彼に分からせること以外にない」と、西岡教授は断言する。

■2.独裁国家の弱み
 北朝鮮やシナのような独裁国家では、独裁者は国民の生命や財産は気にしない。あるアメリカ陸軍大将が人民解放軍最高幹部たちとの宴会に出席した際、いささか酔っ払ったシナの大将が「我々は上海が核攻撃を受けて消滅しても戦争は続けるが、アメリカはロサンゼルスが核攻撃を受けた瞬間に戦争はできなくなるであろう」とテーブルを叩きながら豪語したという。

 酔っ払いの大言壮語ではない。現に毛沢東は大躍進政策の失敗で推定2千万人を餓死させた後[a]、政権内での保身のために文化大革命を起こし、紅衛兵らの虐待で党幹部、知識人ら40万人が殺害されたと言われている[b]。金正恩の父親・金正日も自らの権力奪取後、国民の飢餓を放置し、3年間で国民の17%近く、約370万人を餓死させたと推定されている[c]。

 こうした独裁者たちは自らの保身のためには、国や国民がどうなろうと気にしない。逆に、他国を攻撃したら自分が殺されると分からせれば、その侵略行為を抑止できる可能性がある。米軍が北朝鮮に核開発をやめなければ金正恩の「斬首作戦」をする、と個人的に脅かしているのは、このためである。

 米国は金正恩個人を狙えるだけの武力を持っているが、我が国は持っていない。日米安保によるアメリカ頼みでも良いのだろうか。いや、そうはいかない場合もある。

■3.「防衛」の理想は「防御」ではなく「抑止」
 たとえば、北朝鮮が日本に対して「経済制裁を解け。解かなければ、日本のいくつかの都市にミサイルを撃ち込むぞ」と脅してくる事態を想定できる。

 この場合、もし日本がノーと言って、実際に何発かミサイルを撃ち込まれたとする。そして在日米軍が出動する前に、北朝鮮は「これ以上の攻撃はしない。経済制裁を解くよう、再度、勧告する」と言ってきたら、在日米軍はどう出るか。

 日本にミサイルは撃ち込まれたが、すぐに停戦状態になっている。ここで在日米軍が出動すれば、北朝鮮対アメリカの戦いになって、第2次朝鮮戦争の引き金を引いてしまう。戦闘が行われていない以上、アメリカがその危険を冒してまで報復してくれるとは信じられない。このように日米安保条約の隙間を狙って、日本だけを脅迫するという手もありうるのである。

 こういう時に、日本の武力だけで、日本にミサイルを撃ち込んだら金正恩の命もないぞと脅すことができたら、それが抑止力になる。

__________
 そもそも「防衛」のために莫大な税金を投入して軍事力を保持しなければならない究極の目的は、日本が外敵から軍事攻撃を仕掛けられたら「防御」するためではなく、「外敵が日本に対して軍事攻撃を実施するのを事前に思いとどまらせる」こと、すなわち「抑止」にある。

 自衛隊が「防御」する段階に立ち至った場合には、いくら自衛隊が頑強に「防御」したとしても、日本国民の生命財産が何らかの損害を被ることは避けられない。したがって「防衛」の理想は「防御」ではなく「抑止」なのである。[1, p9]
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 軍事アナリスト・北村淳氏の至言である。「やられたら、倍返しだ」という「報復的抑止力」を持つことが「防衛」の効果的なあり方なのである。

■4.『巡航ミサイル1,000億円で中国も北朝鮮も怖くない』
 北村氏は、この観点から、シナ・北朝鮮に対する防衛(ただし、核攻撃を除く)に関して、卓抜な構想を提案している。まず、その要点を示した後で、詳しく説明しよう。

1) シナや北朝鮮からの攻撃パターンとして軍艦、潜水艦や航空機による接近襲撃は自衛隊による監視・撃退能力が高く、相手も相当なリスクを覚悟しなければならない。それに対して長射程ミサイル攻撃は最小のリスクで、我が国にダメージを与えられる。

2) 現在、我が国のミサイル攻撃への防御は迎撃ミサイルで撃ち落とすシステムが中心になっているが、撃ち落とし漏れで被害が出る。しかも、多数のミサイルが発射された場合は、迎撃ミサイルを撃ち尽くして、その後はやられっぱなしとなる。

3) ミサイル攻撃への最も効果的な防衛は、撃たれたらこちらも長射程ミサイルで撃ち返すという報復により、抑止をはかることである。迎撃ミサイルによる「防御」よりもはるかに安価に、より確実に「抑止」を図ることができる。

 これが北村氏の著書『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』というタイトルの意味するところである。

■5.迎撃ミサイルでは撃ち漏らし、弾切れ
 上記の各点について、もう少し詳しく説明しておこう。

 まず(1)の「最大の脅威は長射程ミサイル」という点だが、個人の戦いに例えて言えば、軍艦や航空機などの接近攻撃は殴りかかること、ミサイル攻撃は銃撃のようなものだ。殴りかかってくる相手よりも、離れた所から銃撃をしてくる相手の方が脅威が大きい、というのは、常識で分かる。

 防衛面を考えると、殴ってくる相手には殴り返せば、相手に相応の打撃を与えられる。しかし、相手がいつどこから銃撃してくるのか分からない、というのは、はるかに大きな脅威である。

 (2)の迎撃ミサイルでは完全には防御しきれない理由を説明しよう。北朝鮮が日本を狙うには、スカッドD弾道ミサイルが使われる。最大射程距離は700〜800キロで、西日本の多くの地域が到達範囲に入る。発射には地上移動式発射装置が使われ、北朝鮮はこれを50輛前後、保有していると見られている。とすると、最大50基の弾道ミサイルを一度に発射できることになる。

 それに対して、現行のミサイル防衛システムは次のようなものだ。弾道ミサイルの発射を、警戒衛星とイージス艦のレーダーシステムで捉え、その弾道を計算して、SM−3迎撃ミサイルが発射される。しかし、その撃墜率はこれまでの10年の経験では8割強であり、50基が同時に撃たれた場合は、すべてを迎撃しても10基は撃ち漏らしてしまう。

 さらにSM−3ミサイルは1基25億円と超高額のため、イージス艦あたり8基しか装備されていない。海上自衛隊のイージス艦4隻がすべて出動していても、32基しか発射できない。北朝鮮が第一波で50基を撃ってきたらそもそも足りないし、第二派としてまた50基発射したら、もう撃ち尽くしてしまって、指をくわえて見ているしかない。

 第二段の構えとしてパトリオット−3防空ミサイルシステム(PAC−3)もあるが、直径40キロの圏内でしか撃墜できず、国内にはこれが18セットあるのみである。

 18セットを東海道・山陽新幹線沿いに横に並べたとしても、40キロx18セット=720キロで、東京−岡山がカバーできるほどである。イージス・システムで防げず、パトリオットがカバーしていない地域はやられ放題という事になる。こういう事態を防ぐには、さらに数兆円規模の予算が必要となる。

■6.巡航ミサイルの脅威
 長射程ミサイルには弾道ミサイルのほかに巡航ミサイルがある。弾道ミサイルは弾道(放物線)を描いて超高速で飛ぶもので、核を搭載した大陸間弾道ミサイルはこの一種である。

 巡航ミサイルは低空飛行で山などを避けながら、自由自在に進路を変えつつ飛翔する。弾道ミサイルよりも速度は遅いが、小型かつ低空飛行のため、レーダーでもはるかに補足しにくい。

 アメリカの巡航ミサイル・トマホークは最大射程距離1700キロを飛び、最新型では狙った目標から5メートル以内の命中精度を持つ。1991年の湾岸戦争で投入されて以来、数々の実戦で使用されてきた。湾岸戦争では進攻に先立って、水上戦闘艦と潜水艦から合計288基が連射され、イラクのレーダーシステム、対空ミサイル、それに独裁者の本拠地を叩くのに使われた。

 その命中精度の良さから、たとえば金正恩の潜んでいる場所や、北朝鮮軍司令部、ミサイル基地などをピンポイントで叩くには、最適な兵器なのである。

 また、価格も1基1〜1.5億円程度と安い。F−2戦闘機で敵基地攻撃をするには1機で120億円かかるが、トマホークなら100基も配置できる。しかも搭載する通常弾頭の破壊力は、F−2に搭載できる爆弾の2倍程度である。したがって、コスト1/100で破壊力2倍、コストパフォーマンスは200倍となる。

■7.トマホーク800基による報復的抑止力
 このトマホークを海上自衛隊の艦船に800基ほど配備し、北朝鮮が我が国にミサイルを撃ち込んだら、それを一斉に発射して金正恩の生命はない、と分からせて、報復的抑止力を働かせよう、というのが北村氏の提案なのである。この提案は優れた実現可能性を持っている。

 まず、現在の海上自衛隊の水上艦、潜水艦の発射装置はトマホークと互換性があり、ハードはそのまま使用できる。ソフトとしてトマホーク攻撃計画システムと発射制御管制システムを導入するだけで良い。

 装備できる水上艦・潜水艦も十分だ。合計で最大で1132基のトマホークが装備できる。たとえば「あたご型」自衛艦は2隻で各96基、「こんごう型」4隻で各90基、等々、各型合計で27隻ある。

 トマホークの最大射程距離は1700キロなので、日本海側はもちろん太平洋側沿岸を航行する艦艇から発射しても、北朝鮮全域をカバーできる。

 破壊力も十分である。トマホーク1基で1000ポンド爆弾1発分の破壊力を持つが、これは北朝鮮のノドンやスカッドの半分である。したがって、ノドンやスカッドを100基、撃ち込まれた場合、トマホーク200基で同等、800基を撃ち返せば「4倍返し」となる。

 しかも、飛来した北朝鮮ミサイルの相当数は迎撃ミサイルで撃ち落とせることを考えれば、ミサイルの撃ち合いでは北朝鮮は到底、分がない、という事になる。

 コストも圧倒的に安い。前述のようにトマホークは1基1〜1.5億円程度なので。800基配備しても1千億円ほど、年間防衛費の約2%程度でしかない。

■8.対シナ防衛にも有効
 この構想は対シナ防衛にも有効である。シナはかつてアメリカ政府にトマホークを日本に移転しないようロビー活動をしていた、という情報がある。それだけ真剣に巡航ミサイルの脅威を受け止めているのであろう。巡航ミサイルの優れた点は相手国の一般国民への被害は最小限にして、独裁者だけを脅かす事ができることだ。

 北村氏は、「日本の技術力のすべてを投入すれば、最大射程距離2500キロで最高巡航速度マッハ2を超える巡航ミサイルの開発に成功する可能性は十分にある」と言う。これが実現すれば、陸上を自在に動き回れる発射装置により、北海道から沖縄までどこからでもシナ本土を射程に含めることができる。

 こうした通常戦力による報復的抑止力を持つことで、現在、日本は「防御」機能しか持っていない日米同盟の片務性を相当程度解消して、米国とより対等な安全保障体制ができるであろう。

 さらに、この巡航ミサイルを台湾、フィリピン、ベトナム、インドネシアなどにも供与し、攻撃目標のデータを共有化する情報システムでも作れば、シナの独裁者たちの首根っこを押さえる事ができるだろう。
(文責:伊勢雅臣)

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)

1. 西岡力「北朝鮮は核ミサイルを使うために開発している」、『正論』H28.4

2. 北村淳『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』★★★、講談社+α新書、H27
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4062728893/japanontheg01-22/

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